新型コロナウイルスの影響で普段とは異なる対応に追われる昨今だが、こうしている間にもWindows 10の最新リリースは(多少遅れながらも)スケジュール通りやってくる。今回はこのあたりの最新情報をまとめたい。
米Microsoftは4月16日(米国時間)に公式Blogへの投稿の中で、Windows 10の最新大型アップデート(機能アップデート)である「May 2020 Update」(バージョン2004)の提供が間近であることを報告している。
いわゆる「20H1」の名称で知られる開発バージョンだ。同時点でのビルド番号は「Build 19041.207」で、Windows Insider Program参加者のRelease Previewへの提供が開始されたことが報告されている。
ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏が情報源からの話として、このMay 2020 Updateの「RTM(Release To Manufacturing)」に相当するソフトウェアの提供が4月28日に開始され、合わせて開発者も同バージョンの入手がこのタイミングで可能になると説明している。
また、一般提供開始は5月12日を見込んでいるとのことで、従来同様に準備ができたPCからローリングアップデート方式で配信がスタートすることになるとみられる。
日本全体で緊急事態宣言が発令された昨今、企業や組織によってその割合は変われど、都市圏に通勤する少なくない数の人々がテレワークへと移行し、企業のIT資産の管理を担う情報システム部門も、そのための設備増強やトラブル対応に追われている状況だ。
漏れ聞こえる話によれば、ある半国営の大企業ではセキュリティを高めるためにリモートでの作業を想定して仮想デスクトップ環境(VDI)を導入しているが、万単位の従業員がテレワークに移行することで、VDIの同時接続数のキャパを大幅にオーバーしてしまい、部署で利用時間を区切ったり、社員番号に応じてアクセス可能時間の設定を検討したりと、業務に大幅な支障をきたしていると聞く。
クラウド利用に限らず、全てのアクセスを社内へのVPN接続に集約している某鉄道大手では、ここがボトルネックとなって社内ネットワークそのものにアクセスできない問題が発生しているとも聞く。いずれにせよ、「Windows Updateどころではない」というのが企業のIT担当者の本音かもしれない。
Microsoft全体で見ても、2020年2月以降はWindowsの世間での話題はほとんど吹き飛び、オンラインミーティングやリモート作業効率化のためにTeamsが話題となり、同社自身もそれをプッシュしている状態だ。
こういった経緯もあり、今回のMay 2020 Updateの展開は2018年秋期の「October 2018 Update」以来のスロースタートになることが見込まれる。ファイル消失問題で配信が1カ月以上ストップしたOctober 2018 Updateだが、ユーザーの間にも警戒感が浮かんでいたためか、このOctober 2018 Updateにおいては一気に普及がスローペースに変わった。それまで配信が開始されるとロケットスタートのようにシェアが急上昇していた大型アップデートだが、以後のアップデートの配信サイクルにも大きな影響を及ぼすようになった。
特に、個人と法人ともに手持ちのPCの連続稼働が重要となるテレワーク期間においては、リモートでのヘルプが望めない環境において、リスクのあるアップデートを避ける方向は強いと考えられる。配信遅延オプションを駆使して少しでもアップデート期間を延ばそうと考えるユーザーは少なからずいると想定され、おそらくはMay 2020 Updateにおいて、October 2018 Update以来のスロースタートになると筆者は予想する。
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