景況感が悪化の一途をたどる中、ソフトウェアベンダーはどのような方法で顧客に提案するのか。巨大ソフトウェア企業に変貌した日本オラクルの遠藤隆雄社長に話を聞いた。
2009年に入り1カ月が過ぎようとしているが、大手製造業が相次いで赤字や人員削減を発表するなど、景況感は悪化の一途をたどっている。企業がIT投資を抑制する中、ソフトウェアベンダーはどのような方法で顧客に提案するのか。買収を繰り返し、今では他を寄せ付けないほどの巨大ソフトウェア企業に変貌した日本オラクルの遠藤隆雄社長に話を聞いた。
ITmedia 2008年に社長に就任して、これまで何を感じましたか。
遠藤 社員の多くが若く、製品に惚れ込んでおり、明るいことに感激しました。会社が好きでないと顧客も好きになれません。その意味で、データベースだけでなく、業務ソフトウェアを柱にする体制に「Change」できると確信しました。
苦労もあります。やはり経済情勢が厳しいです。特に、製造業の顧客などは様子見をしている状況です。ただし、現在最大のテーマであるコスト削減ができる分野への投資は止まっていません。データベースの圧縮、運用の効率化などのシステム投資、物流コストや人件費といった業務コストの削減に向かっています。こうした顧客企業の構造改革に必要なら導入されるし、そうでなければされないという状況です。
ITmedia 前職の日本IBMを退職して現職に就任した理由を教えてください。
遠藤 いまや企業にとってITを使った業務改革は不可欠になっています。そのとき、昔なら自社でシステムを開発していましたが、現在ではそれでは間に合いません。既に出来上がったソフトウェアの方が、ノウハウが詰め込まれ、コストも低く、短い期間で構築できるため、ERPなどのソフトウェアをやるべきだと感じました。日本オラクルならそれを実行できます。
ITmedia IBMは基盤製品に注力し、業務アプリケーションはあまり扱わない方針といわれています。
遠藤 前職のときに「IBMもアプリケーションをやるべきだ」と訴えましたが、承諾されませんでした。それが日本オラクルに来たきっかけになりました。ただし、パッケージアプリケーションがそのままうまく動くことはまれです。各社の商習慣などに合わせてカスタマイズなどが発生することになります。今後は、既存のIT資産を再利用して新たなシステムを構築できるSOA(サービス指向アーキテクチャ)の発想がさらに普及するでしょう。パッケージアプリケーションと既存ソフトウェアをうまく使いこなすことで、業務改革が実現すると考えています。
製品では、HPのハードウェア上にソフトウェアを載せてデータウェアハウスのアプライアンス製品として提供する「Exadata」(関連記事)に期待しています。大量のデータをまとめて分析するというニーズが大きく、引き合いも非常に多いです。
ITmedia 2009年の戦略としてどんなことを実施しますか。
遠藤 「Sense and Respond」を掲げています。顧客の動向を的確につかみ、すばやく反応します。具体的にはパートナー企業との連携を強化し、共存共栄の関係を築く考えです。
ITmedia 2009年に個人的にやろうとしていることは何ですか。
囲碁部を創設したいです。囲碁の魅力は自由な発想が求められることです。将棋は理論、麻雀は確率のゲームですが、囲碁はどちらでもないのです。囲碁から生まれた日本語も多いんですよ。「布石を打つ」「一目置く」「駄目」など。すべて囲碁で使う言葉です。
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