2016年のMicrosoftで注目したい5大トピック鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/3 ページ)

» 2016年01月03日 06時00分 公開

 「Windows 10に始まり、Windows 10に終わる」という印象だった2015年のMicrosoft。2015年に続き、2016年もPC業界にとって大きな変革の年となるだろう。また、日本のモバイル業界も「ハイエンド一辺倒からミドルレンジ以下へのシフト」という変化が生じることが予想される。PCならびにスマートフォン市場の勢力図が大きく動き出す1年となりそうだ。

Windows 10 2015年7月に投入されたWindows 10。2016年はその真価が問われるだろう

 これらを見据え、2016年におけるWindows(とMicrosoft)で注目したい5大トピックを選んでみた。

その1:日本におけるWindows 10 Mobileの可能性

 長らくWindows 10 Mobile(Windows Phone)の空白地帯だった日本だが、マウスコンピューターが「MADOSMA」でWindows Phone 8.1市場へ参入したことを皮切りに、Windows 10 Mobileの世代では一気に参入メーカーが増加してかなりにぎやかになってきた。

 最初のMADOSMA登場時には久々の再参入だったこともあり「日本語対応でいろいろ問題があった」(マウスコンピューター)というWindows Phoneプラットフォームだが、参入メーカーやユーザーが今後増えていくことで、こうした問題は徐々に解決されていくと思われる。

MADOSMA マウスコンピューターの5型スマートフォン「MADOSMA」。2015年に国内でしばらく搭載製品がなかったWindows Phoneに参入し、大きな話題となった。初代モデルはWindows Phone 8.1 Update搭載機だったが、現在はWindows 10 Mobileプリインストールで販売されている

 現在、日本におけるWindows 10 Mobile成功の可能性は3つのファクターに集約される。1つ目が「エンタープライズ」だ。米MicrosoftのOEM部門担当コーポレートバイスプレジデントであるニック・パーカー氏も指摘していたように、企業側の関心が高いこともあり、日本における最初の攻略市場としてMicrosoft自身も注目している。

 2つ目は「アプリの充実度」だ。基本的な作業アプリやSNSであれば問題ないのだが、長らく市場シェアがほぼゼロの状態で推移してきたことから、Windowsストアの充実度は高くなく、各デベロッパーが提供しているアプリそのものの完成度もAndroidやiOSと比べて低い印象を受ける。一般ユーザー相手にこのハードルを越えるのは容易ではないので、最初は企業向け市場から攻略していくという考えは正しいだろう。

 一方で、それほどアプリにこだわりがなかったり、あるいはWindows 10 Mobileの短所を知ったうえで活用したいというユーザーも一定層いる。こうした状況に追い風が吹きつつあるというのが、3つめのファクターである「日本のスマートフォン市場の変化」だ。現在総務省を中心に議論が進んでいる「販売奨励金の抑制」や「実質0円廃止」といった規制により、日本国内でのハイエンド端末へ極端に偏ったスマートフォン市場がある程度「世界標準」に近づく可能性が指摘されている。

 具体的には、端末価格を抑えたより買い求めやすいミドルレンジ以下へとユーザーの志向がシフトし、iPhoneだけで5割近いシェアという状況が是正され、Androidを中心に2〜4万円程度の製品が好まれるようになると筆者は予想する。

 現状で、日本国内のWindows 10 Mobile対応製品の価格ターゲットはほぼこの周辺に収まっており、MVNO系キャリアとの提携やSIMロックフリー端末として量販店での販路をうまく開拓できれば、市場シェアを伸ばすチャンスとなるかもしれない。

Windows 10 Mobileで注目されている「Continuum for Phones」機能。ディスプレイやキーボード、マウスをスマートフォンに接続することで、通常はスマートフォンの小さい画面で動作するUWP(Universal Windows Platform)アプリを、あたかもデスクトップPC上であるかのような大画面と操作感で利用できる。現状ではトリニティの「NuAns NEO」が、国内初のContinuum for Phones対応スマートフォンになるとみられる(現状では検証中で、暫定的なサポートとされている)

その2:Windows 10のシェアはどこまで拡大するか

 Windows 10のシェアが思ったより伸び悩んでいる。Microsoft自身が発言したわけではないが、旧ユーザーの巻き取りを強化し始めており、内部的に「もう少し移行ペースを早める必要がある」と認識されているようだ。Net Market Shareの調査データによれば、2015年11月の時点でWindows 10のデスクトップOSシェアは9%だ。2016年初頭時点でも大きな変化はなく、10%を越えるかどうかという水準だろう。

Net Market Share 2015年11月時点におけるデスクトップOSのバージョン別シェア(Net Market Share)

 Windows 7のシェアが約56%となっているが、そのうちの多くが企業ユーザーの割合で、これをWindows 10へと移行させるにはまだ時間がかかると考える。Windows XPもユーザーの多くは企業用途だろう。

 残りのWindows XP/7を使う個人ユーザーは、「古いマシンを引き続き使っている」「どうしても動かないアプリケーションがある」といった理由でアップグレードを控えているとみられる。仮に移行が望めるとしても、Windows XP/7の一部ユーザーやWindows 8/8.1の既存ユーザーが中心で、2016年を通してWindows 10のシェアを20〜25%まで引き上げられれば上出来かもしれない。

 特に旧OSからの無料アップグレード期間は2016年7月28日で終了の予定なので、以降は新規ライセンス購入(つまりPCの買い換え)以外での伸びは難しくなる。

Windows 10無料アップグレードは2016年7月28日まで Windows 7〜8.1からの無料アップグレードを大々的にアピールしているWindows 10だが、2016年7月28日を過ぎるとアップグレードが有料になる予定だ

 つまり、Windows 10のシェアがこれ以上伸ばせるかどうかは「企業導入が伸びるかどうか」にかかっている。現在はまだ発売から半年の段階だが、2016年以降は多く企業で導入に向けた検証が始まるため、2〜3年をかけて段階的な移行が進んでいくだろう。

 Windows 7は2020年1月14日に延長サポートが終了するという問題を抱えており、2018〜2019年がOS移行のピークになると予想する。その意味では、2016年におけるWindows 10のシェア増加はまだ比較的緩やかなものだと考える。

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