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デジタル分野総なめ――「2005年デジタルトップ10」麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)

» 2005年12月30日 23時59分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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――2位はパイオニアが9月から販売しているプラズマテレビ“ピュアビジョン”の50V型「PDP-506HD」ですね。

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麻倉氏: 今年のパイオニアは経営的には大変でしたが、製品面では実りがあったのではないでしょうか。それを象徴するのが、この2位に挙げたプラズマテレビ「PDP-506HD」と、もうひとつがユニバーサルプレーヤー「DV-AX5AVi」です。その時代にふさわしい最高のプレーヤーを出してきたのがパイオニアの特徴でしたが、ここ数年はパッとした製品がありませんでした。ですが今年終盤になって登場したこの「DV-AX5AVi」は、いかにもパイオニアらしい素晴らしい映像を提供してくれます。

 プラズマテレビの分野でも、映像に対するパイオニアスピリットが近年は薄れて、単に輝度パワーだけを求めるなど大衆に迎合していたがありました。ですが秋-冬商戦に登場した「PDP-506HD」は、プラズマ老舗の面目躍如といった製品に仕上がっています。

 従来の製品に比べて黒の沈みがしっかりとして、なおかつ滑らかなグラデーションに仕上げ、ノイズも少なくなっています。しっかりと画作りを行っているのがわかりますね。残念なのフルハイビジョンじゃないことですが、このへんは来年に期待ですね。

――いよいよ2005年のナンバーワンですが、ソニー「VPL-VW100」と日本ビクター「DLA-HD12K」というLCOS系デバイスを使ったフロントプロジェクター2製品を選ばれましたね。

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麻倉氏: ソニー「VPL-VW100」は、今年のAV専門誌のベストバイを総なめにした感がありますね。“ミニQUALIA 004"としてユーザーが求めていたスペックをほぼ満たし、しかもそれが100万円台で購入できるとあれば売れるのも当然です。LCOS系デバイス「SXRD」をたくみに使いこなした、大画面で映える高解像度に高いコントラストと階調感というトータルバランスの良さに、ソニーらしい明朗で情報量の多さが特徴です。びっくりするのは音の静かさで、LEDランプがついていないと切るのを忘れてぐらいの静音性を実現しています。QUALIA 004ユーザーでもある私からの知見では、厳密にはVPL-VW100とQUALIA 004の映像は違っていますが、この価格であれだけの映像が楽しめるというのは画期的なことですね。

 一方、ビクターの「DLA-HD12K」も、「VPL-VW100」に負けず劣らず大変素晴らしい映像。DILAのチップらしいシルキーな映像とコントラストの高さに加えて、今回の製品は3管式プロジェクターのような滑らかさを表現しています。ファロージャ製のビデオプロセッサを採用した「DLA-HD12K」のほか、アンカーベイテクノロジー製のビデオプロセッサを使った「DLA-HD11K」も用意されていますが、「DLA-HD11K」はあまり手を加えずに元の階調性やコントラストを出す感じでフラットで素直な映像が特徴ですが、「DLA-HD12K」の方はファロージャーはここまでやるか、という感じの素晴らしい演出性が特徴で、微小信号までも演出していくという、アメリカンシネマの伝統を踏襲したファロージャーならではの画作りになっていますね。

 以上、今年のアサクラ・トップテンを開陳しました。非常に実りの多き年といえるでしょう。来年も、コンテンツ、メディア、ハードウエアをまんべんなく探求し、読者のみなさんに役立つ情報、見方、切り口をお届けしたいと思っています、早速、1月2日からラスベガス入りして、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)をITmedia、そのほかでリポートします。お楽しみに。


麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのK2PROJEST/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント

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