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Apple M1/M2対抗の「Oryon」はWindows on Armの流れを変えるか鈴木淳也の「Windows」フロントライン(1/2 ページ)

» 2022年11月18日 21時00分 公開

 「Windows on Arm(WoA)」あるいは「Windows on Snapdragon」は、10年来Microsoftがチャレンジしている「ArmプロセッサをPC分野に適用させる」という目標において、いまだ市場の支持を得られていない取り組み中の課題だ。

 Xboxしかり、Microsoftは一度決めた目標を簡単には曲げない「あきらめの悪い会社」として知られているが、過去に同社が目標としていた「タブレットPC」が現在ではごく当たり前のものとなりつつあるように、WoAについてもまた「これが我々の正しい道」とばかりに、開発を続けている。

 同社にとって最初のWoAと呼べる「Surface RT」が市場投入されたのは、Windows 8が発表された2012年10月のこと。あれから10年でどういった変化が起きたのか。

 当初、MicrosoftがSoCパートナーとして選んだのはNVIDIAだったが、後にQualcommとの提携でSnapdragonをベースにしたWoAになった。2017年にはSnapdragon 835をベースにしたWoAが初めて公開されたが、対応デバイスの不足に加え、「32bit動作に限定されたx86エミュレーション」「ネイティブアプリケーションの不在」「コア自体のパフォーマンス不足」といったさまざまな要因が重なり、「省電力」というポイントだけでは「x86 PC」との差別化が難しいこともあって、反応がかんばしくなかったのは事実だ。

 その後、2018年にPC向けを意識した「Snapdragon 850」が市場投入され、次に「Snapdragon 8cx」という形でモバイル系とは明確にシリーズが分岐している。

 後に「Surface Pro X」に搭載されたQualcommのMicrosoft向けカスタマイズSoCである「SQ1」が登場したわけだが、CPUとGPUの2つのコアの強化に加え、キャッシュの増量や仮想化機能など、よりPCに求められるパフォーマンスや機能の強化が図られ、省電力特化よりも「PCとしてある程度のパフォーマンスが重要である」という方向性が確立された。

 この一連の流れの中で登場したのが、今回の「Oryon(オライオン)」となる。「オリオン」ではないし「オリョン」でもない。

Snapdragon マイクロソフト Microsoft Oryon オライオン Apple M1 M2 2023年の「Oryon」登場を予告

独自開発のArmプロセッサ「Oryon」

 OryonはQualcommが開発中の新しいCPUコアの名称であり、いわゆる「Snapdragon」のようなSoC全体の名前ではなく、現行のCPUコアである「Kryo(クライオ)」の後継、あるいは上位版にあたる。

 2022年11月15日〜17日までの間に米ハワイ州マウイ島で開催されたQualcommの「Snapdragon Summit 2022」において、その名称と“おおまかな”登場時期が予告されたのみで、詳細については何も説明されていない。

 現時点で分かっているのは、「Armのアーキテクチャライセンスを得てQualcommが独自に開発しているArm命令互換の独自CPUコア」であることと、米Qualcomm社長兼CEOのクリスティアーノ・アモン氏がインタビューなどで「AppleのM1対抗となるプロセッサ」であることを予告するのみだ。

 Appleは現在Mac製品でIntelプロセッサのx86アーキテクチャを離れ、製品ラインを徐々に自社開発のArm命令互換の独自プロセッサである「M1」や「M2」へと移行を進めている。低消費電力ながら、従来のx86ベースのMac製品と遜色ないパフォーマンスを叩きだし、iPad Proなどタブレットの上位製品への逆輸入も進めている。

 現状でハイエンドデスクトップ製品の「Mac Pro」を除く全ての製品でM1やM2シリーズへの移行を完了させており、同じArm系列のSoCを開発するメーカーとして、Windowsを後ろ盾にするQualcommもまた同SoCを意識せざるを得ない状態だ。

Snapdragon マイクロソフト Microsoft Oryon オライオン Apple M1 M2 Snapdragon Compute Platform。PC向けプロセッサのラインを強化するQualcomm

 ここだけを見ればシンプルに「ArmアーキテクチャのPC向けプロセッサ開発を巡る2社の競争」なのだが、この話をややこしくするのが「ArmによるQualcommの提訴」だ。

 2022年8月31日、ArmはQualcommとNuviaの2社をライセンス違反で訴えている。内容としては、今回のArmのIPではない独自の互換プロセッサ開発に必要なアーキテクチャライセンスをNuviaは所持しておらず、Qualcommは2021年1月に発表したNuviaの買収で得た資産を使ってその“ライセンス違反の製品”を宣伝しており、ライセンス契約の終了と損害賠償を求めての訴訟だ。

 Armの主張としては買収時点でNuviaはライセンスを失い、それまでに開発された資産は無効であり、それをArmの名称を使ってQualcommが製品の宣伝を行うのは問題であるというもの。一方のQualcommの主張は、ライセンスは“強固”であり、現在開発中の製品はNuviaの資産ではなく、関係者がQualcommに参画後に独自に開発したものとなっている。

 「なぜArmがこのタイミングでQualcommを訴えたのか?」という点はあるが、話をややこしくしているのはOryonの開発を行っている元Nuvia創業者兼CEOのジェラルド・ウィリアムズ氏の立場にある。

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