燃料電池・電解質膜のPolyFuelが上陸――「日本市場は大きい」

» 2004年05月20日 19時22分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 米PolyFuelは5月20日、モバイル機器向け燃料電池用“電解質膜”の販売に向け、日本市場での活動を開始すると発表した。傳田アソシエイツとコンサルティング契約を締結し、国内営業・マーケティング・メディア対応などの面でフォローを受ける。

 電解質膜は、燃料電池の実用化に向けてカギを握るといわれる部品。米PolyFuelはこの分野で注目を浴びている新興企業だ。2005年以降、国内メーカーとパートナーシップを結び、2005年末から同社電解質膜を採用した製品をリリースしたい考え。

 PolyFuelの事業開発担当副社長、リック・クーパー氏は、「日本には(燃料電池を採用するような)コンシューマ・エレクトロニクス製品が多い。収益の75%は、日本市場での売上が占めることになるだろう」と期待を話した。

Photo PolyFuelのリック・クーパー氏。手に持っているのが、同社製電解質膜だ。連続巻取り方式で大量生産される
Photo 同社が示した燃料電池の市場規模予測。「マーケットポテンシャルは大きい」(リック・クーパー氏)
Photo 傳田アソシエイツ社長の、傳田信行氏。同氏は、インテルの元会長だった人物だ。傳田アソシエイツでは、ベンチャーへの投資やビジネスインキュベーション、コンサルティングなどを手がけている

DMFC方式燃料電池向けに「電解質膜」を提供

 燃料電池とは、水素と酸素を化学反応させる過程で電気を取り出すシステム。酸素は大気中に存在するため、水素を補充すれば発電を行える。「純水素方式」のように水素貯蔵タンクを用意する大規模なシステムも存在するが、モバイル向けにはメタノールから水素を取り出す「ダイレクト・メタノール方式」(DMFC方式:Direct Methanol Fuel Cells)が一般的だ。

Photo 中央の黄色の板が電解質膜。メタノール(左側)と酸素(右側)を隔てる。なお、電解質膜の両側には薄い触媒の層が重ねられている

 少ない燃料(メタノール)で長時間駆動を実現するには、高濃度のメタノールを用意する必要がある。しかし、高濃度メタノールは電解質膜を素通りしてしまい、高い出力密度が得づらくなるという問題がある。「メタノールクロスオーバー」と呼ばれる現象だ(2003年4月17日の記事参照)。

 PolyFuelでは炭化水素系材料を用いて電解質膜を生成しており、フッ素樹脂系の膜と比べてメタノールクロスオーバーを抑えることが可能。具体的には、「よく利用されている米Du Pont社の電解質膜『ナフィオン』と比較して、メタノールクロスオーバーは3分の1になる」(リック氏)という。材料の詳細は明かされていない。なお、富士通もメタノールクロスオーバー低減を目指して、“芳香族炭化水素系”の電解質膜を開発している(1月26日の記事参照)。

 同社の製品は、高濃度メタノール使用時も安定性があることも売りの1つ。「30%濃度でも問題がない」という。メタノール濃度が急激に変化しても、発電能力や電解質膜の寿命に影響を及ぼさない。なお、寿命に関していえば、同社ラボでは4000時間以上の実用耐用試験を行ない、耐久性を確認済みという。

 リック氏はまた、「最初からDMFC向けにデザインされているため、小型化・軽量化も可能。コストも安くできる」と強調。既にアルファ版でパフォーマンス、コストなどの目標を達成しており、近いうちにベータ版をリリースするとアピールした。

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