FinTech系クラウド会計 A-SaaSとfreeeが提携、データ連携開始税業務のマイナンバー対策にも期待(2/2 ページ)

» 2015年04月15日 08時00分 公開
[岩城俊介ITmedia]
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「マイナンバー対応」は逆風か、追い風か

 税理士の業務は、2016年1月にはじまる「マイナンバー制度」と非常に深く結び付く。マイナンバーは前提として、これまで個人情報保護法では対象外(5000件以下)の事業者であっても、それを1件でも取り扱うならば「個人番号関係事務実施者」となり、規制の対象になる。端的には法人は従業員を1人でも雇っていればその対象となり、マイナンバーの取り扱いについて「必要な範囲を超えて扱わない」「情報漏えいしないよう安全に管理する」「取り扱う従業者を教育、監督する」「委託先を監督する」などの義務や責務を負う。個人情報保護法より罰則の種類が多く、法定刑も重くなっている。

 一方、全国385万社におよぶ中小企業や団体、さらに個人事業主はもともと、税や社会保障に関する書類作成を税理士や社会保険労務士に委託している実情がある。記帳入力の代行から税務申告まで税理士に「丸投げ」とする例も多い。マイナンバーも管理することになるならば、税理士事務所も「個人番号関係事務実施者」となり、マイナンバーの取り扱いに関する義務や責務を負う。そしてマイナンバー管理においては顧問先に委託・監督される立場ながら、マイナンバーに対する顧問先(法人など)の意識が低い懸念から顧問先への教育や啓もうを担わなければならないジレンマを抱えている。

 マイナンバー業務や管理を主に請け負う事業者ならばともかく、税理士としては業務の範囲外で、税申請の実務に大きく影響する。もしマイナンバーを税理士事務所で保管するならば、設備や教育など対応のためのコストも多大にかかる。取り扱いを誤ると事業所の存続に関わる制度のため、どう対応すればよいか悩んでいる。「できれば、持ちたくない」のが本音という。

photo 税理士が抱えるマイナンバー対応の不安を解消する機能を設けた

 A-SaaSは「これら税理士の声を反映して、“関与しない”“持たない”仕組みで対応できる」ことが大きな強みとアカウンティング・サース・ジャパンの佐野徹朗社長は述べる。A-SaaSは、マイナンバーをセキュアなクラウド上で保管し、税理士側は入力も確認も関与させない(見えない)仕組みとしたことで、税理士が関わるタスクそのもの、税理士側から流出するリスクを解消した。A-SaaS内部でマイナンバー記載が必要な申告書類は自動でバージョンアップされるため、最終的に税務署へ電子申告する書類へはきちんとマイナンバーを反映できる。

 税に関する業務を委託する法人にもメリットがある。基本的なマイナンバー対応は当然必要だが、委託先を監督する義務や責務に関する業務や委託先から流出するリスクが減らせる。

 特に中小規模企業での混乱が危惧される「マイナンバー制度」。税理士へ税業務を委託する企業の総務・経理部門とその実装実務や骨子制定を担う情シス担当は、取得や管理、セキュリティ対策といった自社の対応とともに、委託する税理士事務所への対応や配慮を考察することもマイナンバー対策の一歩になる。こういった機会からも、クラウド会計ソフトの普及はさらに進みそうだ。

盛り上がるFinTech系、有力クラウド会計・税務ソフトの2サービス

 A-SaaSは「税理士向けに特化」したクラウドサービス(SaaS)として展開するクラウド会計・税務・給与システム。専用サーバや税法改正ごとのアップデート、顧問先の会計ソフトと分断されているといった大きなコスト負担を強いるオンプレミスの従来型税理士システムに対し、インターネット環境とブラウザがあればよい利便性やコストメリットにより、税理士事務所への普及を進めている。

 具体的には、会計から税務申告までをカバーするシステムと税理士の顧問先や法人向けの会計システムの双方を提供する。記帳代行などの会計業務や税務申告の業務効率化とともに、顧問先企業で経営状況をリアルタイムに共有ができる機能を生かし、税務・財務観点での経営指導など税理士における高付加価値業務に注力できる工夫に注力した。主要株主に約800人の税理士がおり、税理士の需要をいち早く機能に取り入れる体制も強みとする。

 freeeは個人事業主の確定申告や法人の経理、給与事務、請求事務を中心に「自動化」と「バックオフィス最適化」を推進するクラウド会計ソフト。クラウド会計ソフト freeeとクラウド給与計算ソフト freeeの2軸を展開する。クラウド会計ソフトでトップシェア、登録事業所数で約30万件(2015年4月現在)を擁する。

 グッドデザイン賞(2013年度)、ベンチャーキャピタルや政府系ファンドなどグローバルな有力投資家よりプロダクトやビジネスモデルが高く評価され、2012年7月の創業以来累計17億円の資金提供を受けている。




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