Apple Vision Proが、発売からわずか1年半余りでM5チップを搭載した新しいモデルへと切り替わった。この短いサイクルでの刷新は、M2チップの生産終了(ディスコンティニュー)によるリプレース(+ストラップの改良)としか見えなかった。実機を使うまでは――。
今回のアップデートは体験レベルが一段上昇し、「技術デモンストレーション」から「実用的な生産性ツール」への質的転換という意味で大きいものだ。もちろん、まだ重量は重すぎる。しかし、明らかに快適性は増し、そしてこの製品にとって最も重要な“視覚体験”が確実にワンランク上昇している。
もちろん、他のM5搭載モデルと同様に、AIコンピュータとしての素養も向上している。
新しいVision Proを手に取っても、外観からは初代モデルとの違いをほとんど見いだせない。アルミニウムとガラスで構成された洗練されたバイザー、12個のカメラと5つのセンサー、そして側面のデジタルクラウンといった基本デザインは、そのまま踏襲されている。
しかしその内部では、革命的な変化が起きている。M5チップへの刷新により、CPUのシングルコア性能は60%以上、マルチコア性能は75%前後も向上した。「Geekbench 6」での推定値では、M5チップのシングルコアスコアは約4230で、M2チップの2586を大きく追い越し、マルチコアスコアも1万6988と、M2チップの9672の1.75倍近い数値になる。文字通り“3世代分の進化”があるのだから、それも当然だろう。
この性能向上の恩恵は、あらゆる場面で体感できる。visionOS全体でアプリやウィジェットのロード時間が短縮され、Web閲覧も滑らかになった。特に重要なのは、複数のアプリを同時に開いても応答性が維持される点だ。
初代(M2モデル)では複数アプリの同時利用時に動作がもたつく場面があったが、M5モデルではこれが大幅に改善されている。
空間コンピューティングというメモリ依存の強い、データスループットが求められるジャンルにおいて、AIに最適化されたM5チップの良いところが生きているのだろうか。この性能の向上は単なる快適性のだけではなく実用性に直結している。
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