このように、ポストPC時代にPCがなくなるわけではなく、ユーザーを補助するデバイスの1つとして存在し続けることになるだろう。この場合、PCはどのような役割を担うのかという点だが、「よりクリエイティブな方向」に向かうと多くの人は考えているに違いない。
2016年末掲載の記事で、Windows PCのエンタープライズへのシフトがさらに進みつつあることに触れた。しかし、エンタープライズでも一般的な事務用途や特定の生産性向上アプリケーションを使うレベルにおいては、かつてのメインフレーム時代のホスト端末のような管理性に優れた単機能型デバイスが採用される可能性がある。
これにAIアシスタントが加わる形で、多くの一般的なユーザーはコンピュータのキーボードやマウス、タッチパネルに向き合う時間は減ることになるかもしれない。
そして、エンタープライズやコンシューマーを問わず、クリエイティブ方面の人々がPCに残り、PCもまたクリエイティブ方面へとすり寄っていく構図が、2017年以降の数年間で見られるようになると予想する。
既にその兆候は、今春に配信される予定のWindows 10次期大型アップデート「Creative Update」や、日本への投入が期待される大画面の液晶一体型デスクトップPC「Surface Studio」と、全く新しいダイヤル型入力デバイス「Surface Dial」にもみられるが、Microsoftはコンテンツを作る側と楽しむ側の両方に訴求しようとしている。
コンピュータを使ってユーザーが行うことが限定されていく中で、汎用(はんよう)デバイスとしてのPCと相性がいいのがクリエイティブの世界だ。
米国で2016年12月に発売されたオールインワン型Surfaceの「Surface Studio」。アスペクト比3:2で4500×3000ピクセル(約192ppi)の28型液晶ディスプレイを搭載している
Surface Studioと同時に「Surface Dial」という新しい入力デバイスも投入。写真はSurface Studioの画面上に置き、ダイヤルを回すことで、カラーパレットを選択している様子だ。Surface BookやSurface Pro 4での動作もサポートするまたMicrosoftは「Windows Holographic」をWindows 10に盛り込み、幅広いユーザー環境で利用できるように開発を進めている。Windows HolographicのプラットフォームがもたらすMR(複合現実)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)の世界は、PCの可能性を測るうえで非常に大きなウェイトを占めている。
Windows Holographicや先行して投入されたWindows 10搭載のMR対応HMD(ヘッドマウントディスプレイ)である「HoloLens」で実現されるMR、VR、ARの世界は、これまでPCやスマートフォンが縛られていた「スクリーンサイズ」という概念を打ち破る点で非常に興味深い。
これまで、「のぞき窓」のように限られた空間を目の前のスクリーンを通じて眺めていた世界が、VRやARになることで空間が無限に広がる。遊園地のアトラクションや映画のような没入型体験だけでなく、クリエイターにとっても目の前の広大な空間全てを使って作業が可能なわけで、使い方次第ではより効率的で高度な作業が可能だ。
Creators Updateと、それに続く2017年後半の配信とみられる大型アップデート「Redstone 3(RS3)」は、WindowsにおけるMR、VR、ARの世界を地ならしする存在であり、Windows Holographicの提供開始はこれらが広く一般に利用されるきっかけとなる。
2017年後半には、Microsoftが言うところのメインストリームPC(Iris ProクラスのCPU内蔵GPU)でもWindows Holographicが利用できるようになり、このプラットフォームに対応したサードパーティー製HMDが299米ドルからの低価格で発売される見込みで、幅広いWindows PCでMR、VR、ARの世界が楽しめるようになるわけだ。これらが全て出そろうのには、2017年いっぱいかかるだろう。
実際に大きな成果が出るのは、そこからさらに2〜3年先かもしれないが、「ポストPC時代に自らの役割を見つけたPC」が見られるであろう2017年が楽しみだ。
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