連載
» 2007年04月09日 12時00分 公開

目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(6):シスアド試験前の休息、猛アプローチ始まる!(第6話) (4/4)

[山中吉明, 那須結城,@IT]
前のページへ 1|2|3|4       

伊東の猛アタック開始!

 それぞれが間違えたところを相互に説明し合い、時計の針が午後9時を指すころ、ようやくすべての見直しを完了できた。

 谷田と居残りをしている間中、緊張の連続だった伊東は、身も心もすっかり疲れ果てていたが、これはまたとないチャンスだと、思い切って谷田を食事に誘ってみた。

伊東 「は、は、腹、減りましたね。食事してから帰りませんか?」

 谷田の脳裏に、ふと、坂口の顔が浮かび、話をそらすようにいった。

谷田 「坂口さん、最近来ないね」

伊東 「こっちに来る前に坂口さんも誘ったんだけど、忙しいから1人で行ってこいって……」

谷田 「そう……。坂口さん、最近、ちょっと冷たくなったのかな」

伊東 「うーん、忙しいのは確かだけど、来られないこともないと思うんですけどね……」

 話をしているうちに、谷田は、勉強会にもめったに顔を出さなくなってしまった坂口に、少し苛立ちを感じ始めた。眉をひそめる谷田を見て、伊東は慌てて付け加えた。

伊東 「だけど、坂口さんも頑張ってますよ。関係者がたくさんいて、皆さん勝手なことばかりいっているので、まとめるのが大変っていうか……。僕もいまの部署に異動してから、いろいろと疲れることが多くて……偉い人とのやり取りも多くて気を使うし」

谷田 「そうなの?」

伊東 「谷田さんは、落ち込んだりすることってありますか?……仕事じゃなくても」

谷田 「(そりゃ、なくはないけど……)」

 谷田は心の中で坂口のことを考えながら口ごもった。

伊東 「ぼ、ぼ、ぼきゅでよかったら、何でも相談に乗りますから!! 話をすればすっきりしますよ。僕はいつでも谷田さんの話、聞きますから!!」

 谷田は返事に窮する……。

伊東 「あ……それはそうと、早く食事に行きましょうよ!」

 伊東は少し強引に誘ってみた。

谷田 「そうね、もうこんな時間じゃ、家に帰って1人で食べるのも……。じゃあ、今日は一緒に食べて帰ろうかな」

伊東 「よかった。谷田さんと一緒に食事できるなんて、僕ぁ幸せだなぁ! これって、まるで、デートですよね!?」

谷田 「えっ!?」

伊東 「あ、いやいや、冗談です、冗談。時間も遅いので、早く行きましょう!」

 さて、2人で街へ出てみたものの、伊東は新宿周辺のお店はあまり詳しくなかった。せっかく谷田と2人で食事なんだからおしゃれな店を探さなくちゃ、とあちこちの店を出たり入ったり……。

伊東 「ご、ごめんなさい。ここも満員でした……。あ、あそこ、良さそうなお店です。ちょっと空いてるか見てきますね!」

谷田 「伊東さん、もういいですよ、どこでも。こっちに私の知っているお店がありますから、そこへ行きましょう」

 そういって谷田は、行きつけの居酒屋へ伊東を導いた。店に入るとちょうどグループ客が会計を済ませたところだったので、2人ともようやく席にありつけた。

伊東 「いやあ、ぼ、僕、全然駄目ですね! お店もろくに選べなくて」

谷田 「いいんですよ。伊東さんは、この辺のお店、詳しくないんですから」

伊東 「こ、こんどは汐留とか、銀座に行きましょう。本社の近くなら、ぼ、僕の島ですから、はは、ははぁ!」

谷田 「はい。そうですね」

 伊東の純情そうな言葉に、思わず谷田は顔がほころんだ。ビールのジョッキが2つ運ばれてきた。

伊東 「それじゃあ、2人の初級シスアド合格を祈って乾杯!!」

谷田 「一緒に合格できるといいね。乾杯!」

 ジョッキをぐいっと飲み干した伊東は、普段あまり見せたことのない、あどけない顔をしていた。そんな伊東を見て、谷田の心には、何かほっとする気持ちが芽生えた(ひょっとして、伊東さんって癒し系?)。

 食事も終わりに近づいたころ、伊東が切り出した。

伊東 「た、谷田しゃん!!」

谷田 「え?」

伊東 「あ、あのぉ……。メールアドレス、教えてくれませんか?」

谷田 「えぇっ? ……どうして?」

伊東 「そ、その……。勉強で分からないところができたら、メールで質問したいのでぇ!」

谷田 「ああ、そうなの……。メールアドレスは……」

 谷田は携帯電話を操作してメールアドレスを表示させ、伊東に見せた。

伊東 「あ、ありがとうございます! ついでに、携帯番号も……」

谷田 「もう、伊東さん、そんな簡単にいわないでくださいよ! 私も年ごろの女の子なのよ!」

 谷田も少しお酒の勢いもあって、思ったことをつい口に出してしまった。

伊東 「す、すいません……。ダメですか?」

 上目遣いに谷田をのぞき込む伊東は、まるで子犬のような顔をしている。

谷田 「ふふふ……。伊東さんって何だか憎めないですね。いいですよ、いたずら電話しないでくださいね!」

伊東 「ああ、あ、あ、ありがとうございます!」

谷田 「あ、もうこんな時間! そろそろ帰りましょうか」

 谷田が伝票を持ってレジに向かおうとすると、伊東が伝票を横取りしていった。

伊東 「ここ、ここは僕が払いますから……。誘ったの僕だし」

谷田 「そんな、いいですよ。払います!」

 伊東は、キザに人差し指を立ててチッチッチッと動かすと、レジに向かった。谷田は財布から千円札を数枚取り出すと、伊東の後を追いかけた。伊東は、レジの前で財布を広げると、「あっ」と声を出した。そして、申し訳なさそうな顔をしながら谷田を見た。

