イー・アクセス、モバイルブロードバンド実現に向け「TD-SCDMA(MC)」採用

» 2004年02月05日 20時50分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 イー・アクセスは2月5日、モバイルブロードバンドサービスの実現を目指し、「TD-SCDMA(MC:マルチキャリア)」方式を採用することを発表した。米Navini Networksと戦略提携を行い、同社の開発した装置を利用して3月からフィールド実験を開始する。

 イー・アクセスでは以前、米IP Wirelessの技術を採用して、「TD-CDMA」方式での実証実験を行うとアナウンスしていた(記事参照)。しかし、その後の検討結果で、「Naviniの方式の方が、ベターだと分かった。現時点で、一番進んだシステムだ」(イー・アクセスのCOO、種野晴夫氏)。

 TD-CDMA方式の採用は一時凍結し、今後はTD-SCDMA(MC)方式をメインに考えるという。商用化の時期などは未定だが、メガビットオーダーでの無線ブロードバンド通信が可能になる見込み。ユーザーのニーズに応じて、IPモバイル電話のサービス提供も視野に入れるとした(別記事参照)。

Photo イー・アクセスのCOO、種野晴夫氏。「1年ほど、さまざまな検討をしてきた。TD-SCDMA(MC)はTD-CDMA以上の性能を持つ。ぜひ日本に普及させたい」
Photo 左から、Navini NetworksのV.P.Product Management & Strategic Marketing、Sai Subramanian(サイ・サブラマニアン)氏、Chief Executive Office and President、Alastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏

TD-SCDMA(MC)方式とは?

 TD-SCDMA(MC)方式は、米テキサス大学オースチン校電子情報工学科教授、Dr.Guanghan Xuにより提案されたもの。同氏は、TD-SCDMA方式の開発で知られていたが、2000年にNavini Networksを立ち上げ、TD-SCDMAに技術を追加するかたちでTD-SCDMA(MC)を開発した。

 TD-SCDMA(MC)の概要を説明する前に、まずTD-CDMA方式を簡単に説明する必要があるだろう。そもそもTD-CDMAとは、「Time Division CDMA」の略(モバイルのキーワード参照)。IMT-2000で定められた3G規格の1つだ。CDMA方式の中でも、時分割多重(TDD)の技術を利用し、通信チャネルを符合多重した上で時間軸にスロット分割する。

 一方、今回のTD-SCDMA(MC)は「Time Division Synchronous CDMA(Multi Carrier)」の略。アンテナ――端末間でやりとりする電波に指向性を持たせる「スマートアンテナ(アダプティブフェーズドアレイ)」の技術や、端末相互の干渉を最小化する「上り同期」の技術、複数の搬送波でデータを伝送する「マルチキャリア」の技術などを組み合わせているという。

Photo スマートアンテナの説明資料(クリックで拡大)。左では赤、青、黄の端末それぞれに“電球のように”電波を飛ばしているが、右では指向性を持った電波を“懐中電灯のように”効率的に飛ばしている
Photo 上り同期の説明資料(クリックで拡大)。上り同期を採用すれば、ユーザー数が増加しても干渉がそれほど増えない。非同期の場合に比べ、システムのキャパシティを5倍にすることができるという
Photo マルチキャリアの説明資料(クリックで拡大)。OFDMのように、マルチパス干渉に強い状態でデータを伝送できるという

各国で「高い評価を得ている」

 TD-SCDMA(MC)方式は、世界各国で実験が行われている。米国では、既に商用サービスを展開している事業者もある(主な事業者のサービス状況は、下表参照)。

通信事業者名 実験 商用サービス
Sprint 完了 準備中
Bell South 実施中
Ntlos 完了 提供中
Rioplex 完了 提供中

 ほかに、オーストラリア、マレーシア、インド、オランダ、イタリア、パナマ、ウルグアイなどで実験が完了している。韓国では、KT(コリアテレコム)、SK Telecom、Hanaro Telecomの3社により各自でフィールド実験が行われている。「ソウルは、(ビル街で)東京に似た景観。そこでも、高い評価を得ている」(Navini NetworkのAlastair Westgarth氏)。

今年春にも実質標準化の予定

 TD-SCDMA(MC)方式は現状、標準化されていない。イー・アクセスは、「移動体通信技術は日々進化しているが、標準化が大幅に遅れて後追いしている」と、コメントする。

 同社は、IMT-2000とはそもそも“技術コンセプト”だと話した上で、TD-SCDMA(MC)はIMT-2000のコンセプトに基づくシステムだと強調した。

 実際は、現在T1P1の第4部会で標準化が進められている段階。今年春にも、最終承認が行われ、機器のスペックが決定する。その後は、ANSIやITUなどで随時承認手続きが進められるだろうとした。

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