クラウドから始まった足立区のシステム最適化物語(後編)「モノ申す」自治体の情シス(3/3 ページ)

» 2013年06月26日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

技術の継承をどうするか

 クラウド構築に始まったシステム最適化への挑戦は、足立区の情報システム課にとっても大きな経験になりつつあるようだ。当初はITを知らないという職員が多い中で、浦山氏やベテラン職員の努力で課のスキルアップにも継続して取り組んできた。

 情報システム課ではスキルマップも作成しており、職員が在籍年数に応じて習得すべきスキルなどを定めている。研修では保志野氏ら中堅メンバーを中心に、異動して日の浅い職員や若手職員への技術の伝承にも力を入れているという。講師を務めるのは浦山氏だ。

 ただ、自治体という環境で避けては通れない人事ローテーションがこれを難しくさせている。せっかくITスキルや経験を培っても、平均して4年後には全く別の業務課に異動になる。秦氏のように若手時代に一度在籍して、何度目かの異動の後に情報システム課に戻るケースもあるが、課としての経験やノウハウのバトンをつなぐのは簡単ではないという。

 「自治体に職員を増やすだけの余裕はありません。そのため、足立区では専門技術員という高度なスキルをもったベテランの方に業務支援をお願いしており、ようやく技術を継承しているという状況です。そこにも予算の制約はありますが……」(浦山氏)。秦氏は、共通基盤化によって情報システム課の職員の力を試す環境を確保できたことも、技術の伝承につながると期待する。

2013年度以降における3つの共通基盤での計画(足立区資料より)

 こうした中で情報システム課には、ベテラン職員が注目する若手のホープも生まれつつある。共通基盤化の最後の砦となる基幹業務基盤の構築を担当するのが、システム最適化担当係長の野田真氏だ。「不安ばかりですが、何とかがんばりたいと思います」(野田氏)と、足立区のシステム最適化の道のりでは次世代へのバトンタッチが始まっている。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