連載
» 2001年01月06日 12時00分 公開

eマーケティングの現場から技術者向けの、eマーケティングTIPS(4):システムダウンに思うこと

[水島久光,株式会社 インフォシーク]

 先日、ある通信キャリアのインターネットのシステムが不具合を起こしたことを、NHKのニュースで聞いた。大騒ぎをする報道姿勢を、なぜかとても奇異に感じた。と同時に、ある出来事を思い出した。あれは僕がこの世界に入りかけたころのことだったと思う。アメリカのインターネット・サービスの現場で体験した、なんとも形容しがたい“感覚”を僕は一生忘れない。

 当時、そのインターネットを全世界に供給するためのサーバ・ルームはアメリカ西海岸のオフィスの一角にあった。僕がそのオフィスを訪問したその日、何の前触れもなく突然サーバがダウンした。

 そこには数多くのスタッフが働いていたが、サーバがダウンしても皆冷静だった。というか、平然としていた。日本では考えられないほど広いオフィスの中には、フリスビーで遊んでいる人もいたくらいだ。

 インフラ提供サービスは「使えて当たり前」と思い込んでいる日本人とは、多少の感覚的な違いはあったのかも知れない。だが、僕はそのとき、「カリフォルニアは停電の多い土地だから」とか「そういう国民性だから」ということでは割り切れない何かを感じた。

 最近になって、その時の謎めいた感覚の「謎」がようやく分かりかけてきた。あのころ(1996年当時)は、アメリカとて、いまの日本よりもずっと未熟な──そう、インターネット黎明期だった。ということは、開発者と利用者は同じコミュニティに属していたのだ……と、いまさらながら気がついた。

 開発者も利用者も、お互いの未熟さを知りつつ、インターネット・テクノロジやサービスの成長を見守ることができたということである。皆、将来の夢は持ちつつも、実際に目の前にあるシステムの不充分さを理解するリテラシーをも持ち合わせていたのだ。

 だが、いまはそういうわけにはいかない。開発者と利用者の間には、一般の消費財と同じような、「提供者」と「消費者」というはっきりした区別が出来上がりつつあり、お互いに同じコミュニティに属しているという実感が乏しくなった。

 それどころか、新しいインターネット・ユーザーは、かつて開発者と利用者が同じコミュニティにいたということも知らず、テレビなどの受動的なメディアからの情報に馴らされた頭でこの世界に入ってくる。

 インターネットは、そのテクノロジにしろ、そのサービスにしろ、無邪気に“完成品”を求める消費者に対しては未だ未完成なものでしかない。今後の発展を考えれば、常に将来に向かって進化する未完成なものでありつづけなければならない。この両者のはざまをどのようにして埋めていったらいいのだろうか。

 利用者の規模が小さかったころと比べて違ってきたのは、サービス提供者と利用者が始めから同じコミュニティに属しているわけではないので、1つ1つのサービスを通じて、完全に受動的な利用者との関係を結び合っていかなくてはならないという点だ。

 インターネットは多かれ少なかれ、ある一定水準以上のリテラシーを利用者に求めつづけるものだと僕は思う。利用者側には、完成されたものを単に消費するのではなく、よりよいサービスの将来像をともに作っていくという参加意識が必要だし、もう一方のサービス提供側である事業者には、そうした利用者の期待にきちんと応えていくという姿勢が問われる時代が来ているのではないだろうか。

Profile

水島 久光(みずしま ひさみつ)

株式会社 インフォシーク 編成部長

mizu@infoseek.co.jp

1984年慶応義塾大学経済学部卒業後、旭通信社にて、ダイレクト・マーケティングを手がける。1996年にはインターネット広告レップ「デジタルアドバタイジングコンソーシアム」の設立に参加し、インターネット・マーケティングに関する多くのプロジェクトに携わる。そのうちの1つ、情報検索サービス「インフォシーク」の日本法人設立準備にあわせて旭通信社を1998年10月に退社し、「インフォシーク」を運営していたデジタルガレージに入社。1999年6月、インフォシークの設立後、現職に着任。現在、日本広告主協会傘下のWEB広告研究会広告調査部会幹事も務めている。日経BP社『ネット広告ソリューション』インプレス『企業ホームページハンドブック』(いずれも共著)。


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