HPのハード氏後任CEOの課題とは

突然の辞任となったマーク・ハードCEOだが、同氏が5年間に築き上げた業績は大きい。後任となるCEOに求められるものは何か、アナリストが分析する。

» 2010年08月09日 16時46分 公開
[Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK

 米Hewlett-Packardのマーク・ハードCEO兼会長の突然の辞任は、その個人的で卑しむべき理由により、同社に瞬間的な注目を集めることになるだろう。だがアナリストらは、ハード氏の過去5年間のリーダーシップのおかげで、HPは繁栄を続けるとみている。

 HPの取締役会は8月6日の遅くに、ハード氏が辞任を決意したと発表した。HPの元契約社員によるセクシャルハラスメントの申し立てに関する調査を受けてのことだった。

 内部調査の結果、ハード氏によるセクハラの証拠は見つからなかったが、同氏がHPの営業法に関するポリシーに違反したことが明らかになった。違反には、その契約社員との個人的な関係を隠すために経費報告書を改ざんしたことが含まれる。

 HPはキャシー・レスジャックCFO(最高財務責任者)を暫定CEOに任命し、ハード氏の後任を探すための内部委員会を立ち上げた。

 業界アナリストらはハード氏辞任の理由についてコメントすることを避け、もっぱら同氏とその幹部チームが、この5年間に何を達成したかにフォーカスしている。同氏がHPを引き継いだのは、賛否両論あったカーリー・フィオリーナ氏指揮下で同社が数年間苦闘した後のことだ。

 「ハード氏は戦略的な買収を通じてねばり強く同社のポートフォリオを拡張し、既存事業の規模を拡大した」と米調査会社Technology Business Researchのアナリスト、エズラ・ゴットヘイル氏は調査報告で語った。「2009年11月に発表された米3COMの27億ドルの買収で同社のネットワーキングのポートフォリオを強化し、2010年4月発表の米Palm買収で、同社にスマートフォン市場参入のための強力な手段とモバイル端末向けOSの両方をもたらした。これらの買収やEDSの買収、より小規模な多数の企業の戦略的買収により、HPはハード氏が目指したIT技術ソリューションの完全なプロバイダーという目標に近づいていた」

 米Gartnerのアナリスト、マーティン・レイノルズ氏も同意見だ。

 「ハード氏のHP再建は目覚ましいものだった。規模と成果に重点を置くことで、同社を原価管理マシンに変換した」とレイノルズ氏はレポートに記している。「だが、HPを廉価な供給業者と位置付けるハード氏のアプローチは、同社のイノベーターのイメージを薄れさせた(収益性の悪いイノベーターであるよりずっとましだ)。HPの経営方針は変わらないだろう。ハード氏は幹部チームを通じてこの成果を達成しており、チームは今後も同氏の計画を実行し続けるだろう」

 問題は、HPで次に何が起きるかだ。ゴットヘイル氏によると、HPは相応の問題を抱えているという。世界的なPCメーカーである同社は、特に中堅・中小企業向け市場において、台湾のAcerや韓国のSamsungといった新たな競合に直面している。iPhoneおよびiPadを擁する米Appleも、強力なライバルだ。

 加えて、研究開発や大企業向けのIT製品およびサービスなどの領域では、米IBMが今後もHPに挑み続けるだろう。

 ハード氏の後任CEOは、特にソフトウェア事業を強化し続けることでIBMとの競争を有利にする必要があるだろうとゴットヘイル氏は語った。

 「HPのソフトウェア部門の役割を改変し、現在の成長遅滞部門から、IBMのソフトウェア部門に倣った収益部門に再建する必要がある。この改革は困難だろう。IBMがソフトウェアを同社のハードウェアプラットフォームの付加価値と見なしているのに対し、HPは現在、ソフトウェアをハードウェアの売り上げを促進する手段――ハードウェア付属の収益の高いソフトウェアを大幅に値引きする――としているからだ」(ゴットヘイル氏)

 ハード氏がHPをこの方向に向かわせていたとゴットヘイル氏は指摘する。同社がMercury InteractiveOpswareSPI Dynamicsなどのソフトウェアベンダーを買収し、2005年に10億ドルだったソフトウェア収益が、2009年には35億ドルに増加したことからも明らかだという。

 「ハード氏は、HPのエンタープライズビジネスの責任者、アン・リバモア氏を通じて同社ソフトウェア部門の再生に投資し、この5年間でソフトウェア業界屈指の劇的改革を可能にした」(ゴットヘイル氏)

 また、HPにはコンシューマー市場進出のチャンスもある。これまで同社はこの分野にそれほど積極的ではなかった。ハード氏の在職中「大きな成功を収めた“The Computer is Personal Again(PCは再びパーソナルに)”キャンペーンで、HPはコンシューマー市場に対する歴史的な留保を乗り越えた。世界のPC市場における同社のシェア拡大は、景気回復による部品不足の克服を助けた」とゴットヘイル氏は語る。

 Gartnerのレイノルズ氏は、新CEOは「HPを新たな段階に導きやすいだろう。同社はコンシューマーからクールなブランド、必携製品のメーカーと認識される必要がある。これは緊急の課題ではないので、取締役会はHPの未来とその未来の顧客にふさわしいCEOをじっくり選択すればいい」と語った。

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