孫社長、「TD-CDMAの引き金は、まだ引かない」

» 2004年02月12日 19時58分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ADSL業界で「次に各社が競争を繰り広げる舞台」と目されるのが、モバイルブロードバンドサービスだ。ソフトバンクの動向に関心が集まるが、2月12日の決算説明会では、孫社長はサービス開始に慎重な発言に終始した。

Photo ソフトバンクの孫社長。「いつか必ずやる」と明言したものの、詳細には触れなかった

ADSL事業者でなく「ブロードバンド事業者」

 ソフトバンクは昨年12月に、無線方式である「TD-CDMA」と「CDMA2000」の実験予備免許を取得している。当然、この通信方式でのサービス展開が予想される。

 実際、孫社長も「我々は、単にADSLとかFTTH、無線LANのサービスを展開するのでなく、“ブロードバンド事業の会社”と考えている。特定の技術にこだわるのでなく、適材適所(=適切な技術を適切なサービスに割り当てる)でいきたい」と話す。

 「高速無線サービスも、(メニューに)加えたいと、方向性としては考えている。なんらかのテクノロジーで、なんらかの周波数帯を利用し、いつか必ずやる」

 ただし、いつ、どんなサービスを、どんな料金で提供するかとなると、孫社長は一切考えを話そうとしない。

 「技術が生煮えの状況では、開始できない。十分実験をして、採算面でも『絶対に採算が合う』と納得するまではやらない」。同氏はまた、免許を申請する必要があったため、結果として無線方式に関心を持っていることを公表することになってしまったが、本来なら発表する段階ではなかったと話す。

 競合他社の動向を見ると、既にイー・アクセスが、3月から実験を開始することを発表している(記事参照)。だが孫社長は、コンシューマ向けFTTHへの進出も含めて、新しい事業を展開するには十分な準備が必要と話す。このことを、同氏ならではのユニークなたとえで表現した。

 「織田信長の国盗り物語でもそうだが……。素人ほど、早く鉄砲の弾を打つ。そのため、いざ敵が近づいたときは、弾がなくなっている。そうではなく、馬止めの柵を用意し、穴を掘った上で、十分にひきつけてから一斉射撃だ」。

 「まだ、引き金は引かない」とコメントした。

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