関心は下がった? でも“所有する喜び”を感じられたフィーチャーフォン:ITmediaスタッフが選ぶ、2010年の“注目ケータイ&トピック”(ライター青山編)
スマートフォンに始まり、スマートフォンに終わったといえる今年のケータイギョーカイ。当然、2010年のケータイを挙げる上で欠かせないのはスマートフォンだが、その一方で次第に話題に上りにくくなったフィーチャーフォンたち。ここではあえてそんな“ガラケー”にも注目してみた。
今年のスマートフォン旋風の象徴ともいえる2台
まず2010年はなんといっても「スマートフォン」が世間一般に認知され始めた年だろう。2008年にソフトバンクモバイルから「iPhone 3G」が発売されて以来、徐々にスマートフォンの存在が一般に広まっていったが、2010年に続々と発売されたAndroid端末によって、「iPhone=スマートフォン」ではなく、iPhoneやAndroid端末などを含めて、スマートフォンが一般のユーザーにも受け入れられたといえるだろう。
iPhoneは日本ではスマートフォンというよりも、「最先端でカッコいいケータイ」として、感度の高いユーザーが支持していたに過ぎなかったのが2009年までの情勢だったといえる。
そういう意味で2010年の注目ケータイに挙げたいのが、まずは4月にドコモから発売されたソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの「Xperia(SO-01B)」と、11月に登場したauのシャープ製「IS03」の2機種だ。iPhoneという世界的ブランドのスマートフォンを使いたくても、キャリアの縛りで使えなかったドコモユーザーにとって、Xperiaは待ちに待ったモデル。iPhoneが欲しくてもソフトバンクにMNPするのをためらっていたドコモユーザーに歓迎され、発売と同時に乗り換えた人も多かったようだ。
また、IS03は、auユーザーにとって待望のスマートフォンで、こちらは世界標準というよりも、日本のケータイユーザーのニーズを汲み取ったガラケーならぬ“ガラスマホ”だろう。「スマートフォンは欲しいけど、キャリアメールやおサイフケータイ、ワンセグといったケータイの機能は手放したくない」というユーザーにとって、それまでケータイとスマートフォンの2台持ちが主流だったスタイルに、キャリアのプロモーションどおり「1台目として使えるスマートフォン」というコンセプトが話題をさらったのは記憶に新しい。今後、日本のケータイ市場を席巻していくスマートフォンにとって、こうした日本独自の進化は間違いなく受け入れられるに違いない。それを象徴した1台といえるのではないだろうか。
“スマート”とは対極のプロダクトデザイン
こうしたスマートフォンに話題をさらわれ、2010年、特に後半のフィーチャーフォンの新製品に対する関心は、明らかに以前に比べて下がっているようだ。当然といえば当然かもしれないが、各社の2010~2011年冬春モデル発表会でも、スマートフォンとフィーチャーフォンの展示場では、はっきりとその温度が違っていたのが印象的だった。確かにこれからのスマートフォンへの流れは止められないのは事実だが、「ガラケー」と言われながら、世界的に見ても目覚しい進化を遂げ、新製品が出るたびに注目を浴びる機種や技術を搭載した日本のフィーチャーフォンに、急に元気がなくなっているように感じるのは私だけだろうか。
スマートフォンがどちらかというと技術的にも話題的にもOSに依存し、その結果、見た目がどれもあまり変わらないのに比べて、ハードとしての個性が出せるフィーチャーフォンは、自分の分身、自分の身近な存在として“所有する歓び”を感じられるケータイではないだろうか。
そういう意味で、かなり個人的な趣味も入っているかもしれないが、KDDIが11月に発売したNECカシオモバイルコミュニケーションズの「G'zOne TYPE-X」を、ガラケーとして進化した究極の形の代表例として挙げておきたい。キャリアの最新サービスをほぼ網羅し、「タフネスケータイ」という10年前からのコンセプトを忠実に守った無骨な形で、スマートフォンに限らずほとんどのケータイのトレンドである“スマート”とは対極にあるデザイン。
だからこそ、万人受けしないけれどもこれが好きな人にはとことん愛される、というプロダクトデザインの鑑と言っても過言ではない存在だ。今後、スマートフォンは“薄く平らなボディに大きなタッチパネルディスプレイ”というスタイルの枠にはめられ、ハードウェアメーカーは差別化に苦労するのは想像に難しくない。そんな中、フィーチャーフォンはG'zOne TYPE-Xのような特異な進化をしていくことでのみ“種を保存”できるのかもしれない。
行き詰まり感のあるケータイのデザインに「この手があったか」
もう1つは、ケータイのデザインをテーマに取り組んでいるauのブランド「iida」の「X-RAY」を挙げておきたい。これはau design projectの「MEDIA SKIN」も手がけた吉岡徳仁氏のデザインによるモデルで、「携帯電話の内側をデザインする」というコンセプトどおり、強化ガラスとポリカーボネート製のケースに収められている中身の基板のデザインにまでこだわった。
今どきのケータイとしてはやや懐かしさすら感じるLEDのサブディスプレイを備え、半透明のケース越しに日時や着信情報などが表示される。もちろんワンセグやBluetoothなどの機能やauの多くのサービスに対応しているが、スケルトン、ということを除けばとてもソリッドでシンプルなモデルだ。プロダクトデザインという意味では、もはや行き詰まり感のあるケータイの中で、「こういう手が残っていたか!」とニヤリとさせられるモデルに久々に出会った。さすが、ケータイのデザインというテーマに対して継続的に取り組んでいるauならではの作りといえよう。
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