携帯電話に送信される迷惑メール。キャリアは一時ほどの大量受信は影を潜めつつあるとアピールするが、未だに終わりの見えない戦いが続いている。ボーダフォンが5月18日に開催した説明会の内容を元に、キャリアと迷惑メールとの戦いを振り返りながら、今後、どんな対策があるのか考えていこう。
携帯キャリアが対策を取り、迷惑メール送信業者がその裏をかく。「ある意味、いたちごっこ。しかし、最近になってかなり成果が現れ始めている」(ボーダフォン コアプロダクト&プラットフォームマネジメント部の桑原正光課長代理)
業界全体としては、携帯キャリアおよび国内ISPが参加するグループ「JEAG」を創設した(3月15日の記事参照)。迷惑メールを撲滅するには、受信する側だけでなく送信する側の対策が不可欠。そのためには、メールサービスに関わる各社の連携が欠かせない。
既に第1回の総会が行われ、携帯、送信ドメイン認証、ポート25ブロック、啓蒙活動の4つのサブワーキンググループに分かれて、各社が連携した取り組みを進めている。
「改正電子メール法」の成立も対策の追い風となる(5月13日の記事参照)。「例えばハーベスティング(メールアドレス収集)を法で縛れるようになった。携帯キャリアも、ISPも動きやすくなった」とボーダフォン技術本部ネットワーク統括部コアネットワーク設計部交換網計画部Mail設備グループの若松広司課長代理は話す。
ボーダフォンが他社に先駆けて進めているのが、データベースを使ったフィルタリングだ。「URLリンク付きメール受信設定」という名称で3月から始めており(2月15日の記事参照)、「迷惑メールが全く届かなくなった」(ボーダフォンユーザー)というほどの効果を上げている。
従来の施策と大きく異なるのは、メール本文の内容に踏み込んで、迷惑メールを判別、処理できることだ。フィルタリングソフト大手のネットスターからデータベースの提供を受け、出会い系サイトなど特定カテゴリーのURLが含まれたメールを特定、受信拒否する。
ドメイン指定受信やメールアドレス指定受信、メールアドレスの変更などの方法と比べて、データベースによるフィルタリングが優れているのは、一律的な受信拒否ではなく内容に合わせた対応ができることだ。
「以前は“大量メール=迷惑メール”という図式で処理しており、コンテンツメールも迷惑メールと見なされた苦い過去がある。意を決してフィルタリングを導入した」(若松氏)
現在のところ、出会い系サイトなどのURLを集めた“ブラックリスト”型のフィルタリングとなっているが、今後はユーザーが指定したサイトからのメールは許可する“ホワイトリスト”との組み合わせも考えられる。ボーダフォンの桑原氏は「フィルタリングは非常に効果がある。今後は、ニーズに合わせたフィルタリングの環境を提供していきたい」とした。
携帯メールを使ったCRMへ、どう対応するか |
迷惑メール対策が進む中で、割を食ったのが、携帯メールを使った一般企業のCRMだ。ユーザーから承諾を取って、情報メールを送信するCRM活動は一世を風靡したが、メールアドレス変更やドメイン指定受信が広まる中で、会員へのメール送信が難しくなっていた。 ドコモは、ドメインの入力なしで特定のドメインを指定受信に追加できるサービスを、コンテンツプロバイダーに提供するなどの対策を取っている。 ボーダフォンは、「(CRM活動は)メールが主軸だと思うが、2Gのステーションのような、別のソリューションでニーズを救っていく方法もある」(桑原氏)とした。ステーションは、基地局単位で情報を一斉送信するサービス。 ドコモは通常のiモードメールのほかに、ドメイン指定受信などが影響しない、広告専用のメッセージ送信サービス「メッセージフリー」を用意している(2004年6月10日の記事参照)。 |
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