テレビ会議で国際交流、佐賀の小学校にスゴイ設備英語教育の基礎を変えるICT(2/2 ページ)

» 2015年02月16日 11時00分 公開
[池田憲弘,ITmedia]
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シスコが“グローバル人材育成”を支援する理由

photo 佐賀市立北山校。自校の小中学生とオーストラリアの生徒との交流授業を積極的に行っている

 今回の交流授業を行った北山校はこれが初めての取り組みではない。「北山校はすでにメルボルンにあるリスモア校と複数年にわたり数回交流授業を行っています。回数を重ねるごとにどんどんコミュニケーションのレベルが上がっていることが、私が見てもわかります」(シスコシステムズ パブリックセクター事業 文教営業本部 佐々木康子氏)という。

 オーストラリアでは近年、日本語を学ぶ生徒が増えている。全生徒の約半数が日本語を選択しており、留学まで含めた深い交流を望んでいる。彼らが日本語を学ぶ背景には、同国がアジア諸国と経済的な結びつきが強く、オーストラリア政府も日本語教育を推奨しているという状況がある。

 このようにオーストラリア側のニーズが強い一方で、日本側の受け入れ体制は整っていないのが現状だ。そこで、シスコは日本の学校とオーストラリア(クイーンズランド州)の学校を結ぶマッチングを無料で行う「Global School Connections」を展開している。

 「これまでも先生が個人個人で日本とオーストラリアなどとをつないでの交流授業というのは行われてきたと思います。しかし、個人のつながりだと転勤や退官といった人事異動があると、つながりが切れてしまうなどの問題が起こっていました。クイーンズランド州教育省とシスコという組織としてのつながりを持つことで、より大きな動きになると考えています」(佐々木氏)

 同社は世界で活躍する人材の育成を支援を通じて、テレプレゼンスシステムを含めたソリューションの認知拡大を図る構えだ。無料で手に入るビデオ通話アプリなどは回線状況によって音が途切れたりしがちで、多人数で話すような状況にはあまり向かない。その点、回線も含めてテレプレゼンスシステムを構築すれば画質や音質が高く、多人数が参加する授業などでも利用できるようになる。

 この北山校の取り組みは、佐賀市教育委員会とシスコが協力して実現した。テレプレゼンスシステムの機器は北山校の音楽室に置いてあるが、サーバはクラウドで運用している。北山校は今後、カリキュラムの一環として、リスボン校と定期的に交流授業を行う方向で検討しているそうだ。オーストラリアの学校が相手であれば、時差は1〜2時間なので交流授業の時間も合わせやすい。

photo 佐賀市立北山校では、音楽室にテレプレゼンスシステムを設置している。サーバはクラウド型の運用だ(写真提供:シスコシステムズ)

テレプレゼンスで“教育改革”が起こる?

 テレプレゼンスの教育への活用に期待を寄せる学校は多い。文部科学省は2014年12月に、高校でテレビ会議授業の導入を認める報告書をまとめており、2015年度からの実施を目指している。もともとは過疎地や離島における教員不足を解消するための施策だが、北山校のような国際交流授業にも使われる可能性は高いのだ。

 「オーストラリアでは、テレプレゼンスシステムの教育利用について国の予算がついているため、今後普及が一気に進むでしょう。日本でも法律の改正によって市場のニーズが高まる公算が高いです。そのときにシスコが今まで行ってきた導入や運用のノウハウが生かせればと思っています」(佐々木氏)

 世界で活躍する人材を育てるにはどうすればよいか――。文部科学省も「国際的な人材育成」を目標に教育改革に取り組んでいるが、他言語への心理的障壁が低い小学生のうちに異文化に触れさせるのは有効な手段だろう。ITの力で距離を縮める、テレプレゼンスが英語教育のスタンダードになる日も近いのかもしれない。

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