麻倉氏:DAC ICそのものにもMQAデコーダーが入ります。現在数社のICメーカーが開発している最中で、完成すればますますMQA対応製品が増えるでしょう。また、現在MQAの精度は10μsですが、アーカイブ用としてさらに高精度な2μsくらいの上位版も開発中とのことです。おそらくレコーダーはこのシステムが入ると見込まれます。
問題は音の入口と出口、つまりマイクとツイーターです。現在のものはまだまだ周波数帯域が狭くボブさんは「200kHzくらいのものが欲しい」としていました。ツイーターも再現性に難ありです。理想はアナログイン/アナログアウトの直結で、ボブさんは現状を「100点満点中90点以上はいっているかな?」と評価していました。
――余談ですが、MQAの話を聞くと、ベルリン・フィルのトーンマイスターであるフランケさんの話が思い出される場面が多々ありました。音楽は“時間芸術”ともいわれており、ボブさんもフランケさんも“時間軸再現の重要性”を熱心に説いています。これは従来のオーディオでは見過ごされてきた要素なのではないか。これからのオーディオでは、時間軸に対する感度を高めることが重要になってくるように感じます
麻倉氏:これまでms(ミリ秒)やμs(マイクロ秒)といった細かな時間単位はあまり考えられていませんでした。ですがボブさんやフランケさんが指摘する音の立ち上がりやタテといった要素は、まさに時間軸の問題です。これからは従来の周波数ドメインはもちろん、タイムドメインが非常に注目されてくるでしょう。
――実はインターナショナルオーディオショウで、テクニクスCTOの井谷哲也氏さんに聞いた面白い話があるんです。フランケさんと井谷さん他数名で、PCM録り下ろし/MQA/ロスレス圧縮のブラインドテストをやってみたことがあるらしく、下位の票はバラけたのですが、“最も良い”評価は全会一致で“MQA”だったようです。これにはフランケさんも驚いたとか。まさに“Master Quality Authenticated”なエピソードだと強く感じました。
麻倉氏:MQAは音源におけるタイムドメインの技術で、音の軸は殆どの場合、スピーカーで狂います。これからはスピーカーのタイムドメインも重要になるでしょう。ベルリン・フィルで時間軸の重要性を学んだテクニクスなどは、次はスピーカーで時間軸の革新が入ってくるべきです。
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