伊東 「す、すいません……。あ、あのぉ……、銀行行くの、忘れてました……」

 伊東は、真っ赤な顔をして、中身がほとんど入っていない財布を開いて見せた。谷田は1度出した千円札を財布に戻すと、一万円札を取り出して伊東に渡した。

 こうして、2人の居残り勉強会は、居酒屋での二次会も含めて、午後11時近くまで続いたのだった。谷田と伊東は新宿駅まで一緒に行くと、それぞれの帰途についた。

 伊東は、山手線に乗り込むとすぐに携帯電話を取り出し、谷田に教えてもらったメールアドレスに早速メールを送った。

『谷田さん、今日は勉強会お疲れさまでした。あと、一緒に食事ができて、僕は天にも昇るくらいうれしかったです。本当に楽しい時間が過ごせました。あと、お金、立て替えてもらってすいません。明日お返しします。ごめんなさい。あと、今度は汐留で飲みましょう! それじゃ、おやすみなさい!(^◇^)伊東より』

 谷田は、込み合う小田急線の急行電車の中で伊東からのメールを読んだ。

『こちらこそ、ありがとうございました。お金のことは気にしないでくださいね。谷田』

 伊東へのメールを返信したところで、電車は代々木上原駅に着いた。込み合う電車にさらにたくさんの人が乗り込んできた。谷田は人と人の間に挟まれながら、勢いでもう1通、メールを書いた。

『坂口さん、元気ですか? 今日は伊東さんと一緒に食事をして、プロジェクトのことをいろいろ聞きました。忙しいみたいですが、無理しないでください。また勉強会に来てくださいね。(^^♪谷田』

 送信ボタンを押そうとしたが、谷田は少しためらった。結局、成城学園前駅で電車を降りるまで、そのメールは携帯電話の中にとどまっていた。

 駅から自宅へ歩く途中、谷田はもう一度携帯電話を取り出すと、「今日は伊東さんと一緒に食事して、プロジェクトのことをいろいろ聞きました」の部分を削除して、送信ボタンを押した。

◆次回予告◆

 次回は、坂口がのんきにディズニーシーで楽しんでいる間に、西田や豊若、天海たちがプロジェクトを裏で支える様子をお伝えします。一見、非協力的に見える西田や天海たちが実は裏方でさまざまな活動を行っていたのです。

 そして、急接近する伊東や谷田たちはいよいよ情報処理技術者試験の本番を迎えます。結果はどうなるのでしょうか? お楽しみに。

「目指せ!シスアドの達人-第2部」の登場人物関係図

ALT 「目指せ!シスアドの達人-第2部」の登場人物関係図
(クリックで拡大)

IT企画推進室

室長 名間瀬 勝也(なませ かつや) 46歳


主任 坂口 啓二(さかぐち けいじ) 31歳


社員 伊東 敦史(いとう あつし) 24歳


今回登場メンバー
(注:SD=サンドラフト、SDS=サンドラフトサポート)

SD 副社長 西田 義行(にしだ よしゆき) 59歳


SD 専務取締役兼CIO IT企画部長 佐藤 光一(さとう こういち) 52歳


SD 営業企画部長 天海 有紀(あまみ ゆうき) 39歳


配送センター副センター長 岸谷 小五郎(きしたに こごろう) 42歳


製造部主任 藤木 直哉(ふじき なおや) 34歳


情報システム部主任 八島 秀樹(やしま ひでき) 36歳


マキシムアンドコンサルティング シニアコンサルタント 豊若 越司(とよわか えつし) 39歳


マキシムアンドコンサルティング シニアコンサルタント 松嶋 七海(まつしま ななみ) 38歳


松嶋七海の娘 松嶋 真鈴(まつしま まりん) 10歳


筆者プロフィール

シスアド達人倶楽部

「シスアド達人倶楽部」は、経済産業省が実施する情報処理技術者試験の1つ、上級システムアドミニストレータ試験の合格者9名で構成される執筆チーム。本連載「目指せ! シスアドの達人」は、シスアドの日常を知り尽くしたメンバーが、シスアドの働く現場をリアルに描くWeb小説だ。

執筆メンバー9名は、上級システムアドミニストレータ試験合格者と試験合格を目指す人々で構成される任意団体:上級システムアドミニストレータ連絡会(JSDG)の正会員。


山中 吉明(やまなか よしあき)

上級システムアドミニストレータ連絡会・会長

那須 結城(なす ゆうき)

上級システムアドミニストレータ連絡会正会員。製造業勤務


「目指せ!シスアドの達人−第2部」バックナンバー
前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -