新規参入がもたらす破壊と創造モバイル戦国時代(第1回)(1/2 ページ)

» 2005年08月18日 22時54分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 携帯電話業界が、大きな変化を迎えようとしている。総務省は8月22日から、携帯電話の新規参入受付を開始する(8月11日の記事参照)。ソフトバンクやイー・アクセスといった「新規参入組」がここに名乗りを上げるのは必至だ。

 それ以外にも「モバイルデータ通信」というくくりで見れば、平成電電やライブドア、アイピーモバイルといった事業者も“新規参入”を考えている。彼らがIP電話技術を利用して、新しいかたちの携帯電話サービスを提案する可能性もある。

 ITmediaでは「モバイル戦国時代」と題して、3回にわたり業界動向をまとめる。各事業者の幹部の発言などをもとに事業者の思惑を推測するほか、そのビジネスモデルを検証する予定だ。

第1回:新規参入がもたらす破壊と創造
第2回:NTT再編で始まる「帝国の逆襲」
第3回:第三勢力の台頭と「ホリエモン携帯」の現実味

ソフトバンク携帯は「激安」なのか

 携帯の新規参入を考えたとき、一番の焦点になるのはソフトバンクやイー・アクセスが「どんな携帯サービスを考えているのか」だ。

 技術面では、既にイー・アクセスがW-CDMAを採用すること(5月19日の記事参照)、ソフトバンクも現段階でW-CDMAの採用に傾いていることなどが伝えられている。だが、その技術を用いてどんな事業モデルを考えているかが重要といえる。

 ここでソフトバンクの「安売り」戦略を予想するユーザーが、少なくないらしい。業界関係者でも、ソフトバンクが市場を“壊す”ような安値を打ち出して、既存事業者を混乱に陥れるのではとの懸念を持っている人間がいるようだ。

 ただ、ソフトバンク関係者に話を聞く限り、この見方は必ずしも正しくない。

 例えば、ソフトバンクの携帯事業のキーマンである宮川潤一常務取締役は、10兆円に達するとも言われる移動体事業を荒らすつもりはないと話している。

 「(3キャリアの売上合計が)10兆円あるところを、我々が『5000億円でいいです』と言ってシェアを奪ったとする。これで半分のシェアがとれたとしても、市場規模が全体で5兆5000億円に縮小してしまったのでは、つまらない」

 ソフトバンク広報室の東日出男氏も、ITmediaの取材に同様の回答をしている。「実は、そんなに安売りをしようと思っているわけではない。ADSLのように安値を付けて、市場をかき乱す必要はない」(7月22日の記事参照)

ADSL参入で「安売り」のイメージが付いたが……

 ソフトバンクは2001年に、月額2000円台という破格の料金体系を引っさげてADSLに参入した。ソフトバンク=安売り、のイメージがあるのは、このときの強烈な印象がユーザーに残っているからだ。ネット上では、「モデムを配って回ったように、携帯も街頭で配るに違いない」という噂がささやかれている。

 ただし、その後ソフトバンクはIP電話サービスや無線LANサービス、IP放送サービスなどをセット提供することでARPU(ユーザー1人あたりの月間収益)増大に務めてきた。この結果、Yahoo!BBのARPUはスタート時点のほぼ倍となる4000円に達している。

 決算でこの部分を説明するとき、ソフトバンクの孫正義氏が決まって使う口癖がある。「Yahoo!BBのサービスは、1つ1つはどれも世界一安い。この世界一安いサービスを足していくと、けっこう高くなる」

 ソフトバンクの携帯事業も、これと似たモデルになる可能性がある。ユーザーが携帯サービスのオプション料金を積み重ねていくと、結果としてそれなりのARPUになる……という仕組みだ。

 もちろん、新規事業者にとって見かけの“お得感”は重要だ。固定通信+携帯のセット割引や、IP電話網を活用した低価格な通話料金プランなどは十分あり得るだろう。しかし、ARPUが低いままでは事業にうまみがないのも事実。既に明かしている最大40Mbpsの高速通信サービス(6月2日の記事参照)などを武器に、どちらかといえばハイエンド&高価格サービスで勝負したいのが本音ではないか。

回線の卸売り

 新規事業者は携帯の低料金化をもたらさず、ユーザーにとって体感的な「変化」は少ないのだろうか。

 実は、携帯の新規参入はもう1つの大きな変化をもたらす。「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator)の普及――というのがそれだ。MVNOという言葉は多義的であるため、“回線卸売りモデル”の一般化、というほうが分かりやすいかもしれない。

次ページ:新規参入がもたらす?「携帯業界のカオス」
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