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Jリーグとの大型契約で話題になった新しい動画配信サービス「DAZN」(ダ・ゾーン)とは?4K対応に定額制!

» 2016年08月09日 18時53分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 7月20日、テレビのニュース番組やスポーツ各紙を「Jリーグ初の長期大型契約! 約2100億円」「英メディアグループが10年間の放映権を獲得」といった派手な見出しが飾った。しかし、相手が日本では馴染みの薄い英国企業ということもあり、戸惑った人も多かったのではないだろうか。「DAZN」(『ダ・ゾーン』と読む)は、一体どのようなバックボーンを持ち、何をしようとしているのか。

東京・大門にオープンしたPerform Investment Japanの新オフィス。「DAZN」(ダ・ゾーン)ロゴが大きく掲げられている

この夏にサービスを開始するスポーツ専門動画配信サービス

 DAZNを運営するのは、英Perform Group(パフォームグループ)の日本支社、Perform Investment Japanだ。Perform Groupはスポーツに関連する映像製作や放映権ビジネス、スポーツ関連メディアを展開している国際的な企業グループで、日本でもNBAの公式情報サイト「NBA JAPAN」(NBA.co.jp)やサッカー専門サイト「GOAL」を提供している。ただし、映像製作についてはB2B(企業間取引)が中心で、「DAZN」でコンシューマービジネスに新規参入することになる。

 「DAZNは、この夏から日本とドイツ、オーストリア、スイスの4カ国でスポーツ専門の映像配信サービスを開始します。現在、日本でスポーツを見たいと思えば、CS/BSなどの有料放送で『××パック』に加入する必要があるなど、サービスや料金体系が複雑でした。しかしDAZNは、HuluやNetflixのようなシンプルなメニューで、いつでもどこでもスポーツを観戦できるようにします」(Perform Investment Japanパブリシティマネージャーの中野朋子氏)

 視聴できるスポーツは多彩かつ豊富。JリーグではJ1、J2、J3の全試合をカバーするほか、ドイツの「ブンデスリーガ」、バレーボールの「Vリーグ」などもライブ中継もしくはオンデマンドで全試合を視聴できることが決定している。現在はスポーツならジャンルを限定することなく世界中で放映権契約を進めているところで、「サッカー、野球をはじめ、テニス、バスケットボール、ラグビー、総合格闘技、モータースポーツなど圧倒的な数をライブ(生中継)とオンデマンド(録画を好きな時間に試聴)でお届けします」(中野氏)。国内、海外の試合を含め、年間6000以上のゲームがDAZNで視聴できるようになるという。

Perform Investment Japanの新オフィスは、制作ブース2部屋、オーディオブース10部屋を備え、海外の試合に日本語のアナウンスや解説を加える

4K対応、家でもモバイル環境でも

スタジオの1つ

 ユーザーは、毎月決まった料金を支払えば見放題(月額定額制、通信費は別)。試合によってライブストリーミングか、オンデマンドか異なるが、「ほとんどの試合はライブ視聴できるようになります」(同氏)。しかも試合開始時間に間に合わなかった場合でも最初から再生することができるそうだ。もちろん試合終了後はアーカイブとしてオンデマンド視聴が可能。まるでテレビとレコーダーのタイムシフト再生を兼ねたような利便性の高いサービスになるという。

 では、どのような端末で視聴できるのか。中野氏によると、スマートフォンやタブレットだけではなく、4Kテレビやゲーム機を含む、さまざまな端末に対応する方針だと話している。「配信プラットフォームは4Kまで対応しています。もちろんモバイル機器にも対応し、その端末で視聴できるもっともクオリティーの高い映像を見ることができます。視聴中にCMが入ることはないため、ハーフタイムには選手や試合のデータなどを見せるようなサービスにしたいと考えています」(同氏)。なお、1つの契約で同時2ストリームの視聴に対応するするため、例えば家族がテレビでサッカーを見ているとき、会社のお父さんはスマートフォンで野球を観戦するといったことも可能だ。

テレビでの視聴イメージ

 気になる月額料金については、「3000円を超えることはない」と中野氏。DAZNの公式サイトでは既にプレ登録を受け付けており、メールアドレスを登録すると正式発表時に案内が届く仕組みになっている。サービスの開始は「今夏」だ。

スポーツ運営側の利益にもつながるサービス

 DAZNのサービスにはもう1つ、大きな特徴がある。Jリーグの発表では、NTTグループと協力してJ1クラブのホームスタジアムをはじめ、全国のスタジアムにWi-Fi環境を整備するなどICT化を推進していくという文面があった。これは、試合開始の前後やハーフタイムなどにDAZNを見てもらうため。前述の選手や試合のデータを参照できるのもメリットとなる。

 「ファンにとって、いかに良いサービスを提供できるか。同時にスポーツ運営側の利益にもつながるサービスとして一緒に盛り上げていく。それがDAZNのコンセプトです」(中野氏)

 実は、DAZNを運営するPerform Groupのオーナーは、4大音楽レーベルの一角であるワーナー・ミュージックなども傘下に収める米国の投資会社、Access Industriesだ。そしてAccessの創業者でチェアマンを務めるLen Blavatnik(レン・ブラヴァトニク)氏は大のスポーツファンとしても知られている。DAZNは、スポーツファンと経営者という、2つの目線で考えられたサービスになりそうだ。

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