空中庭園「家族のルールを守ってよ!」Mobile&Movie 第187回

» 2005年11月11日 23時46分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名空中庭園
監督豊田利晃
制作年・製作国2005年日本作品


 東京郊外の団地で暮らす京橋家。ベランダのガーデニングが趣味の母・絵里子(小泉今日子)と、娘のマナ(鈴木杏)と息子のコウ(広田雅裕)、そして父の貴史(板尾創路)は仲のいい4人家族。“何事もつつみ隠さず、タブーをつくらず、できるだけすべてのことをわかちあう”という家族のルールのもと、家の中では会話が絶えません。ある朝、マナは絵里子に自分の“出生決定現場”を尋ねます。すると臆することなく、絵里子はホテルの名前を告げます。がっかりするマナと、照れる貴史、そして微笑む絵里子とコウ、幸せな家族の食卓そのもの。

 しかし、4人はそれぞれ誰にも言えない秘密を持っていました。マナは毎朝決まった時間に学校へ向かいますが、実は何ヶ月も休んでいました。近所のショッピングモールで、時間を潰し、何もなかったように家へ帰る日々の繰り返し。コウも学校にはあまり行っておらず、新しく建てられるマンションなどを見て過ごしていました。コウは建築物に興味があり、学校の勉強より、街の様子を見ている方が楽しかったのです。

 ある時コウは、興味を持った建物を扱っている不動産屋に入り、モデルルームを見せてもらえないか頼みます。そこで応対したのが、父の愛人のミーナ(ソニン)。貴史には、このミーナという若い愛人とさらにくされ縁の愛人がおり、会社をサボっては密会していたのです。コウが貴史の息子とわかり、ミーナは急接近します。

 仕事を適当に終わらせて帰宅すると、貴史の目に信じられない光景が飛び込んできました。妻の絵里子のとなりにミーナが立っていたのです。

 「コウの家庭教師をお願いすることになったミーナ先生よ」

 明るく微笑む絵里子に、貴史は相槌を打つだけでせいいっぱい。ミーナはすまして

 「はじめまして」

 と貴史に挨拶をしたのでした。そうして、毎週のようにミーナがコウの家庭教師として京橋家を訪れるようになります。絵里子は、序々にコウとミーナの関係に気を揉むようになりますが、幸せな家庭を演じるため、見てみないふり。

 こうして、何事もつつみ隠さないという表面とは裏腹に、家族の秘密が増えていく京橋家。さらに、絵里子の母が病気で入院することになり、絵里子の秘密“母との関係”が悪化していき、自分を抑えられなくなっていきます。ゆっくりと崩れていく幸せの輪郭。絵里子の心も張りつめていき……。

 雨の夜、10時を過ぎても帰ってこないコウを心配して、絵里子は貴史に携帯電話で連絡を入れます。しかし、貴史は呑気な様子で心配するなとなだめるだけ。そのいい方に絵里子は、貴史への不満を爆発させます。

 「家族のルールを守ってよ!」

 絵里子は貴史の秘密など、昔から知っていて、波風を立てないよう気付かないふりをしていたのでした。慌てて謝る貴史の声も耳に届きません。コウもマナも貴史も帰ってこない部屋で、一人泣き崩れる絵里子。家族の秘密が明らかになった時、京橋家はどうなってしまうのでしょう……。

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