マイナンバー2015

間に合う? マイナンバー対応 「進んでいる企業」はこうしている特集 情シスが率先して実施する「企業のマイナンバー対応」(3/3 ページ)

» 2015年07月31日 07時30分 公開
[岡崎勝己ITmedia]
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マイナンバー対応にはいくつかの落とし穴も 「今すぐ実施」してほしいこと

 課題の2つ目は実務担当者や従業員へのマイナンバー制度の周知と教育である。これが疎かであれば、強固な管理ルールを策定しても、人為的なミスによって情報漏えいのリスクが高まる。当然、サッポログループではマイナンバーの収集前に各社の実務担当者を集めて社内教育を行うとともに、教育ツールを作成しグループ社員の教育も各社主導で実施する方針を固めている。

 「業務にはイレギュラーな作業もしばしば発生します。また、パート・アルバイト社員まで含めた教育徹底は難しい面もあります。運用が始まってからも教育を継続し続けることが肝要です」(城戸氏)

 帳票変更のための各種システム改修はシステムの更新でほとんど対応できる見込みで、この部分は導入ソフトウェアベンダー側の対応によってそれほど手間を要さない見通しである。また、グループ内で不動産事業を手掛けるサッポロ不動産開発は個人番号の収集を要する個人取引先(地主の方など)が多いと予測されたが、その数は予想より下回り、範囲は限定的で、フォローできる範囲であることが分かった。つまり、このような個人取引先が多い事業を展開しているならば、早期に把握し、適切に対策する準備が必要ということだ。

 企業の個人番号の収集業務において、従業員でない個人取引先の対応は「落とし穴の1つ」と言われている。従業員やその家族ならば告知や通知が容易で、Web収集システムを使える土壌などにもある程度明るいが、例えば地主の方などはそう簡単にはいかないことも予測される。「改めて、ゼロから個人取引先の番号収集や管理と利用のためのフロー策定が求められます。この課題を把握し、時間と手間がかかると予測されるこの調査は、すぐ実施することを勧めます」(城戸氏)

マイナンバー対応は今後も続く

 大企業のマイナンバー対応では、グループ各社が個別に取り組むケースもあるかもしれない。その場合、方針策定などで重複した業務が発生し、方針の差異によって混乱を来たすこともあり得る。この点、サッポログループのアプローチは全社の「プロジェクトチーム」を組んでグループ共通の方針を策定し、各社が現場に落とし込んだ。なによりグループとしてガバナンスを十分に利かせるためだ。「横断して対策指示の権限を持つプロジェクトチームを構成したのがポイントです。各社の対応がグループ方針から外れないよう、経営トップにも強く監督を求めています」(城戸氏)

 マイナンバー制度の対応はやはり煩雑である半面、もちろんメリットもあったと城戸氏は述べる。

 まず交流が薄かったグループ各社の業務を改めてこの機会に把握できたこと。そして情報管理の徹底に向け、生体認証(指紋認証)方式の認証システムの導入検討なども同時に進んだことで、グループとしてのセキュリティ体制やコンプライアンス順守レベルを底上げできたこと。企業の対応として極めて重要なことだ。

photo サッポロビールのWebサイト

 このほか付随的な成果には、作業を進めていく過程で、仮に対応の遅れた場合でも個別対応で処理できることが確認できたこと。前もって課題と対策方法を把握できていれば、焦りから生じる数々のリスクを低減できることになる。

 「マイナンバーを正しく取得できる体制があれば、制度開始の直近で発生する入退社にともなう書類への個人番号の記載はひとまず手書きで対応することも可能です。そして個人番号を記載した源泉徴収票の提出は2017年1月となるため、2016年10〜11月は年末調整に向け各種書類をやりとりする業務とともに、ずれ込んだ作業をこの時期にまとめて実施することで対応を図ることもできます」(城戸氏)

 サッポログループの取り組みは、多くの従業員を抱える大企業ならではの課題もさることながら、すべての企業に共通するマイナンバー制度の本質をとらえた対応・対策がやはりキモになっている。大きなポイントは「横断型プロジェクトチーム」と「経営トップへの理解」、「各グループ/部署の現状と必要なことの調査を早期に行い、把握する」、そして「対策を牽引するプロジェクトチームが、制度を確実かつ正確に理解する」ことと言える。

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