連載
» 2001年02月24日 12時00分 公開

eマーケティングの現場から技術者向けの、eマーケティングTIPS(10):アライアンスとアウトソーシング

[水島久光,株式会社 インフォシーク]

 eビジネスに参入した人たちが、ある程度慣れて周りがよく見え始めると、自分たちより先行した企業や、自分たちにはないけれども上手に使いたい技術など、欲しいものがたくさん出てくる。

 そうしたとき、皆が一様に考えるのが「協業」、すなわち「アライアンス(提携)」というスキームである。不思議なことに、そこで出合う会社同士、必ず口にするのが「お互いウイン=ウインの関係で、ぜひ……」という謎の呪文である。

 確かに、オンライン・ビジネスには「アライアンス」が有効に機能する環境が用意されている。そもそも、インターネット自体が共通の約束事の上に築かれた世界だから、出来合いのパーツを組み合わせるのは非常に容易である。

 利用者に「ある場所から別の場所にジャンプしていること(サーバをいくつも経由していること)」を感じさせずに、一連のサービスを提供することもできる。このようにして、自社にない資産を抱き合わせることで、スピードや拡張性を高め、コスト効率を向上させるだけでなく、企業同士のマッチングの妙によってブランディング的にも付加価値を付けることが可能な場合もある。だから「アライアンス」という言葉は非常に魅力的に映る。

 外部企業との関係では、“アウトソーシング”という言葉と“アライアンス”という言葉とがある。日本語でいえば前者は「外注」であり、後者は「提携」であるが、しかし、どうも後者を用いる場合には、その「提携」という言葉どおり、向き合い方が極めてあいまいになり、その関係をはっきりさせないまま作業を始めた結果、「うまくいかない」「トラブルが発生する」といったケースが少なくない。

 失敗する第1のパターンが“相手に対する過大評価”。アライアンスを持ちかける場合、少なからず、相手方に自社が持っていないアセットを見込むのは当然だが、利用できる規模を正確に見極めずに進めた場合、往々にして期待外れに陥り、自社が相手方に費やした労力とのバランスに苦しむこととなる。

 第2のパターンは“利害競合が起こる場合”。「顧客層が違う」「提供するサービスが違う」ということで、提携してから、実は、ビジネスモデル自体が競合している(例えば、互いにバナー広告に依存していた)ということが分かり、トラフィックの奪い合いに陥るケースもよく見られる。

 アライアンスの失敗は、「貸し借り意識」に起因するものがそのほとんどではないだろうか。その点では、“無償の愛”とかいいながら、別れるときには慰謝料を求め合う男女の関係に似ているような気もする。そもそも最初にアライアンスを口にしたとき、タダで(もしくは安価に)自分にないものを手に入れたいという「打算」があったのではないか?

 こう考えると、アウトソーシングの方がよっぽど健康的ではないかと思われる。しかもASPにしても、コールセンターなどの人的システムにしても、オンライン・ビジネスのアウトソーシングは「下請け」的機能よりも、自社にない技術、インフラの“複数社による共同利用”のニュアンスが強い。古典的なWebサイトの「外注制作」にしても、“エンジニアのリソース”を他社と共有しているといった方が現実のイメージに合う。

 アウトソーシングの地位向上というと大げさだが、これは産業の垂直統合から水平統合への動きを象徴している出来事かもしれない。オンライン・コミュニティの甘い幻想(皆で肩を組んでともに成功しよう!)からの脱却とともに、「安易なアライアンスとしての『ウイン=ウインの夢』」は消えつつあるが、代わりに僕らは新しい産業構造を築きつつあるのかもしれない。

Profile

水島 久光(みずしま ひさみつ)

株式会社 インフォシーク 編成部長

mizu@infoseek.co.jp

1984年慶応義塾大学経済学部卒業後、旭通信社にて、ダイレクト・マーケティングを手がける。1996年にはインターネット広告レップ「デジタルアドバタイジングコンソーシアム」の設立に参加し、インターネット・マーケティングに関する多くのプロジェクトに携わる。そのうちの1つ、情報検索サービス「インフォシーク」の日本法人設立準備にあわせて旭通信社を1998年10月に退社し、「インフォシーク」を運営していたデジタルガレージに入社。1999年6月、インフォシークの設立後、現職に着任。現在、日本広告主協会傘下のWEB広告研究会広告調査部会幹事も務めている。日経BP社『ネット広告ソリューション』インプレス『企業ホームページハンドブック』(いずれも共著)。


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