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» 2009年04月28日 21時52分 公開

子どもを守るASPサービス――ドコモ「こどモニタ」の実力(ケータイ編)神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

[神尾寿,ITmedia]
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シンプルなUIで、子ども自身が操作

Photo NTTドコモ モバイルデザイン推進室 モバイルソリューションコンサルタントの縣和之氏

 それでは星野学園小学校で導入されている「こどモニタ」について詳しく見てみよう。

 こどモニタはドコモが開発したASPサービスであり、クライアントとなる子ども用の携帯電話(ドコモならば、キッズケータイ「F-05A」や「F801i」「SA800i」など)では専用の待受携帯アプリ(※)を用いて操作する。星野学園小学校で導入しているサービスでは、学校に着いたら親に連絡する「とうこう」、下校前に連絡する「げこう」、そして子どもが任意で居場所を知らせる「ここだよ」を利用している。このほかに、学校側が親に連絡メールを送る機能などが用意されている。現在、同校では245台の端末がこどモニタで運用されているという。

※au向けのBREWアプリは開発中。現在は過渡的な措置として携帯サイトからの操作を行う運用になっている。

 「現在の技術を使えば学校に着いたら自動的に位置エリアを把握して親にメールするなどといった仕組みも作れますが、学校側の要望を多く取り入れて現在の機能やUIを構築しました」(NTTドコモ モバイルデザイン推進室 モバイルソリューションコンサルタントの縣和之氏)

 その最たる部分が、子ども自身が「登校」と「下校」を自ら通知する仕組みだ。

 「(携帯電話を)安全と安心のために使うというのは大前提ですが、そのサービスの背景には教育の一環も盛り込まなければなりません。登校・下校の通知メールを子どもにアクションさせて送るというのは、子どもの防犯意識を高めて、(見守られていることによる)親子の信頼関係を構築することに効果があります。他にも教育という観点では、学校への『登校』と『下校』はしっかりと(メニューとして)分けたいというものもありました。

 また、自分の居場所を知らせる『ここだよ』ボタンは、3秒間の長押しをする操作にしました。これは子ども自身が、自分の位置を親に知らせたいという意識をしっかりと持てるようにするためです」(河邊氏)

 このようにこどモニタは、教育現場の方針や声をしっかりとくみ取って開発された。ビジネス的な「キャリアの論理」では自社のみの囲い込み型サービスにし、新規契約の獲得とサポート負担の軽減を狙うところだが、それは学校での利用にふさわしくないという点から、ドコモは他キャリア対応も積極的に行った。

 「正直に言いますと、他キャリア対応は(対応)アプリの開発ノウハウもなくて、とても苦労しました。iアプリは作り慣れているのですが、ドコモがS!アプリやBREWアプリの開発をするというのは初めての試みですからね(笑)。しかし、(こどモニタのような)プラットフォームサービスは囲い込みというわけにはいきません。

 今後、ドコモユーザーならではの付加価値を用意するとしたら、メッセージRやiコンシェルの活用などが考えられますが、基本的な部分はあくまで3キャリア対応という方針です」(縣氏)

「教育現場のニーズ」をつかむことが重要

Photo 星野学園 理事長の星野誠氏

 現代において「子どもの安全」は保護者と学校にとって最も重要なテーマになっている。星野学園 理事長で、同小学校・中学校・高等学校の校長を務める星野誠氏は、この10年あまりで「教育現場が巻き込まれる事件が増えた」と嘆息する。

 「世の中は大きく変わり、子どもに被害が及ぶ事件が増えています。そのような中で、子どもが安全に学べるような環境づくりが求められています。

 そして、また、この安全・安心というものは、すべての子どもたちにとって公平なものでなければなりません」(星野氏)

 個人契約が可能な子ども向けセキュリティサービスも増えているが、学校がセキュリティソリューションを導入し、すべての児童に提供する意義は、この「安全・安心が、公平なものであるべき」という部分にあると言えるだろう。星野学園小学校では、どこモニタのASP利用料金を学校側が負担し、学校の基本サービスとしている。

 昨今では学校への携帯電話の持ち込みや、子どもが携帯電話を所持すること自体を“悪いこと”と決めつける風潮もみられるが、星野氏は「(携帯電話は)いま身近にあって、子どもたちの安全のために使える道具。すべては使い方次第」と指摘する。

 「子どもに携帯電話を持たせることが、一概に悪いとは言えません。(こどモニタのように)うまく活用すれば、親と子の防犯意識を高めて、安全・安心のための最適なソリューションになります。

 幸い、当小学校では通学中の事故はありませんが、電車が遅延した時に児童みずから学校に『電車が遅れたので、登校が遅れます』と電話してきたことがあります。まだ1年生の子なのに、(通学時に)何かあったら学校や親に伝えるという考えができている。こうした(教育)効果があることも確かなのです」(星野氏)

 一方、学校や学習塾向けのセキュリティソリューションが増えているが、その導入において教育現場が求めることは、「多様なニーズに応える柔軟性と、オープン性」だと星野氏は話す。

 「学校というのは、それぞれに教育方針があり、さまざまなニーズがあります。こうした多様性に対応できるきめ細かさが、(学校向けの)サービスでは求められるでしょう。

 また、これは民間企業としては難しいのかもしれませんが、ビジネス的な囲い込みと、学校側が求めるサービスは相いれない部分があります。しかし学校への導入では、学校側の立場に立った、オープンなものであることが大切です。

 ドコモはこれらのポイントをしっかりと押さえた上で、開発やサポート体制も我々の立場に立って親身に行ってくれました。当校としてはたいへん高く評価しています」(星野氏)

 学校や学習塾など教育の場におけるモバイルソリューションの導入は始まったばかり。しかし、「子どもの安全」が求められているのは、通学範囲が広い私立校や塾に限った話ではない。こどモニタのように汎用的かつ導入しやすいASP型の子ども向けセキュリティサービスの導入例は、今後も着実に増えていくだろう。

 モバイルソリューション市場の一分野として、子ども向けセキュリティサービスの重要性はさらに高くなりそうだ。

Photo

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


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