最後はMicrosoftの決算に注目したい。ここ1〜2年で顕著なのが、PC向けOEMライセンス収入の減少だ。同社が10月22日(米国時間)に発表した、同社会計年度で2016年度第1四半期(2015年7〜9月期)決算において、WindowsのOEM収入は前年同期比で約6%減少、携帯電話は約54%の減少となっている。
この要因は幾つかあり、まずドル高の影響で収益が悪化していること、そして同社の携帯電話事業に関する戦略変更でラインアップが急減したことが挙げられる。もちろん、PC市場全体が縮小傾向にあることが最大の理由だ。この傾向は今後も続いていくだろう。
またMicrosoftは、2016年度から新しい事業区分を採用しており、「Productivity and Business Processes」「Intelligent Cloud」「More Personal Computing」の3つのカテゴリーで売上を分類している。
1つ目がOfficeやOffice 365、Exchange、Skype、Dynamicsといった生産性やビジネスプロセスに関するアプリケーション製品群、2つ目がWindows ServerやVisual Studio、SQL Server、そしてMicrosoft Azureとなっている。Windows OEMやXboxを含む同社のデバイス事業、オンラインサービス(広告など)は3つ目のカテゴリだ。
Microsoftの同社会計年度2016年度第1四半期(2015年7〜9月期)における売上(Revenue)と営業利益(Operating Income)のカテゴリー別業績(MSFT Earnings Release FY16 Q1 - 10Qより)各カテゴリーの業績を見れば分かるように、More Personal Computingは売上が前年同期比で約17%減と落ち込みが大きい。また、Productivity and Business Processesも売上が減少しているが、これはPC市場の縮小によりOffice(365ではない)のライセンスが減少したことに起因している。一方でOffice 365は引き続き伸びており、Intelligent Cloudでの売上を押し上げたのはMicrosoft Azureによる部分が大きい。これが同社の最近の傾向だ。
営業利益(Operating Income)を見るとさらに傾向が顕著だが、現在のMicrosoftは利益面でOfficeやサーバ系のライセンス収入比率が高い。ちょうど1年前の2014年末に公開した記事「Windows 10に続く道――2014年のMicrosoftを振り返る」でも触れたが、MicrosoftのビジネスモデルがWindows OEMに頼った状況からシフトしつつある過程にあり、それが2015年の業績ではさらに目立っている。
リスク要因としては、現在同社が主力としているエンタープライズ分野は景気の影響を受けやすく、特に企業が設備投資を抑制することでIT各社の業績を直撃する傾向が強い。この場合、逆に安定して収入を得やすいOEMライセンスやボリュームライセンス(CAL等も含む)、Office 365サブスクリプション、Microsoft Azureの比率が重要となる。
2016年の注目ポイントとしては、同社の業績を安定させる「クラウドへのシフト」がどれだけ進むのかを、決算を通じて見ていきたいところだ。
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