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DSD 5.6MHzストリーミング配信の可能性麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)

» 2015年05月12日 09時37分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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ハイレゾ新規録音が増えてきた

麻倉氏:もう1つ、ハイレゾ音源をめぐる最新動向として、新規録音が盛んに行われるようになった点が挙げられます。ハイレゾの黎明期にはカタログタイトルのハイレゾ化がメインでしたが、最近はクラシックでも新規録音が増えています。

 例えば「UNAMAS」レーベルのミック沢口さん(沢口音楽工房代表)は昨年、弦楽四重奏「The Quartet Four Seasons」による「ヴィヴァルディ 四季」を192kHz/24bitのサラウンドで収録してe-onkyo musicでベストセラーになりましたが、今年は同じ軽井沢の大賀ホールでバッハの「ART OF FUGA」を収録しました。

昨年の弦楽四重奏「The Quartet Four Seasons」による「ヴィヴァルディ 四季」収録風景

 今回は弦楽五重奏に編曲したもので、演奏は東京交響楽団です。大賀ホールは5角形をしていて、響きが厚く美しいホールです。今回は客席に人をいれず、ホールの響きをそのままキャプチャーする試み。しかも今回は垂直方向を含むAuro3Dによるサラウンド収録を行いました。

――サラウンドというと、視聴環境はAVアンプですか?

麻倉氏:そうなるでしょう。垂直方向を含むサラウンドフォーマットには、ハリウッド由来のDolby AtomosやDTS-X、音楽からきたAuro 3Dがあります。Auro 3Dは対応する日本製のAVアンプがまだ存在しませんが、これから登場すると思います。

 今回の収録では、天井と床、そして中間という3つのレイヤー(層)を設けました。弦楽器は響板が上にあるので上に出る音にエネルギーがあるのですが、それをうまく捕らえていました。私はモニタールームで聴きましたが、それでも大賀ホールらしいリッチで芳醇な響きの美しさをよく捉えていました。この音源は、まずUNAMASレーベルからハイレゾ音源として6月にリリースされるようです。配信時のフォーマットは分かりませんが、録音は192kHz/24bitでした。

 また余談になりますが、収録にはヤマハのチームも来ていて、22.2chで収録していましたよ。ホールの音響パターンを採取したのでしょう。

――22.2chというとスーパーハイビジョン対応ですね

麻倉氏:あくまで「社内研究用」だそうですが、視野に入れていることは間違いないでしょう。

 それと注目の新規録音がもう1つあります。NAXOS JAPAN(ナクソス・ジャパン)が武蔵野文化会館でDSD 5.6MHzの収録を行いました。演奏はニューヨーク在住のソプラノ歌手、田村麻子さんとオルガンの福本茉莉さんのデュエットです。古今東西のアヴェ・マリア(聖母マリアをテーマにした教会音楽)を集めたのですが、これがまた素晴らしい。

 ソプラノ伴奏はピアノというのが普通ですが、オルガンを使うのはユニークです。低域から高域までワイドレンジで、抱擁感のあるサウンドと鋭く空気を引き裂くようなソプラノが同時に聴けます。異質な音色が一緒になることで豊かなサウンドの世界が広がり、現場で聴いていて感動しました。一人で客席にぽつんと座って聞いていたのですが、まさにめくるめく音的快感でしたね。こちらは7月後半にDSD 5.6MHzなどで配信される見込みです。

スイスからやってきたネットワークプレイヤー

麻倉氏:4月にREVOX(ルボックス)というスイスのオーディオブランドが日本に再上陸を果たしました。製品はネットワークプレイヤーを中心とするコンポーネントです。これも聴く機会があったのですが、非常にハイレゾらしい、ヌケのよい音をしていたので最後にご紹介しましょう。

REVOX(ルボックス)の「S118」とキューブ型スピーカー

 ルボックスは、STUDER(スチューダー)の民生機ブランドです。かつてはCDプレイヤーやアンプを発売していて、音とデザインに定評があったのですが、いったんは民生用市場から手を引いていました。

――スチューダーというとオープンリールなど業務用の録音機器で有名な会社ですね

麻倉氏:そうです。今回の再上陸にあたり、ルボックスブランドでネットワークプレイヤーとアンプ、スピーカーをラインアップしました。このうち「S118」というネットワーク対応のプリメインアンプを聞きましたが、音は抜群に良いですね。透明感があってワイドレンジです。さすが「REVOX」の名前を使うだけはあると思いました。

 私も1980年代後半にはRevoxのCDプレイヤーを使っていたので愛着はありますし、スイス製品の品質の良さ、先端的なイメージのデザインも好きです。ただ、S118については、PCMは96kHz/24bitまでで、DSD再生にも対応できていないのが難点です。今後、製品のアップデートなどがあると面白い選択肢になると思いますよ。

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