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» 2018年12月21日 15時00分 公開

Arm版Windowsがパワフルに動く「Snapdragon 8cx」で「Windows on Snapdragon」は離陸するか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/3 ページ)

12月にハワイで開催された米Qualcommの「Snapdragon Tech Summit 2018」において登場したのが、PC向けSoCの最新版「Snapdragon 8cx」だ。この情報を含め、Windows+Armのエコシステムに関する最新情報をお届けする。

 米Qualcommは12月6日(現地時間)、米ハワイ州マウイ島で開催されていた「Snapdragon Tech Summit 2018」において、PC向けSoCの最新版「Snapdragon 8cx」を発表した。2017年12月に同社が提供するSoCをコアにした「Windows on Snapdragon」が発表されたとき、そこで採用されていたのはスマートフォンやタブレット向けと同じ「Snapdragon 835」だった。

 2018年6月のComputex Taipeiで、同社としては初のPC向けをうたう「Snapdragon 850」が発表されており、8cxはPC向けSoCとして2世代目にあたる。

 わずか半年での新製品リリースとなるが、Qualcommによれば開発計画自体は2015年ごろからあったと説明しており、その背景には「(Armコアを使って)PC市場に本気で長期的に取り組む」というMicrosoftとQualcomm両社による強い意志が見え隠れしている。

Snapdragon PC向けにパフォーマンスを大幅に強化した「Snapdragon 8cx」が登場

 今回はこの「8cx」の話題に触れつつ、Windows on Snapdragon、引いてはWindows+Armのエコシステムにまつわる最新事情について考えてみたい。

2世代目で性能がジャンプアップ

 同Tech Summitのイベントで発表された「Snapdragon 855」については別レポートを参照してほしいが、こちらはスマートフォンやタブレットだけでなく、PCを含むスマートデバイス全体を想定しており、特に業界としても初となる“5G対応”が前面に押し出されている。

 一方の8cxでは、基本処理ブロックは855と共通点が多いものの、モデムが5G対応の「X50」ではなくLTEベースの「X24」となっている他、プロセッサコアが「Kryo 495」と855の「Kryo 485」と比較してグレードが1段階上に設定されている。

 さらに、I/Oやセキュリティー回りでよりPC向けのチューニングが行われている。具体的には、今回のSnapdragon 855で初めてWindows 10 Enterprise(およびEducation)への対応がうたわれており、ここをセールスポイントとしている。Windows 10 ProとEnterpriseの差異はいくつかあるが、そのうちの1つにWindows Defender Credential GuardやWindows Defender Application Guardといったセキュリティー機能への対応がある。両機能での要求仕様に「Trusted Boot」や仮想化技術の「Intel VT-x、AMD-V、SLAT」への対応が明記されており、このうちArmアーキテクチャでサポートされるSLAT(Second Level Address Translation)対応がポイントになるのではないかと考える。いずれにせよ、企業向けの展開を念頭に置いたチューニングが施されていると考えておけばいいだろう。

Snapdragon Snapdragon 8cx(左)とSnapdragon 855(右)を並べてみた。パッケージサイズの違いに注目だ
Snapdragon Snapdragon 8cxのビルディングブロック。ダイ画像がないため個々のサイズの違いは不明だが、855と名称が同じコアながら、演算ユニットなどが追加されていると推測できる

 PC向けをうたうQualcommのSoCとして、8cxは850に続く2世代目の製品となるが、明確に異なるのは、ライバルとしてIntel製品をターゲットに入れていることだ。そして、過去のWindows on Snapdragon製品が市場ではまだ広く受け入れられていないことを認識してか、弱点と指摘されてきた部分を補強すべく、さまざまな施策を前面に押し出している。

 そのうちの1つがパフォーマンスで、CPUコアでのキャッシュ増量やI/Oの高速化によって、より高速処理が可能になるという。もともと835を含むSnapdragonのハイエンドモデルは、スマートフォンやタブレット搭載を想定して最大5W程度のTDPを動作レンジとしており、これはIntelのモバイル向けYプロセッサに相当する。

 一方で、今回の8cxではライバル製品として最大15Wの動作レンジが掲げられており、これはIntelでいうUプロセッサに相当する。つまり、従来のWindows on Snapdragonは薄型軽量でやや非力なノートPCという体裁だったものが、8cxの世代ではノートPCでもメインストリームクラスの性能を想定していることになる。

 Qualcommではライバル製品との性能差を比較する際に、ピークパフォーマンスではなく「消費電力あたりのパフォーマンス効率の高さ」を強調する。例えば15W時の動作性能に大きな差はなくても、半分以下の7W時には2倍の性能差をつけることが可能で、消費電力ではさらに差が開くという具合だ。

 ある意味で姑息(こそく)なデータの出し方だが、「ベンチマーク性能で勝つわけではないが、バッテリー駆動状態ではより長時間にわたって動作が可能」という、Windows on Snapdragonの「Always Connected PC」という特徴をより際立たせている。

 8cxが対応するのはLTE規格までで、5Gへの対応はうたわれていないが、5Gも当初は「(従来製品よりも)バッテリー消費が激しい」というデメリットを抱えて製品が市場投入されることになるため、バッテリー駆動時での継続動作を主眼とするAlways Connected PCとの相性は悪い。製品の特徴を端的に表したプロモーションと言えるかもしれない。

Snapdragon Snapdragon 855とは明確に異なる部分で強調されているのがCPUコアの「Kryo 495」。推測になるが、システムキャッシュ増量に加えてコア自体のチューニングが行われ、ダイサイズの増大に影響しているのではないかと考える
Snapdragon おそらくIntelのUプロセッサと思われるライバル製品との比較。ピークパフォーマンスの比較ではなく、低消費電力動作時のパフォーマンスや消費電力全体の比較になっている
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