チームを前向きにする発言、できていますかビジネスマンの不死身力

考えや思いがチームに浸透しない……。もしこんな悩みを抱えている場合、少し発言を工夫するだけで、あなたの言葉が相手に伝わるようになる。ポイントは「ねばならない」という表現を「したい」に言い換えることだ。

» 2010年02月11日 00時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]

少し考え方を変えることで、仕事を楽しく充実したものに。「ビジネスマンの不死身力」では、そのノウハウをお伝えします。


 「景気の低迷を機会ととらえて、もっと強い日本を作らなければならない」「日本の技術を生かして、経済を成長させなければならない」――景気低迷が続く中、日本の経営者やリーダー層が発するこうしたメッセージを聞く機会も多い。だが、前向きなメッセージに「ねばならない」という言葉が付いていると、焦りにも似た窮屈な印象を受ける。

 もしあなたが経営者やリーダーなら、現在のピンチをチャンスと考えられるようなメッセージを、社員やメンバーに伝えていく必要がある。せっかく思いを伝えるなら、受け取る側が少しでも元気になるようなメッセージを発した方がいい。そのためには、発話内容の語尾を少し工夫することが有効だ。あなたの思いがより伝わりやすくなるだろう。

「したい」――前向きな気持ちを伝える

 下記のメッセージは、意味は同じだが表現が異なるものだ。2つを読み比べてみて、あなたはどういう印象を受けるだろうか?

メッセージ1:

「会社の経営が悪化しています。ピンチはチャンスと言いますが、これを機会に会社を強い体質に変えていかなければなりません。そのためには、業務の効率化や経費削減をしていかないといけませんし、売り上げも今まで以上に伸ばしていかなければなりません」

メッセージ2:

「会社の経営が悪化しています。ピンチはチャンスと言いますが、これを機会に会社を強い体質に変えていきたいと思っています。そのためには、業務の効率化や経費の無駄を削減したいですし、売り上げも今まで以上に伸ばしていきましょう」

 これらは同じ内容を伝えているが、1を聞いた人は「やらなければいけないことが山積みだ」という窮屈さを感じるだろう。一方2は「課題はあるにせよ、さまざまな施策を全社で実施していくのだ」という前向きな気持ちになるはずだ。

 2つのメッセージの違いは語尾にある。1には「ねばならない」という表現が含まれている。これはマイナスの現状をゼロに戻すという印象を受ける。この強制的な表現は、「ピンチはチャンス」という前向きな言葉を打ち消してしまう。かたや2の「したい」というメッセージからは、現状をプラスに変えていく前向きな力強さや意志が感じられる。

 もしあなたが「ねばならない」と言うくせがあるならば、「したい」という言葉を意識的に語尾に付けるようにしてみよう。それは、聞き手の心を動かす前向きなメッセージとなって、相手に伝わっていく。

本当に必要なことに気付く効果も

 前向きなメッセージは、相手にとって気付きを与えることにもつながる。以前、物事の優先順位の付け方について相談してきた女性のクライアントは、わたしが発したメッセージから、自分が本当に何をしたいかを見つけることができた。

 彼女は帰宅後に翌日の仕事を準備する習慣があった。だが家事との両立で時間を確保できず、「家事があるし子どもの世話もあります。その上、仕事の準備もしないといけません」と悩んでいた。

 そこで彼女の言葉の語尾を変えて、「なるほど。帰宅後には家事もしたいし、子供の面倒もみたい。仕事の準備もしたいんですね?」と聞き直してみた。すると彼女は「本当は、家では仕事ではなく、子どもと遊ぶ時間が欲しいんです」と答えてくれた。「したい」という発言を耳にすることで、本当にやりたいことに気付いたのだ。

 その後、彼女は朝早く職場に向かい、就業前の時間で準備をするようになった。子どもと遊ぶ時間も確保できるようになった。また自宅よりも職場で朝早くに準備をする方が気持ちの切り替えができ、効率がいいことにも気付いた。

 「しなければならない」という発想を「したい」という前向きに言い換えてみる。ほんの少しの工夫が、相手にとって本当にやりたいことを導き出した瞬間だ。


 わたしたちはつい「ねばならない」と言葉にしてしまいがちだが、そんな時こそ「したい」という言葉を意識してみよう。この前向きな言葉こそがチームやメンバーに活力を与え、ピンチをチャンスに変える力を生み出すのだ。

著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)

 竹内義晴

テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。




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