世界でいちばん不運で幸せな私「ゲームにのる?」Mobile&Movie 第138回

» 2004年11月19日 10時11分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名世界でいちばん不運で幸せな私(Jeux d'enfants)
監督ヤン・サミュエル
制作年・製作国2003年フランス作品


 これはある1つの“ゲーム”にとらわれた幼なじみ二人の長い長い愛のお話。ジュリアンとソフィが出会ったのは8歳の時でした。近所の子供にいじめられていたソフィをジュリアンが助け出したのです。それでも泣き止まないソフィに、ジュリアンは自分の宝物を差し出します。それはママからもらった、メリーゴーランドの図柄が描かれた美しい缶。でも、自分の宝物をあげてしまうのは、もったいなくて……。ジュリアンはソフィに時々返してと頼みます。

 かわいい缶を受け取って、やっと微笑んだソフィ。時々ジュリアンに返す代わりに、ゲームをしようと提案します。ルールは3つ。相手の言葉には必ずのる。危険は顧みない。一回ごとに缶の持ち主を交代する、というもの。

 相手に条件を出し、それがクリアできれば次は相手の番。たとえば学校で、缶を受け取ってゲームにのったら、授業中でも先生に叱られても、命令に従い、ゲームを続けなくてはいけないのです。

 そんなスリルがジュリアンとソフィにはたまらなくて、ついにはお姉さんの結婚式でとんでもないハプニングを起こしてしまいます。ゲームのことなど知らない大人たちは、二人のいたずらにご立腹。ジュリアンとソフィが一緒にいるから、悪いことをしてしまうのだと判断し、二人を会わせないようにしたのでした。

 やがて月日が経ち、ジュリアンとソフィは大学生に。今ではまた仲良くしている二人でしたが、ゲームは続行中。小さな罪を重ね、共犯者のような関係を続けていました。誰よりもおたがいを理解しているつもりでしたが、二人が会えば、いつもゲームがスタート。気持ちを確かめ合う時間もありません。大学の試験でゲームを仕掛けたり、重要な面接で失敗させたり、ゲームはさらにエスカレート。もはや子供のいたずらの域を出て、悪趣味に。とうとう、ジュリアンのパパの逆鱗に触れ、今度こそソフィと距離を置くことを約束させられます。

 いつまでも無邪気な子供のようにゲームを求めるソフィの魅力を分かっていたジュリアンでしたが、ソフィと離れ、大人になることを選んだのでした。

 大学を卒業後は、建設会社に就職し、普通の人生を送っていました。ソフィと会わなくなって数年が過ぎ、突然ジュリアンの携帯電話が鳴ります。

「ゲームにのる?」

 久しぶりにソフィから聞いたその言葉。いてもたってもいられなくて、ジュリアンは夜の街へ飛び出します。ジュリアンはゲームを渇望していたのです。今までの平凡な生活を投げ捨てて、ソフィのもとへ。それが、最後のゲームになるとも知らずに! 二人のゲームの終わり方は、悲しくもとても美しいものでした。甘く苦くロマンチックなフレンチラブストーリーです。

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