スマホ戦国時代に光った「Xperia arc」のデザインと「GALAXY S II」のバランス:ITmediaスタッフが選ぶ、2011年の“注目ケータイ&トピック”(編集部田中編)(2/2 ページ)
スマートフォンが本格的に普及した2011年は、デザイン、カラー、形状、対応機能などからバリエーションが広がった。一方で海外メーカーは日本向けの機能をどん欲に取り込むなどさらに躍進し、群雄割拠の様相を呈してきた。
速さではなく快適さが秀でているiPhoneのタッチパネル
年に1度のお祭りである新型iPhoneの発売。2011年はソフトバンクモバイルとKDDIの2キャリアから「iPhone 4S」が発売され、その盛り上がりにいっそう拍車がかかった。iPhone 4も同じiOS 5に対応していることやデザインの変化がほとんどないことを考えると、iPhone 4からのマイナーバージョンアップ感は否めないが、それでも当たり前のように売れているのだから頭が下がる。もちろん、16Gバイトモデルは実質0円、iPhone 3GSからの乗り換えを支援するキャンペーンなど、料金面での施策がiPhoneの売れ行きを後押ししていることは言うまでもないだろう。
iPhone 4Sを使ってあらためて感じたのが、タッチパネルの快適さだ。2011年に発売されたAndroidスマートフォンにはほぼすべて触れてきたが、iPhoneと比べると違和感を覚えることが多かった。確かにAndroid端末の中にはiPhone以上にキビキビ動くものもあるが、iPhoneのタッチパネルは指の追従性が優れていて、かつ動きが滑らかだと感じる。例えばブラウザやTwitterクライアントでスクロールをしても、指の動きにしっかりと付いてくる。ダブルタップで拡大/縮小しても妙な間はない。スクロールが途中でカクッと動くこともなく、適度にブレーキがかかって止まる。1ページが長いサイトなどを素早くスクロールしたい場合には少し煩わしいが、目当ての記事を読む分にはちょうど良い。Androidの場合はスクロールのブレーキが効かないことが多いので、スピードを弱めるなど自分で調節する必要がある。Androidではよく起こる、ブラウザで意図しない(隣にある)リンクを間違って押してしまう「リンクの選択ミス」もiPhoneではあまり起こらない。他メーカーがよく使う「サクサク」という表現とも違う――強いて言えば「ぬるぬる」「指と一体感のある動き」といったところか。これにデュアルコアCPUの性能が加わるのだから、その快適さはさらに向上している。筆者はソフトバンク版を購入したが、個人的には3G環境でも大きなストレスなく使えている。
現行のAndroidと比べるとディスプレイサイズが小さい、日本語入力があまり賢くない、iPhone 4Sはボディが角ばっていて持ちにくい(Bumperを購入したが、見栄えがいまひとつなので結局外してしまった)などの不満もあるが、タッチパネルの完成度はそれらを補って余りあるほど。単純な速さとも違う快適さ――2012年は、この快適さでiPhoneと肩を並べるモデルは現れるのだろうか。
2012年は海外メーカー製の“全部入り”が登場する?
全部入り――ハイスペックなモデルを指して使う言葉だが、その定義はあいまいだ。強いて言えば「現行モデルの中で最高のスペック、かつ提供中のサービスにはすべて対応していること」となるだろう。そういう意味では、1年前の2010年末は富士通東芝モバイルコミュニケーションズの「REGZA Phone T-01C」が当時の全部入りだったと思う。では2011年はどうかと振り返ると、富士通の「ARROWS X LTE F-05D」と富士通東芝の「ARROWS Z ISW11F」が挙げられる。ワンセグ、赤外線通信、おサイフケータイ、防水、ARROWS X LTEはXi、ARROWS ZはWiMAXに対応するほか、4.3インチHD液晶、デュアルコアCPU、1310万画素カメラを備える。それでいて薄型軽量ボディを実現しており、スペックだけを見たら非の打ち所がない。
では実際の使い勝手はというと、筆者はARROWS Zを購入して使っているが、タッチパネルはまだ改善の余地があると思うし、バッテリーの持ちもiPhone 4SやXperia arcなどと比べると減りが早い。先述した「スピード」と「バッテリー」が満足のいくものではないというのが正直なところなので、ソフトウェアアップデートなどでの改善に期待したい(すでにバッテリー持ちについては1度改善されたが)。特にタッチパネルに関しては、Samsung電子やHTCなど、早くからタッチパネル対応端末を開発してきた海外メーカーに一日の長があると思う。しかし、何はともあれ全部入りである。発売後の売れ行きを見ても、ARROWS X LTE/ARROWS Zの注目度の高さがうかがえるし、今後もARROWSシリーズで日本市場を盛り上げてほしいと思う。
日本メーカーの中では特に完成度の高いスマートフォンを開発していると思うシャープの冬モデル「AQUOS PHONE SH-01D」と「AQUOS PHONE 102SH」も注目のモデルだ。バックグラウンドの通信を制御できる「エコ技」は、バッテリー問題を解決する一助になりそうだ。WiMAXやLTE対応のシャープ端末(スマートフォン)が登場しなかったのは残念だが、2012年に登場するのは確実だろう。WiMAX/LTE端末はバッテリー持ちが課題を言われているが、シャープの技術力でどこまでカバーできるか、注目したい。
一方で気になるのが海外メーカーの動きだ。現時点で、ARROWS X LTE/ARROWS Zと肩を並べられるほどのスペックの充実した海外端末は登場していないが、LGエレクトロニクス製の「Optimus LTE L-01D」はワンセグとおサイフケータイ、Pantech&Curitelの「MIRACH IS11PT」は防水と赤外線通信を備えるなど、最近は日本向け機能やサービスを取り入れている海外メーカーも増えている。Huawei製の「smart bar(S42HW)」など、海外で発売されていない“日本発”のスマートフォンも印象的だった。
1~2年前に海外メーカーが日本に投入するスマートフォンは“グローバルモデルほぼそのまま”が多く、日本メーカーはサービス対応の幅広さ、海外メーカーはスマートフォン本来の使い勝手の良さで優位に立っていた。だが、最近はグローバルモデルをベースにしながら、Optimus LTEやMIRACHのように、日本向けにカスタマイズを施したモデルも増えており、海外メーカーと日本メーカーの単純なスペック差は縮まっている。日本メーカーも、特にシャープはタッチパネルの作り込みは海外メーカーと比べても遜色ないと思うが、それでも全体的に見るとその優位性が薄まりつつある。例えば次期GALAXY Sがワンセグ、おサイフ、赤外線、防水に対応したら――などと想像すると、脅威すら覚える。2012年は海外メーカー製の全部入り、つまり先述した“三種の神器を備えた全部入り”が登場する可能性が高い。日本メーカーにとっては正念場となるだろうが、そこはシャープをはじめとするメーカーがケータイ時代から培ってきた、きめ細やかな機能やUIが差別化要素になるのではと思う。1ユーザーとしては海外メーカーのさらなる躍進は楽しみだが、日本メーカーの奮起にも期待したい。
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