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これぞ高画質&高音質のBlu-ray Disc、第7回DEGジャパン・アワード”(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)

» 2015年03月13日 17時44分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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ベスト高音質賞・音楽部門(クラシック)

シューマン:交響曲全集/ベルリン・フィル&サー・サイモン・ラトル指揮 (発売元:ベルリン・フィル・レコーディングス、販売元:キングインターナショナル株式会社)
  ウィーンフィル・サマーナイト コンサート 2014 (発売元:株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ/株式会社ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル、 販売元:ソニー・ミュージック マーケティング)
  ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》/小澤征爾(発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社、販売元:株式会社ハピネット)
「シューマン:交響曲全集/ベルリン・フィル&サー・サイモン・ラトル指揮」(キングインターナショナル)。価格は9000円(税別)

麻倉氏: 入賞3作品のうち、「シューマン:交響曲全集」と「ベートーヴェン:交響曲第9番」は、もともとハイレゾ音源として制作された“BDオーディオ”です。ハイレゾではなかった「ウィーンフィル・サマーナイト コンサート 2014」はちょっと残念でした。やはり映像付きのBDタイトルであってもハイレゾ音声でがんばってほしいものです。

 小澤征爾さん指揮の「ベートーヴェン:交響曲第9番」もBDオーディオで、情報量重視の作風でしたが、部門賞を獲得したのは「シューマン:交響曲全集」でした。指揮はサー・サイモン・ラトル、演奏はベルリン・フィル・オーケストラで、長年ベルリンフィルの映像を撮影してきたスタッフたちが巧みにキャプチャーした映像と音声が入っています。映像は、すべてライブ映像。BDの音声は96kHz/24bitですが、パッケージには192kHz/24bitのハイレゾ音源データがダウンロードできるチケットや、2枚組のCDなども入っていたりと全体として素晴らしい作品です。

ベスト高音質賞・音楽部門(ポップス他)

スティング/ザ・ラスト・シップ~ライヴ・アット・ザ・パブリック・シアター (発売元・販売元:ユニバーサル ミュージック合同会社)
  エリック・クラプトン/プレーンズ・トレインズ&エリック ジャパン・ツアー 2014 (発売元:株式会社ヤマハミュージックアンドビジュアルズ、 販売元:コロムビア・マーケティング株式会社)
  中島みゆき「縁会」2012~3 (発売元:株式会社ヤマハミュージックコミュニケーションズ、 販売元:エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ株式会社)
「スティング/ザ・ラスト・シップ~ライヴ・アット・ザ・パブリック・シアター」

麻倉氏: エリック・クラプトンの日本ツアーは音は良いのですが、映像がカメラによってクロが浮いていたり、設定が異なるのが気になりました。カメラが切り替わったときに違和感のあるのです。音質賞ですが、作品性も考慮にいれなければなりません。

 一方で中島みゆきさんの「縁会」は水準が高く、カメラワークもフィックスが中心なので落ち着いていて、音にもパワーがありました。しかし作品性という点で、「スティング/ザ・ラスト・シップ」が部門賞を獲得しました。この作品は、イギリスを代表するミュージシャン、スティングの故郷を舞台にしたミュージカルです。現在ブロードウェイで上演されています。このライブ収録は小さなハコ(劇場)なので観客との距離が近く、臨場感があります。また楽器編成もユニークで、フォーク的な要素も強く感じられるなど、音と画の相互作用で臨場感が高まるという部分がありました。音はヌケが良く、画質も単に明るいというわけではなく、しっとりとした階調感が印象的でした。

ベストレストア/名作リバイバル賞

「Color 4 OZU 永遠なる小津カラー」小津安二郎監督カラー4作品 Blu-ray BOX(発売元・販売元:松竹株式会社 メディア事業部)
  荒野の用心棒 完全版 製作 50周年 Blu-ray コレクターズ・エディション (発売元:「荒野の用心棒」ブルーレイ発売委員会、販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社)
  青い体験/続・青い体験 Blu-ray セット (発売元:株式会社IMAGICATV、販売元:株式会社KADOKAWA 角川書店)
「Color 4 OZU 永遠なる小津カラー」

麻倉氏: レストア部門は、どの作品もかなり力が入っています。ほかの部門はトップの作品が頭ひとつ飛び出ているケースも多いのですが、今回のレストア部門は入賞した3作品がどれも素晴らしいものでした。技術の向上により、レストアタイトル自体のクオリティーが上がったと思います。

 例えば「青い体験」は1970年代のイタリア映画ですが、見事に蘇生され、とくに肌の質感や汗の輝き、衣服といった日常的な被写体を見事に捉えています。細部の質感までリッチ。やはり「日本のクライテリオン」のようなシネフィルイマジカが制作しました。

 「荒野の用心棒」はフィルムから4Kスキャンを行い、14万4000コマすべてを2年間かけて修復したものです。そのマスターファイルを日本に持ってきてエンコードしており、圧縮工程でも細心の注意をはらいました。その映像は素晴らしい“フィルム感”。揺れや傷などは完全に修復されていて、撮影したそのままの映像を見ることができます。レストアの目標は「初号フィルムをロードショーの最初の日に見る状態」と言われますが、まさに1970年代の世界にワープしたような素晴らしい作品でした。

 作品賞を獲得したのは、小津安二郎監督のカラー4作品をBlu-ray BOXにした「Color 4 OZU 永遠なる小津カラー」です。4Kスキャンで35mmオリジナルネガから、撮影監督の川又昴さん監修のもと、国立近代美術館の協力で修復しました。小津監督が好んだアルファならではの朱色がきれいに蘇っています。

 特筆すべきは映像にまったく揺れがないこと。低い位置から撮影する小津監督の構図は、垂直が屹立し水平が明確に出てこそ、完璧に味わえます。当時、監督がこだわった映像美が「やっと」というか、完全に静止した世界で初めて見ることができました。人物の肌などもフィルムならではの味わい深い色で、声もクリアで力強い。人類の遺産をここまでのコダワリとがんばりで蘇らせたのは、たいへん素晴らしいことです。

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