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» 2000年12月16日 12時00分 公開

eマーケティングの現場から技術者向けの、eマーケティングTIPS (2):ECと電子商取引のはざま(その2)

[水島久光,株式会社 インフォシーク]

 「ECを始めたが、一向にもうからない」という一見ショッキングな見出しについて、もう少し考えてみよう。冷静になれば、至極当たり前のことである。ECは商売繁盛の「まじない」ではない。心のどこかで、エレクトロニック・コマース(EC)に進出すること、イコール成功への糸口であると、僕たちは単純に思い込んできはしなかったか?

 ECとは、文字通り「電子化された商取引」である。では、なぜ電子化するのだろうか。「皆がやっているから」「時代の流れだから」ではなく、「電子化しなくてはいけない理由」を、僕たちはちゃんと考えたことがあっただろうか。

 電子化とは、「合理化」の技術だといえる。合理化にはいくつかの局面がある。プロセスがスムーズになること、それによって、スピードがアップし、スケールが拡大すること。しかしこれは、あくまで合理化が与えてくれる“結果”であって、合理化を支える“本質的な基盤”はもっと別のところにある。

 それは、合理化の対象となる1つ1つのパーツの「共通化」「単純化」である。人々が、PCにつながっていることで、ある共通の作法にのっとった行為をする。これこそ「共通化」「単純化」であり、その共通の作法で物を買うことによってECは支えられているのである。

 ここまで説明すれば、日本ではなぜECがもうからないのか、もうお分かりであろう。その「共通化」「単純化」という基盤ができていない、もしくはまだその規模が小さいからである。スケールのないところに数多くのビジネス・ソースを突っ込んでみたところで、すぐ干上がってしまうのは必至で、今の日本のEC市場は「風呂を空だきしている」状態に近い。

 一昨年アメリカがEクリスマスに突入できたのは、一気呵成の家庭におけるインターネット普及の伸びで、ECを支える基盤としての「規模」が用意されたからである。

 これに対して日本は2年遅れで、しかもインターネットの企業への普及が先導したかたち。これでは、実際にECが育つための揺りかごとしては機能しない。それでも、ようやく2000年に入って、日本でも家庭への普及に拍車がかかってきたが、それに勝るとも劣らないスピードでEC事業者の方が増えている。これではもうかるわけがない。

 一度頭を冷やして、冒頭の「合理化」の意味に立ち返ってみよう。そもそも、日本とアメリカとでは、流通の合理化という局面で、別の方向を目指していることに気付く。アメリカの場合、まず空間的なスケールを満たすことが要求され、それを実現するのに「スピード」が寄与するという構造をもっていた。なぜなら、もともと広大な国土をもつアメリカの流通空間は「スカスカ」だったからである。

 しかし、国土が狭く、元来交通網が細かく整えられた「密度の濃い」日本の場合、流通における空間的なスケールを得られること自体、まれであった。そこで日本の流通業者は、まず先にスピードを高め、限られた空間内での「回転数」を上げることによって規模を達成してきたのだ。

 日本で成功しないことを嘆くEC事業者の場合、一気に規模を追求しすぎているケースが多い。アメリカでなら「合理化」の種をまくことが成功の秘訣にもなろう。が、市場規模の未成熟な今の日本においては、ECへの過剰な投資が、かえってその成長の芽を摘むことにもなりかねない。

 関西圏の元気な個人サイバー商店主は、アメリカ的なスケーラビリティには向かわず、「回転数(フリクエンシー、購買単価)」を上げることに知恵を費やしている。今はまだどちらを志向すべきか、あるいは、その指向性の違いの是非を問う時期ではないが、とにもかくにも、日本のECは今、オリジナルな道を歩き始めている。

Profile

水島 久光(みずしま ひさみつ)

株式会社 インフォシーク 編成部長

mizu@infoseek.co.jp

1984年慶応義塾大学経済学部卒業後、旭通信社にて、ダイレクト・マーケティングを手がける。1996年にはインターネット広告レップ「デジタルアドバタイジングコンソーシアム」の設立に参加し、インターネット・マーケティングに関する多くのプロジェクトに携わる。そのうちの1つ、情報検索サービス「インフォシーク」の日本法人設立準備にあわせて旭通信社を1998年10月に退社し、「インフォシーク」を運営していたデジタルガレージに入社。1999年6月、インフォシークの設立後、現職に着任。現在、日本広告主協会傘下のWEB広告研究会広告調査部会幹事も務めている。日経BP社『ネット広告ソリューション』インプレス『企業ホームページハンドブック』(いずれも共著)。


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