TD-CDMAの帯域は1社独占にすべき――アイピーモバイル&ソフトバンクの論理

» 2004年04月20日 19時25分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 TD-CDMAの未来をめぐって、“15MHz幅”をどう割り当てるべきか模索が続いている。

 4月19日に開催された情報通信審議会のIMT-2000技術調査方策作業班、第4回会合では、アイピーモバイルが電波の周波数利用効率の観点から、「15MHzの帯域は1社独占にすべき」との論陣を張った。ソフトバンクBBもこれに同調する姿勢を見せており、今後議論の深まりが予想される。

“加入者容量算出”のモデル

 会合では、IMT-2000技術に取り組む各社が技術資料を持ち寄り、これを公開した。TD-CDMAはアイピーモバイル、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンクBB、ユーティースターコムジャパンの4社が連名で、伝送システムの規格や諸外国の動向などをまとめた資料を提出している。

 この中で、アイピーモバイルは追加資料として「TD-CDMA方式に関するサービスイメージ及び加入者容量(周波数有効利用)調査結果について」と題する資料も添付した。これは、TD-CDMA方式で特定のトラフィックが生じた場合、どの程度の周波数帯幅でカバーできるかを算出したもの。次世代移動通信方式委員会が1999年9月27日に行った答申で示した算出手法を元にしている。

 TD-CDMAでは上り下りを非対称にすることが可能だが(2月10日の記事参照)、計算にあたってはダウンリンク9スロット/アップリンク3スロットと仮定した。この場合、1基地局あたりのカバーエリアである「セクター」あたりのスループット(いわゆるセクタースループット)は、以下のようになる。

必要周波数帯域 5MHz 10MHz 15MHz
平均セクタースループット(上り) 0.38Mbps 0.76Mbps 1.14Mbps
平均セクタースループット(下り) 1.5Mbps 3Mbps 4.5Mbps

 一方、加入者数が増えるとセクターあたりどれだけのトラフィックが生じるか(いわゆるセクタートラフィック)を算出すると、以下のようになる。なお、前提条件としてセル半径や加入者密度、サービス品質などを代入する必要があるが、アイピーモバイルではこれを独自に設定している。

加入者数 90万人 300万人 590万人 600万人
屋外上り 0.368Mbps 0.720Mbps 1.136Mbps 1.152Mbps
屋外下り 0.624Mbps 1.424Mbps 2.352Mbps 2.432Mbps
  • サービス 音声(上り下り16Kbps)を主体とするもの
  • セル半径 屋外では半径600メートルの六角形セル
  • 加入者密度 「渋谷のように高い状況」
  • 最繁時呼数 1999年の答申で扱ったデータを利用
  • サービス品質 呼損率1%
  • 備考 スマートアンテナ・HSDPAなどの効果は考慮せず

 ここで、上下の表を見比べてみよう。5MHz幅を利用するサービスでは、セクタートラフィックがセクタースループット内に収まるポイントは、加入者数90万人のところとなる。一方、10MHz幅を利用する場合、300万人が利用してもセクタートラフィックがセクタースループットを下回る。15MHz幅を利用した場合は、590万人〜600万人のあたりで収容能力に限界がくるようだ。

 アイピーモバイルはここから、5MHzの帯域を利用するのは、「周波数利用効率が悪い」と主張する。

 「5MHzの帯域では90万人しか収容できず、仮に3事業者がサービス展開しても90万×3の270万人しかカバーできない。一方、15MHzの帯域を利用すれば590万人を収容できる」(アイピーモバイル)

 アイピーモバイルでは、上記の前提で「サービス」の項目を「上り64Kbps/下り384Kbpsのデータサービス主体」に置き換えたモデルの計算も行っている。この場合は、5MHzで100万人を収容可能、15MHzで880万人を収容可能との結果が出た。やはり、「帯域を3倍にすると3倍以上の加入者容量が得られる」(アイピーモバイル)。

 会合では、アイピーモバイルの資料に添えてソフトバンクBBも資料を提出した。そこには、アイピーモバイルの提案に賛同する主旨の文面がつづられている。

 「(既存の携帯キャリアには多くの周波数が割り当てられているのに比べ)今回(TD-CDMAに)割り当てを検討している周波数はわずか15MHzである。新たな携帯電話事業者を新規参入させ育てるためには、15MHzの周波数は分割せず、1社のみ割り振るべきである」

 “TD-CDMA陣営”ともいうべき両社が、意見を同じくしている構図がはっきりしてきた。

 仮に1事業者が15MHzを独占するとなると、国内のTD-CDMAサービスはまさに独占の状態となってしまう。ただ、特定の事業者がインフラを構築し、ほかの事業者に貸し出すMVNOやホールセールといった方法も提案されている(3月19日の記事参照)。

 これで気になるのは、やはりイー・アクセスがどう動くかだろう。TD-SCDMA(MC)方式の採用を標榜する同社にとって、TD-CDMAでのインフラ基盤共通化は面白くない話のはず。2社の意見を素直に聞くのか、それとも次回の会合でこれを覆すような、新たな技術資料を提示できるか。

 いずれにせよ、次回以降の会合でアイピーモバイルの主張する“周波数の利用効率”の観点から、話し合いを深めることが確認された。この議論がどう帰結するか、今後の焦点といえるだろう。

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