IT業界の1年は米ラスベガスで開催されるコンシューマー向けエレクトロニクスのイベント「CES」で始まります。前回あたりから自動運転車の発表に注目が集まるなど時代は変わりつつありますが、CESの伝統はテレビの新製品発表です。
2017年のCESは「米Amazon.comが4Kテレビに進出」というのがちょっと新鮮でした。AmazonのAIアシスタント「Alexa」を組み込むことにより、音声で操作できる4Kテレビが2017年内に米国で発売される見込みです。
兆候はいろいろありました。Amazonはストリーミング端末の「Fire TV」を2014年に出していますし、スマートスピーカーの「Amazon Echo」でデビューしたAlexaをFire TVに搭載した2015年ごろから、「これがテレビになったら、Android TVと一緒だな」と思っていました。
Amazonは、Alexaで音声操作できるスマートテレビの「Fire TV Edition」をメーカーにライセンスして対応テレビを作ってもらう道を選びました。最初のパートナーが低価格帯の製品を出している中国のテレビサプライヤーであるTsinghua Tongfangグループなので、「Fireタブレット」と同様に価格破壊が期待できそうです。
とにかくAmazonのジェフ・ベゾスCEOの方針にはブレがありません。ハードウェアは全てAmazon商品の販売促進の道具です。電子書籍リーダーも、タブレットも、(失敗したけど)スマートフォンも、そして2016年12月に日本でも発売された、ボタンを押すだけで日用品を注文できる小型端末「Amazon Dash」も、ハードウェアは赤字覚悟の価格です。4Kテレビも価格を抑えて拡販すれば、Amazonでのコンテンツ購入やプライム会員の獲得などが見込めます。
スマートテレビとしては、Googleが2010年に「Google TV」を発表して先頭に立ったと思いきや、さっぱり軌道に乗らず、2014年に「Android TV」で再出発し、今日にいたります。
Android TVはAmazonに先行して、サードパーティー製品が出ています。日本ではソニーの「BRAVIA」シリーズに搭載されていて、うちでもBRAVIAを買ったらAndroid TV機能が付いてきました。でも、Android TVだから買ったわけではありません。
GoogleもCES 2017に向けて「Android TVに音声アシスタントのGoogle Assistantを搭載させます」と発表し、まだやる気があるところを見せてくれました。これに合わせて、NVIDIAはAndroid TVに対応する新しいストリーミング端末「SHIELD TV」を発表しています。
Android TVに現在搭載されている「Google Now」が「Google Assistant」にアップグレードするということで、目に見えてものすごく便利になるわけではないと思いますが、一方的な質問ではなく対話ができるようになり、人工知能による判断レベルが上がり、UIが少し変わります。
Appleも「Apple TV」を地道に続けていますが、いまひとつブレイクしていません。かつてティム・クックCEOは「リビングルームでのテレビ体験を改革する」と宣言しましたが、まだ改革できていないようです。
Appleの場合はライセンス契約でサードパーティーに製品を作らせることを多分これからもしないので、Apple TVのようなSTB(セットトップボックス)は続けてもテレビ製品自体には参入しないでしょう。
実際にAndroid TVを使っていると、Android TV部分と普通のテレビ部分の壁が大きくて、一般ユーザーとしては、まだあまり便利だと思えません。
スマート(賢い)テレビなのであれば、例えばテレビ東京を見ていてNHKに切り替えることくらい、音声でできてもいいじゃないか、と思うわけです(実際はできません)。映画を見ながら「その俳優は誰?」と聞いたら教えてくれてもいいじゃないか、とも思います(できません。例えば、Amazonのビデオなら一部可能です)。
ガジェットが好きではない一般的な消費者向けの製品を作り続けてきたAmazonが、そういう普通の人が「スマート」だと思う機能をテレビに追加していってくれることに期待しています。
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