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» 2015年12月28日 06時00分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:2015年のPC/スマートデバイス動向を冷静に振り返る (2/3)

[本田雅一,ITmedia]

Windows 10はシームレスコンピューティングを浸透できるか

 Windows 10が強みを発揮するには、Microsoft自身が掲げている「シームレスコンピューティング」というコンセプトをもっと磨き込む必要がある。シームレスコンピューティングを実現するための、1つ1つの構成要素は存在するものの、それぞれの作り込みがまだ不足している。

 例えば、Windows 10の目玉機能の1つである「Continuum(コンティニュアム)」は、画面サイズや端末の使用状況に応じて同じアプリケーションを最適なレイアウト、操作手順で使えるようにするものだ。

 タブレット型とデスクトップ型、両方のユーザーインタフェースをハードウェアの状態に合わせて自動、あるいは手動で切り替え、シームレスに操作させるContinuumという機能あるいはそのコンセプトは、今後の発展が期待できるだろう。「Windows 10 Mobile」がPC用Windows 10に加わることで、この機能はスマートフォンにまで広がっていく。

2in1向けContinuum PC用Windows 10搭載2in1デバイス向けのContinuum機能。デスクトップモードとタブレットモードで、最適なユーザーインタフェースに切り替えて利用できる
スマホ向けContinuum Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの一部で実現されるContinuum機能。スマートフォンに外部ディスプレイ、キーボード、マウスを接続することで、Universal Windows Platform(UWP)アプリケーションをPC向けデスクトップアプリのような使い勝手で利用できる

 しかしながら、Continuumだけでなく、WindowsファミリーやMicrosoftの多様な製品、アプリ、サービスとのシームレスな世界観を描くには、Universal Windows Platform(UWP)の枠組みで縦横無尽に動作するアプリの増加が必要不可欠だ。

 UWPとはWindows 10が動作するPC、タブレット、スマートフォン、ゲーム機を1つのプラットフォームとし、共通のアプリが動作する仕組みだ。Windowsには豊富なWin32対応アプリが存在するが、UWPで横断的に動作するアプリは別途開発せねばならない。

 Microsoftはこれまで、UWP対応アプリを増やすためさまざまなアプローチを採ってきた。AndroidアプリのパッケージをそのままWindows Phoneで動作させる機能や、iOS向けに開発されたタブレット、スマートフォン用アプリのソースコードを読み込んで簡単に移植できるようにするツールキット、Win32アプリ(従来のWindows向けアプリ)やWeb向けに開発したアプリの移植支援などがこれに当たる。ゲームなどで多く使われているクロス開発プラットフォーム「Unity」も、UWPアプリ化できるオプションがある。

 これらを総称してMicrosoftは「Windows Bridge」と呼んでいる。その名の通り主要プラットフォームとの間を橋渡しするための仕組み、機能、ツールキットの集合体だ。Windows PCやタブレットへの対応を狙って、iOSやAndroidでアプリ開発を行っているデベロッパーが、Windows用アプリをリリースしてくるケースは増えてくるだろう。

 Windows Bridgeそのものが、どこまで上手に機能し、それぞれのアプリ開発者を引きつけることができるか、果たしてどこまでの求心力が今のWindows 10にあるのかは(ベストは尽くされているものの)未知数な面がある。

Windows Bridge 2015年のMicrosoft開発者会議「Build 2015」で発表された4つの「Windows Bridge」。現状では開発が当初の予定より遅れており、Android向け、iOS向け、旧デスクトップアプリ向けはまだ時間がかかるようだ

 しかし、Windows Bridgeを使ったとしても、その先にはもっと高い壁があると予想される。あらゆるタイプの端末に1つのアプリで対応するUWPの理想を実現するのは簡単ではない。PC、タブレット、スマートフォンのそれぞれに適したユーザーインタフェース設計が必要になるからだ。

 例えば、デスクトップモードとタブレットモードを行き来するだけで、スマートフォンの画面には対応しないアプリに対して、どうスマートフォンにも対応していくよう促すのか。あるいはスマートフォン用アプリとして他プラットフォーム向けに開発されているアプリをBridgeで取り込んだとして、それをどうWindows PCにまで展開していくのか。

 開発者に有益なツールキットを提供するのはもちろんだが、より多くの情報とともに「きちんとビジネスになること」も証明する必要があるだろう。UWPのコンセプトが示されて1年半余りが経過するが、Windows 10ファミリーがそろう2016年はコンセプトからソリューションへ、具体的な成果を示さなければ絵に描いた餅で終わる可能性もある。

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