この高齢者見守りシステムは、まずは8つの高齢者家庭を対象に実証実験を行った。既に類似のシステムを開発していたベンチャーと協力し、ペンダント型端末を3Dプリンタで作るという方法で、システム自体は低コストかつ迅速に用意できたそうだ。
2015年度は補助金を得て始まったが、民生委員の活動自体には少額の交通費等の他は予算がつかない。持続可能なシステムとするためには、大きなビジョンを描きつつ、まずはスモールスタートで重要度の高い機能から始めるのが重要だ。
川向さんはMBA留学で渡米し、シリコンバレーのIT企業でアカウンティングマネージャーを務めた経験がある。最新のテクノロジーに明るく、それを扱えるベンチャー企業とのパイプがある川向さんのようなコーディネーターが地元にいることは、地方が抱える課題への対応を、少ない財源で効率的に進めるためにも有利になる。
人手不足や医療問題など、氷見市に起こっている問題は、今後、日本の多くの都市が直面するだろう。しかし、そうした問題も最新のテクノロジーとビジネス、そしてほんの少しのアイデアで状況を変えられる――川向さんのプロジェクトはそんな可能性を感じさせてくれる。
1967年京都生まれ。24歳で単身渡米しHoly Names Collegeへ入学。MBAを取得後、大学講師や大手会計事務所を経てシリコンバレーのハイテクベンチャーに入社、アカウンティング(経理)を担当。
2003年に帰国し、ブランドコンサルティング会社を創業の後、インド人エンジニア派遣ビジネスを立ち上げ譲渡。その後、東京で外資系ファンドのホテル投資部門や外資系ホテルの財務部長を歴任。子育てのできる環境を求めて妻の実家である七尾市に移住した後、氷見市観光協会でインバウンドなどの企画立案に従事。早朝の漁港に通い続け学ぶうちに、『ひみ寒ぶり』と定置網漁の価値に気付き、メディアに発信し始める。現在は本業の傍ら、定置網エバンジェリストとして、資源管理に優れた持続可能な漁業として定置網漁を発信。2016年1月には北陸初開催となるTEDxHimiを開催。
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