MicrosoftとWindowsの最新動向を伝える本連載だが、2017年は興味深い他社の動向と市場トレンドを紹介することから始めたい。
米Amazon.comは2016年12月27日(現地時間)、ホリデーシーズン商戦の結果を発表し、スピーカー型スマートデバイス「Amazon Echo」の販売が前年比で9倍になるなど、同社のAI(人工知能)搭載アシスタント「Alexa」関連のデバイスが数百万台単位で売れて好調だったと伝えている。
本連載でも先行するAmazon Echoに対抗すべく、米Googleも同種のデバイス「Google Home」を発表し、さらに米Microsoftもサードパーティーとともに、音声アシスタント(この場合は「Cortana」)に対応したWindows 10 IoT Core搭載デバイスの投入を計画していると報じたばかりだ。実際、Amazon Echo好調の発表は、今後スマート家電が進んでいく方向性を示唆している。
今回のAmazon.comの発表には、注目すべきもう一つのデータが含まれている。それは世界のホリデーシーズン商戦において、モバイル端末を使って買い物をしたユーザーが全体の72%以上に上るということだ。
かつて、オンラインショッピングと言えば家でPCから……というのが定番だった。自宅の固定回線で高速かつ安定したネットワーク環境を確保し、PCの広い画面で比較検討しながら製品選びをするというスタイルだ。しかし現在、こうした購入スタイルは過去のものとなりつつあり、一般ユーザーの行動様式も急激に変化している。
モバイルアプリやWebサイト向けに決済サービスを提供する米Stripeのパトリック・コリソンCEOによれば、「現在はまだPCの決済比率の方が高いが、今後1〜2年で状況が大きく変化する可能性がある」という。
今回はこうしたトレンドを背景に、2017年のMicrosoftとWindowsが進む道について考えていきたい。
ホリデーシーズン商戦で起こっていたことを、別の調査結果も参照しつつ、もう少し考察してみよう。市場調査会社のNPD Groupによれば、商戦期における実店舗(いわゆるブリック&モルタル型店舗)への客足が10%ほど減少し、(オンラインも含む)全体の売り上げが4%マイナスの微減傾向にあったという。
NPDのデータは実店舗とオンラインの両方を含んでいるため、客足と売り上げの減少幅のギャップはオンラインショッピングに顧客が流れていることを意味すると考えている。Best BuyやTargetなどオンライン販売を強化している既存の小売店もあるが、こうした流れの中でオンラインに特化したAmazon.comの利用が進んでいるのは言うまでもない。
もう注目したいのは、Amazon.comの「モバイル利用が大きく伸びている」という部分だ。1年前にさかのぼり、2015年末のAmazon.comにおけるモバイルユーザー比率を調べてみると70%で、前年比で倍に増加したという。つまり、モバイルユーザーの比率が急増したのはここ2〜3年の傾向だ。
さらに気になるデータとして、Pew Internet Researchが2015年末に出した「Home Broadband 2015」がある。2013年と2015年の家庭におけるブロードバンド利用状況の調査だが、全ての大人世代でブロードバンド回線の利用率が3%減っているのに対し、ブロードバンドはないがスマートフォンを所有している割合が5%増加している。
これはアフリカ系米国人や低所得層、高齢層ほど顕著で、恐らく今から1年後、2017年の調査報告ではさらに加速していると予想される。Pewが2000年代前半に行った調査報告では、低所得層ほどブロードバンドやPC利用率が低く、このデジタル格差を解消するためにもPC利用の訓練や公共の場でのPC環境提供が必要と提言していた。
しかし、今やファーストデバイスとして高機能なスマートフォンに触れ、そのままメインのインターネット接続環境として利用できる状況だ。今後は低所得層や若年層を中心にこのトレンドがさらに全体へと拡大し、「パーソナルな意味でのPC」はもはや過去のものになりつつあるのかもしれない。
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