2015年のPC/スマートデバイス動向を冷静に振り返る本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2015年12月28日 06時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

「メガトレンド」を見つけにくかった2015年

 毎年、「PC/スマートデバイス動向を冷静に振り返る」というテーマで年末コラムを書いてきたが、2015年ほどテーマ性を見いだせない年はないかもしれない。「よい製品がなかった」と言いたいのではない。2014年から2015年、そして2016年につながる大きな流れ……すなわち、「メガトレンド」を見つけるのが難しかったということだ。

 個々の製品で言えば、注目製品は数多く存在した。実際、買い替え期にある読者から購入相談を受けたなら、オススメ機種を複数紹介したうえで、その理由について書き連ねることはできるだろう。そんな「よりよい製品」は数多く登場した。

2015年に登場した製品例 2015年は個々の製品で言えば、注目製品が数多く存在した

 しかし、その一方で時代の変化を象徴するような、あるいはこれからの変化を予見するようなPC、あるいはスマートデバイス(ここではスマートフォンやタブレットを含むインターネットサービス連動型のデジタルデバイスと定義付ける)はなかった。問題は、これが次なるイノベーションへの序章なのか、あるいは停滞を示す次章なのかだ。

Microsoftが攻めた1年だったが道半ばにある

 「2015年はMicrosoftが攻めた年じゃないのか」と言いたい人もいるだろう。

 確かに2012年発売のWindows 8でつまずいたMicrosoftだが、その後の立ち直りは見事なものだった。2015年7月に正式版が出荷された「Windows 10」は今後、Microsoftの復活を象徴するOSになるだろう。

Windows 10 7月29日に一般公開されたPC向け「Windows 10」。Windows 7/8/8.1のユーザーであれば、リリース後1年間は無料でアップグレードできるとあって、大きな話題となった。Windows 8/8.1の反省から、OSのユーザーインタフェースも改善された。

 2014年の振り返りコラムで、Microsoftがサティア・ナデラCEOの元、大きく変化しているという話を書いた。サーバ部門出身のナデラ氏だが、コンシューマー向け製品戦略も怠っていない。単純に「スマホの時代になった」「タブレットが流行している」といった現象だけを見て事業戦略を練るのではなく、ライバルの本質的な強みとは何かを意識したうえで事業運営している。

 MicrosoftがWindows 8で失敗した理由は、タッチパネル活用のトレンドを見誤ったからではなく、既存ユーザーに対する配慮が足りなかったからだった。Windows 95、いやWindows 3.x以来の「デスクトップ画面」を起点にしたユーザーインタフェースのトレンドを真っ向から否定するような「ゼロサムゲーム」のラディカルな変化を仕掛けたのだ。

 当時、Windowsの開発を指揮していたスティーブン・シノフスキー氏は、それ以前にもOfficeのユーザーインタフェースをラディカルに変えてしまい、その後、Microsoftは数年をかけて反発への対応に追われたが、同氏は同じことをWindowsでも行った。結果から言えば、それは失敗と捉えられたが、実はOfficeのリボンユーザーインタフェースが現在に至ってよいものに仕上がってきたように、Windows 8もその後の改良によって評価されるOSなのかもしれない。

 Windows 10はWindows 8が挑戦したタッチパネルを使うタブレット機器、あるいはモバイル版でのスマートフォンへの対応を進めつつ、伝統的なデスクトップ画面を起点としたPC的な使い方にもきちんと対応している。

 「PCをPCらしく使う」という当たり前の要素を復活させ、久々にユーザーインタフェースとしての進化を目指したWindowsでもあり、またWindows 8で目指したタッチパネル+全画面表示の新しいユーザーインタフェース(と対応アプリケーション)も引き継ぐという難しいテーマに関して、今のところMicrosoftは上手にこなしている。

Windows 10 UI Windows 10では操作の起点となる「スタートメニュー」を復活させ、デスクトップ画面での使い勝手を定評あるWindows 7以前に近づけつつ、Windows 8以降の新しいタイルユーザーインタフェースもここに取り込んだ

 Microsoftも背水の陣だったと言えばそれまでだが、ナデラ氏がCEOに就任した時期とも重なり、巨大企業であるMicrosoft全体の進む方向を修正できる絶好のタイミングだったのかもしれない。

 もっとも、PC市場は正しい方向に歩み始めていると思うが、停滞していた時間を取り戻せるほど、急速に状況が改善しているようには思えない。単純なビジネス動向の話だけではなく、「パーソナルコンピューティング」のトレンドをスマートフォンから引き戻すほどの大きなインパクトにはなっていないからだ。

よりよく進化した2016年のPC製品

 Microsoft自身のハードウェア製品を振り返ってみると、「Surface 3」と「Surface Pro 4」は従来製品の改良型……言い換えれば、より優れたSurfaceでしかない。「Surface Book」という高価だが、驚くようなメカニカル設計を持つ製品も発表(海外では発売)した。

 しかし、そんなSurface Bookも、従来の2in1コンセプトを大きく変えるほどの製品になっているかと言えば疑問が残る。あくまで「よりよい○○」という存在でしかないからだ。PCとしてのレビュー記事を執筆するなら、ポジティブな評価を下すことになるだろうが、業界全体のメガトレンドを動かす存在ではないだろう。

 SurfaceはMicrosoft自身が、OS、ソフトウェア、サービス、ハードウェアの全てのレイヤーに関与して、新しい価値観を持つ商品ジャンルを確立するための取り組みだ。そのSurfaceの取り組み自身が、ここに来て「成熟」へと向かい始めているのかもしれない。

Surface Pro 4 日本でも12月に発売されたMicrosoftの12.3型WindowsタブレットPC「Surface Pro 4」。4世代目のSurface Proということで、これまでの弱点を着実に改善し、スペックアップした「よりよい製品」の代表的な例だ
Surface Book 日本では2016年早期の発売が予定されているMicrosoftの13.5型ノートPC「Surface Book」。既存のSurfaceシリーズ同様の2in1構成だが、クラムシェルノートPCそのものとなるキーボードユニットを採用し、キーボード側に外部GPUやバッテリー、各種インタフェースを配置したハイスペックなモデルだ

 もちろん、ハードウェアに関してはMicrosoftだけに責任を背負わせるのは不公平だが、PCメーカーも同じく「よりよい」製品へと向かっている。従来のPCを、最も生産的な道具としている筆者のような立場からすればよいことだが、Windows 10の登場を契機にしたハードウェア面での新しい提案は、まだこれからなのかもしれない。

 マイクロプロセッサの性能は大きく改善している。とりわけ、Intelプロセッサを採用するPCの世界では、2015年に第6世代Core(開発コード名:Skylake)が登場したことで絶対性能、内蔵GPU性能、電力効率など、さまざまな面で大幅な進歩を果たした。

 今からPCを買うならば、たとえ旧モデルが安価になっていたとしても、第6世代Core搭載製品を買うべきだ。この順調な改善を受けて、2016年は何らかのブレークスルーが生まれることを期待したいが、そのために乗り越えるべきハードルがまだ残っている。

第6世代Core 2015年にリリースされた第6世代Core(開発コード名:Skylake)。電力効率の向上や内蔵GPUの描画性能強化など、第5世代Core(Broadwell)から着実に進化したが、まだメーカー製ノートPCや2in1は移行中にあり、新旧CPUの搭載製品が市場に混在している
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