世界で勝つ 強い日本企業のつくり方
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» 2010年01月01日 00時00分 公開

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:国産ICTは極めてハイレベルだ (3/4)

[構成:藤村能光,ITmedia]

グローバル展開とクラウドの親和性

 日本企業の海外展開において、クラウドコンピューティングの活用はさまざまな側面がある。利用企業のメリットは、格段に安いコストでシステムを短期間に開発できる点だ。SaaS(サービスとしてのソフトウェア)、PaaS(サービスとしてのプラットフォーム)、IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)を機動的に利用する仕組みが出来上がりつつあるのが追い風になる。

中島氏 「日本のICTはレベルが高い」と中島氏

 技術としては仮想化やシステム連携が発達し、マッシュアップが簡単にできるようになってきた。サーバやストレージなどの空いたリソースを有効活用するグリッド(コンピューティング)も重要だ。これらの技術を背景に持つクラウドは、システムの利用効率を10倍に上げ、コストを10分の1にするといったことを可能にする。2、3年を必要としていたシステムの構築期間は3カ月に短縮できたという事例も生まれている。

 企業のニーズに応じてサービスが利用できるようになったということだ。グローバル展開においても、例えば海外工場のオペレーションをクラウド型のサービスで行うといったことが可能になる。従業員のログを解析し、不適切なシステムの使い方を判断できる。情報システム運用のコストも大きく下がるだろう。

 企業がグローバル展開するときに心配事となるのは、従業員に対する信用だ。(クラウドを活用すれば)情報を転送していないか、不必要なサイトにアクセスしていないかといったことを常時監視し、解析できる。近い将来、関連する技術やサービスが生まれるだろう。

 クラウドを使うことで、不正の監視だけでなく、業務プロセスが明確になるといった恩恵もある。例えばAさんの仕事がボトルネックなら素早く配置換えをするというように、業務プロセスのコントロールもできる。その際に(自社で独自の情報システムを作るのではなく)他社がSaaSで提供している仕組みを使えばいい。

 海外展開では、米国のクラウド型サービスやデータセンターを使うという選択肢も考えておきたい。確かにどこのデータセンターで情報を処理しているか、セキュリティは担保されるかといった問題は残る。だが、データが安全に取り扱えるようになれば、海外の工場をネットワークベースの遠隔操作で日本と同じ品質でオペレーションできるだろう。海外展開において、クラウドコンピューティングの活用は妥当な選択肢だ。

民間企業の働き所は「標準化」

 業務アプリケーションは日本にもたくさんあるが、企業特有の作りになっている。これを標準化する作業が必要だ。たいていはレガシーになっており、(新しいシステムに)マイグレーションできない。これを標準的なシステムに切り替えていかないといけない。日本の情報サービス産業の企業の働きどころはここにある。

 数千人を投入したシステム開発は、情報サービス産業を潤してきた。だが金融機関の合併が一段落し、リーマンショックで企業の新規プロジェクトは延期されている。技術者は人余りになり、情報サービス産業全般は一時的にではあるが、危機的な状況に陥っている。これを乗り越えた時に企業内の情報資源――COBOLやアセンブラなどを含めて――を可視化する作業が必要になってくる。プログラムを書いた人しかそのプログラムを理解できないという資産では意味がない。

 企業内の知識や資産を埋もれたままにしておくのはもったいない。こうした「企業の暗黙知」を誰もが具体的に理解できるような標準形式にしていく作業が今後は必要だ。オープン化への取り組みにも近いものがある。

 こうした取り組みの好例は、清水建設からスピンオフしたベンチャー企業のプロパティデータバンクだ。同社は土地やビルなどの不動産の資産価値情報を提供している。登録した資産の変化に応じて路線価格や時価などをデータベースから引き出し、他事業者のデータを併用しながら、企業に資産価値の計算結果を提供するSaaSを提供している。

 これは社内で眠っていたデータベースをほかのシステムと連携できるように標準化したからこそ生まれたビジネスだ。サービスの利用側は、資産価値を手作業で分析していた作業から解放される。

 企業の資産を(切り出して)提供するようになると、これまでの業務の仕組みが大きく変わる。アイデアを出し合い、サービスをブラッシュアップしていく。こうした中で企業は自然と海外展開のノウハウをためたり、(製造業であれば)海外工場の展開のヒントを得たりできるようになる。国内でサービスを充実させながら海外のSaaSも併せて使えば、サービスのメニューが豊富になる。当然、拡大する(アジアの)市場にも踏み込んでいける土台が整うだろう。

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