評価のポイントとしては、以下のようなことがあるだろう。
・音量が異なるソースのつなぎ目が不自然にならないか
・ダイナミックレンジの圧縮感はないか
・音楽を聴いた時に周波数特性の不均一さを感じないか
デモ時はモニター上に、マスターボリュームと周波数帯ごとのゲイン変化がリアルタイムで表示される。
最初のデモはチャンネルごとの音量差を吸収するというもの。あるチャンネルでドラマ系映画のセリフが聞き取りやすい音量に合わせ、次にバラエティ番組に切り替え。するとスタジオ観衆の大きな歓声がものすごく大きな音になる。ここでDolby Volumeをオンにすると、番組を切り替えても音量感がほとんど変化しない。つなぎ目もほとんど意識することがない。
これは番組本編とCMの間も同じ。CMの音量が大きめなのは日本も米国も同様だが、やはり静かなドラマ系の映画やテレビドラマに合わせてボリュームを設定していると、CMになってウルサすぎ我慢できない。これがDolby Volumeを用いることで、同じように音量感が調整される。
ダイナミックレンジの圧縮感も、短時間のデモの中に限ればだがまったく感じない。ゲイン調整のグラフを見ていると、チャンネルの切り替えやCMインのタイミングなどで、瞬時にゲイン調整のパターン(周波数帯域ごとの調整の様子)が急激に変化し、同じソースの間は多少の周波数特性の変化があるものの、ほぼ一定で安定している。
次に録音レベルが異なる様々なジャンルの音楽が切り替わっていくデモも見せていただいたが、こちらも現代的なポップスから古いレベルが低めのロック、クラシック、さらにヒップホップ、ジャズ、ヴォーカルと変化していく中で、ある一定の統一感が取れた音量で安心して聞ける。
周波数特性を動的に変化させているため、音域バランスの悪い音になるか? とも思ったが、それもない。オリジナルのバランスを知らない楽曲だったからというのもあるが、生音楽器の音にも不自然さはなく、ダイナミックに動く周波数帯ごとのゲイン調整グラフを見ていると実に不思議な感じだ。なお、きちんと検証すれば、厳密には音質変化はあると思われるが、これだけ特殊な処理を行いながらも音質の低下はデモの間では感じられなかった。
ドルビーはまず、AV機器向けのDSPやコントローラチップを開発している半導体ベンダーにアプローチし、ソフトウェアによるDolby Volumeの実装を進めていく。将来的にはLSIの機能へと、その仕組みを組み込んでいく可能性もあるという。
iPodをはじめとするハードディスク搭載オーディオ機器などで、楽曲ごとの音量を調整してくれるといった機能を期待したいが、ドルビーが一番最初にアプローチしているのは、テレビメーカーだ。コスト下げ圧力が高まってきたとはいえ、単価の大きなテレビは新技術を導入する市場としては相応しい。加えて音量の違いに悩むアプリケーションのひとつでもある。
搭載製品がいつ、どこから登場するのかが言える段階ではないが、しかし、今年半ばまでにはDSPチップなどへの移植が終わり、早ければ来年のCESには搭載製品の試作機が登場するだろう。もちろん、将来は音楽プレーヤーへの搭載も期待したい。
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