既報の通り、日本マイクロソフトは薄型・軽量を重視しながらも、上位モデルである「Surface Pro 3」に匹敵する機能性を備えた新型端末「Surface 3」を発表した。
今回もSurface Pro 3の発表時と同様、米Microsoft本社でSurface & Windows Hardwareセールス&マーケティング担当のジェネラルマネージャを務めるブライアン・ホール氏が来日。インタビューに応じてくれたので、早速Surface 3に関していくつかの質問をぶつけた。
―― Surface 3は、Surface Pro 3からかなり時間を置いて登場しました。その理由は何でしょう?
ホール氏 基本的な考え方として、十分な準備期間をとり、よりよい製品が完成してから出荷するという方針を採っています。
過去を振り返っても、第2世代の「Surface 2」と「Surface Pro 2」は同時発表となりましたが、第1世代のときには、3カ月間をあけてから「Surface Pro」が登場しました。第3世代に関しては、Surface Pro 3のデザインやスペックが市場に大きなインパクトを与えるだろうと予測していたため、可能な限り早いタイミングで提供しようと考えました。
一方で、Surface 3は薄さ、軽さ、バッテリー駆動時間などでさらに攻めたスペックを実現しつつ、LTEも追加し、Surface Pro 3にある機能をすべて詰め込もうと考えていたため、実現に時間が必要でした。実際のところAtom x7(開発コード名:Cherry Trail)という新プロセッサの登場が必要だったのです。
―― 過去に「Surface mini」と呼ばれるARMプロセッサ搭載の小型製品がうわさに上がっていましたね。MicrosoftはARMのサポートをやめてしまいましたが、実際にSurface miniの企画は存在したのでしょうか?
ホール氏 さぁ、忘れてしまいました(笑)。
―― 忘れたということは、忘れるべきことが存在したということですね?
ホール氏 今は、ここにSurface 3という、薄く、軽量で、しかもノートPCとしても使える素晴らしい製品がある、ということです。
―― ところで、Intelプロセッサを用いてフル機能のWindowsを動かそうという場合、選択肢は3つありますよね。Core iを使うのか、Core Mを使うのか、それともAtomを使うのかです。Surface Pro 3ではCore iを使いました。今回Atomを選んだ理由は何でしょうか?
ホール氏 Core iはハイエンドのPCと同等の性能を得るための選択肢ですね。だからこそ、我々はSurface Pro 3で新しいクーリングシステムを導入するなどして、これを薄型タブレットに組み込んだのです。今でもタブレット端末として、最も高パフォーマンスな1台で競合できる製品は他にないと思います。
一方、Surface 3は、Windows上で動作するあらゆるアプリケーションをきちんと動かせるパフォーマンスを備えたうえで、薄く、軽量でバッテリー駆動時間が長い製品であることを重視しています。もちろん、美しいディスプレイも必須です。いろいろな要件を積み上げ、我々の理想が実現可能な最初のプロセッサがAtom x7だったということです。
採用したプロセッサはIntelとの強いパートナーシップから生まれているものです。現時点でこのプロセッサを使う製品は他にありません。Surface 3のために作られたといってもいいチップです。
―― 「新しいMacBook」とこの製品を比較するわけではありませんが、AppleはMacBookを開発するにあたって、IntelのCore MにOS Xや標準搭載アプリケーションを最適化することで、ユーザー体験を高めているように思いました。プロセッサパフォーマンスのヒエラルキーから考えると、想像するよりずっと操作感がよいのです。
Surface 3は、Atomブランドのプロセッサを採用していることで、特に応答性や俊敏性の面で不満の残る製品になるのでは? という懸念もあるのですが、何らかの最適化をSurface 3との間で行っているのでしょうか?
ホール氏 確かにAppleはCore Mに対して、かなり大きな予算をかけて投資したのでしょう。Core Mにこれほどコミットメントするというのは、我々にとっても驚きでした。
しかし、Intelとの協業という意味では、Microsoftのほうが歴史がずっと長く、また深い関係を続けています。Intelとこれだけ深い関係を築いている企業は他にないでしょう。したがって、我々のAtom x7への最適化に関しても、ずっと深いレベルで行っていると自信を持って言えます。最適化はパフォーマンス面だけではなく、OneNoteとの連携やSkypeアプリとの親和性など多岐に渡ります。
またAdobe Systemsとのパートナーシップでも、ハードウェアとソフトウェアの連動性を高める取り組みを進めました。最新のLightroomは、Surfaceシリーズと一緒に使うことで驚くほどよい連携が行えます。デジタルカメラにSurface 3を接続すると、とても使いやすい外部ビューファインダーのようにも使えますし、Type Coverをオフにして畳むとユーザーインタフェースが変化して、それぞれのモードで使いやすくなるようにできています。
―― つまりパフォーマンス……とりわけ、遅いプロセッサでWindowsを使うと応答性に問題が出ることが多いように思いますが、Surface 3にそうした心配は不要ということでしょうか?
ホール氏 まず申し上げておきたいのは、パフォーマンスに関して議論する前に製品を使ってほしいということです。そうすれば、我々が言っていることが理解できるでしょう。何かを説明するよりも、それが一番いい方法です。
しかし、実際に体験してもらうことを前提に、いくつかお話ししておきたいことがあります。
まずAtom x7は昔のAtomとはまったく違うということです。ターボモードで2GHzを越えるクロック周波数(2.4GHz)まで上がりますし、Surface Pro 3に採用しているCore i3に比べて80%程度のパフォーマンスを引き出せています。実際のところ、このパフォーマンスはなかなかのものですよ。Surface 3はこの新開発のプロセッサで作られました。
次にSurface 3とWindowsを一緒に構築してきました。これはWindows 8.1でもWindows 10でも同じで、よりよく動くように作り込みをしています。
実際、私自身がSurface 3をこの数週間、メインマシンとして使って仕事をしています。それまで毎日、Core i7を搭載するSurface Pro 3を使い、その速度に慣れている私でも、4Gバイトメモリと128GバイトストレージのSurface 3で問題だとは感じません。ドッキングステーションを組み合わせて、デスクトップでも使っているほどです。
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