12月14日に開かれた総務省の「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」第5回会合で、ソフトバンクの孫正義社長が“開かれた公平な議論”を求めた。総務省の決定プロセスに納得がいかず、800MHz帯の割当が認められない場合は、再び行政訴訟で争うこともほのめかした。
孫氏は会合の冒頭から、議論の進め方についていまひとつ納得がいかないと話す。「(会合は録音が禁止されているが)なぜ、録音が禁止なのか。ブロードキャストで、生放送すればいいのではないか。ソフトバンクでは、記者会見のときは必ずインターネット中継をやっている」
国民の資産である“有限な無線帯域”の取り決めをしているのに、これでは密室で決められているかのような印象を与えかねないという。
孫氏はまた、会合で用意された傍聴席に、同一グループから3人しか出席できないという制限があることを指摘。広いスペースを用意すればいいものを、なぜいたずらに物理的制限を設けるのか、「何か隠したいことでもあるのか」と総務省側に問いただした。
総務省の答えは、「最初から録音禁止というルールを決めており、それに沿ってやっている」というもの。傍聴席の問題については、場所の確保の問題からやむを得ない部分があるという。
これを聞いた孫社長は、すかさず反論。「場所などいくらでもある。必要なら、福岡ドームを無料で貸し出してもいい」。これには、“静粛に”との通達を受けていた傍聴席の報道陣からも、大きな笑いが起きた。
会合終了後、記者団に囲まれた孫社長は、改めて800MHz帯が割り当てられるプロセスに問題はないか、懸念を表明した。同時に、必要なら行政訴訟もいとわない考えを明かした。
今回の会合は、通信事業者などの関係者が総務省に「意見」を表明する場にすぎない。会合で決定を下すわけではなく、あくまでその議論を“参考”にした総務省が、最終的な判断を下す。
同社は、10月に行政訴訟を起こし、12月になってこれを取り下げている(12月6日の記事参照)。「800MHz帯のIMT-2000周波数の割当方針案」の実施差し止め、および新規割当方針案の策定と新規免許申請の受け付けを求めてのものだったが、その後「割当方針案にはなんら法的拘束力がない“ビジョン”である」こと、そして「新規免許申請は申請しさえすれば受理されること」が判明し、訴訟を取り下げた。孫氏もこの件は「スリッパリーだった」と、やや“勇み足”だったことを認めるかのような発言をしている。
ただし、「意見が正式に却下されれば、当然次のアクションを起こす」(孫氏)。密室の論議は、ロジックを超えたところで決定が行われる可能性があるとした上で、「裁判なら理詰めでいける」と強調した。
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