“スマート化”が進む携帯端末、決め手はソフトウェア生き残るスマートフォンとは

Forrester Researchの最近の報告書は、スマートフォンの“スマートさ”を評価するための新しいフレームワークを示すとともに、携帯メーカー各社に生き残り戦略をアドバイスしている。

» 2009年05月19日 16時30分 公開
[Michelle Maisto,eWEEK]
eWEEK

 スマートフォンという言葉は死語になるのだろうか。

 米調査会社Forrester Researchの最近の報告書は、ますます“スマート化”が進む携帯端末を定義・分類する方法を改めるべきだと提言している。

 「昨日のハイエンドのスマートフォンは、今日のミッドレンジ携帯電話であり、明日にはエントリーレベルの携帯電話になる」と報告書の執筆責任者のアイアン・フォッグ氏は記している。

 この報告書は、携帯端末の市場の変化を示すものとして、端末が細分化する一方で単一プラットフォームをベースとした標準化への動きが進んでいることや、携帯端末が特定業務専用端末の市場を浸食しつつある状況を指摘している。さらに、企業向け端末とコンシューマー向け端末との間のハードウェア的な境界がぼやける一方で、ソフトウェアが両者の間の差別化要因として重要性が高まってきたと指摘する。

 フォッグ氏はeWEEKの取材で、「ハードウェアでイノベーションを実現したとしても、1年半も経たないうちにコピーされてしまうだろう」と語り、米AppleのiPhoneが登場した後すぐに、米Googleがタッチスクリーン機能を搭載した携帯端末を出荷した事実を指摘した。

 「では、どうやって差別化すればいいのか考えてみると、ソフトウェアによるしかない。携帯端末をエンタープライズデバイスに仕立て上げ、企業のExchangeサーバやVPNなどに接続できるようにするのはソフトウェアなのだ」とフォッグ氏は語る。

 スウェーデンのNokia製スマートフォンEseriesでは、プロファイルを切り替えることにより、ビジネス用途と個人用途で使い分けることができる。「これは市場の方向性を示しているのかもしれない。今後の差別化要因となるのがソフトウェアだ」(同氏)

 報告書の中でフォッグ氏は、スマートフォンという称号に代えて今日の携帯端末を区分する3つの新しい「フレームワーク」を提唱している。その1つが「拡張性とオープン性」だ。顧客の手に渡った後で修正と拡張が可能な携帯電話は“よりスマート”であるとフォッグ氏は述べ、その例としてAppleのApp Storeとそのダウンロード用コンテンツのほか、コンシューマーによるアップデートを可能にしているニコンなどのカメラメーカーを挙げている。

 「オープン性」については、フォッグ氏はGoogle Androidを例に挙げ、LinuxをベースとするAndroidでは、メインとなる製品の上にイノベーションを付加することができると説明する。「しかしオープン性の評価は非常に主観的なものでもある」と同氏は強調し、その例として、iPodとiPhoneは複数のオープンフォーマットをサポートしているが、Appleは非常にプロプライエタリな企業とみられていると指摘した。

 「すべての携帯端末およびメーカーが、それぞれのビジネスモデルでオープンな部分と閉鎖的な部分を併せ持っているというのが現実だ。難しいのは、どの部分をオープンにし、どの部分でタイトなコントロールを維持するかということだ」とフォッグ氏は記している。

 2番目のフレームワークは「消費と作成」だ。携帯端末の中には作成(テキストメッセージ、電子メール、インスタントメッセージング)に主眼を置いたものもあれば、iPhoneのように消費に主眼を置いたものもある。iPhoneは“必要十分”という程度の通話機能しか備えないが、ユーザーに大量のダウンロードを促す秀逸なブラウザを搭載している。

 Forresterでは、「作成」面で高い評価を付けられる製品として「BlackBerry Bold」「Nokia N96」「HTC Touch Pro2」「Nokia N97」を挙げている。消費志向のデバイスとしては、iPhone 3Gのほかに「Nokia 5800 XpressMusic」や近く登場予定の「Palm Pre」を挙げている。

 第3のフレームワークが「有用性と娯楽性」であり、これは携帯端末はコンシューマー向けか企業向けかのどちらかに分類されるという従来の考え方を否定するものだ。2台の端末を持ち歩くのは嫌だが、両方の機能を使いたいと誰もが思っている。駅で電車を待っている企業幹部がゲームを楽しむこともあるだろうし、Nokiaが学んだように、キーボードを使いたいと思っているのは企業ユーザーだけではない。Nokiaは当初、Eseries製品ラインにしかフルキーボードを装備していなかった。

 「難しいのは、各コンシューマーセグメントについて有用性と娯楽性の適度なバランスを理解することだ」とフォッグ氏は記している。

 「すべての携帯電話はスマート化しつつあるが、携帯端末の利用形態の変化に乗ずるには、ユーザーが携帯端末をどのように利用しているのかを業界が理解することが不可欠だ」とフォッグ氏は報告書を締めくくる。

 「すべての携帯電話が賢くなっているが、天才はその一部だ」(同氏)

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