増え続けるモバイルの役割をカバーする──Symbianの戦略(1/2 ページ)

» 2005年10月14日 23時40分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 携帯電話の総出荷高に占めるスマートフォンの比率が高まりつつある中、OS間の競合が激化しつつある。携帯電話OS最大手の英Symbianでマーケティング部の部長を務めるサイモン・ガース氏に現状と今後の取り組みについて聞いた。

“バーチャルサイクル”現象がSymbianの優位点

ITmedia スマートフォンのOSを巡る競争をどう見ていますか? Microsoftだけではなく、Linuxも台頭しています。

ガース氏 さまざまな調査会社から統計が出ていますが、どれを見てもSymbianが最大のシェアを獲得しています。Symbianはこの市場でゆるぎない首位の地位を築いているといえます。

 まず対Microsoftについてお話ししましょう。Symbianが支持されている理由は、クリーンなビジネスモデルにあります。我々は携帯電話のOSを作り、ライセンスすることにフォーカスしています。そのためオペレーターや携帯電話メーカー、開発者は我々と協業しやすいのです。

 現在、Symbian OSのライセンスを取得しているのは、12社の携帯電話メーカーで、いずれも世界の大手です。その中には高機能携帯電話の開発で知られる日本のメーカーも名を連ねています。開発者はSymbian OS搭載の携帯電話が市場にたくさん出ていることからSymbianを選び、オペレーターはアプリケーションが多いことからSymbianを選び、携帯電話メーカーはオペレーターが要求するのでSymbianを選ぶ──こうした一種の“バーチャルサイクル”現象が生まれています。

 次に対Linuxについてですが、LinuxはコンピュータのOSであって、携帯電話のOSではありません。Linuxを携帯電話用のOSにするためには、多くの技術を追加する必要があります。Linuxベースのソリューションを構築するには多くのエンジニアが必要で、さらにはこれをベースとするアプリケーションには移植性がありません。つまりLinuxの場合、Symbianのようなエコシステムは生まれないということになります。

 Symbianの強みを3つ挙げるなら、最初から携帯電話向けに開発されたOSであること、マス市場にフォーカスしていること、エコシステムがあることの3つです。

ITmedia Microsoftは先月、Palmと提携しました。これはSymbianにとって脅威でしょうか?

ガース氏 むしろチャンスと思っています。というのも、Palm開発者は別のプラットフォームに移行しなければならないので、必然的に最大市場であるSymbianに移動する可能性は高いでしょう。実際、問い合わせが増えていますし、我々もSymbianを検討するよう奨励しています。

ハイエンドからミドルレンジへ

ITmedia Symbian OSはハイエンドスマートフォンに搭載されることが多いのが現状です。ミドルレンジの端末に搭載され始めるのはいつ頃と見ていますか?

ガース氏 日本はその流れで先行していますが、欧州市場でも兆しが見えています。Nokiaが発表した「Nokia 3250」などは、マス向けのミドルレンジ端末です。Nokiaは今後、Symbian OSを搭載したミドルレンジ端末を強化するようで、ほかの端末ベンダーもこの動きにならうでしょう。

 日本では富士通が、Symbian OSが必要ないと思われるような機能限定型端末「らくらくホン」にも搭載しています。日本の例では、通信キャリアがプラットフォームを指定し、端末メーカーがそのプラットフォームを使ってオペレーターの要件を満たすハイエンド端末を作ります。端末メーカーはその投資を生かして、ミドルレンジなど他の端末を開発します。コスト面からみて、これは納得のいく流れであり、このような“プラットフォーム化”が、いま欧州でも起こっています。これは中国や米国でも起こりはじめていることです。

モバイルエンタープライズ市場に向けた取り組みは

ITmedia 携帯電話がビジネスでも利用され始めた今、セキュリティを案じる声が高まっています。携帯電話業界もPC業界と同じ轍を踏むのでしょうか?

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