道交法改正(2004年8月の記事参照)を機に、日本でも徐々に携帯電話でヘッドセットを利用する機運が高まっている。国内外のヘッドセットメーカーが多様な製品をリリースするようになり、ヘッドセット売り場を設置する量販店も増えている。
ヘッドセットの1ブランド「Jabra」を展開するデンマークのGN Mobileも、2005年末から日本市場に本格参入を果たしたメーカーの1社。有線タイプや無線タイプ、車載用途など幅広いユーザー層に向けた製品を投入し、日本市場でのシェア拡大を目指している。
中でも注力しているのが、小型携帯機器とヘッドセットをケーブルなしで接続するBluetoothヘッドセット。パナソニック モバイルコミュニケーションズ製の「P902i」や東芝製の「W41T」など、端末本体とヘッドセットとの間をBluetooth接続することで、邪魔なケーブルなしに音楽を楽しめる端末が登場し始めており、同社が市場の拡大を見込めるとする分野だ。既にBluetooth経由で音楽を飛ばすA2DP、AVRCPプロファイルに対応したBluetoothヘッドセット「BT620s」を出荷済みで、今後も製品ラインアップを順次拡張するとしている。
Bluetoothヘッドセットの普及を目指して、ユニークな戦略を押し進めるGNモバイル代表の若林保司氏に話を聞いた。
Bluetoothヘッドセットを展開する上で障害となるのが、対応機器の普及の遅さ。日本でもBluetooth対応機が増えてきたとはいえ、一般への普及度はまだまだ低いのが現状だ。そこでGNモバイルがとったアプローチは「増えないなら、付けてしまえ」というもの。携帯電話のヘッドフォン端子に取り付けるBluetoothアダプタを開発・販売することで、「携帯電話をBluetooth付きにしてしまおう」というわけだ。
ユーザーにとっても、車中での通話や家の中の長電話などではハンズフリーのほうが都合がいい。ただBluetoothが普及途上の日本では、Bluetooth対応機器を持っていないためにハンズフリー通話の便利さを実感する機会がなく、Bluetoothヘッドセットに対する関心が高まらない。
「まずは試してもらおう」ということでGNモバイルが取った策が、Bluetoothヘッドセットのおまけとして平型ヘッドフォン端子に接続するタイプのBluetoothアダプタを無料でプレゼントするというキャンペーン(2月27日の記事参照)。手軽に携帯をBluetooth対応にできることから、「とても大きな反響があった」と若林氏は説明する。「ユーザーから“自分の携帯にはBluetoothが付いていないのでアダプタが欲しい”という声が寄せられていた。それを形にしたのがこのキャンペーン」(同)。
同社は携帯電話やPCだけでなく、PSPなどのゲーム機器やiPodのような携帯オーディオプレーヤー向けにもBluetoothヘッドセットを普及させたい考えで、これらの情報機器に取り付けられるA2DPプロファイル対応のBluetoothアダプタを開発中だ。このアダプタに各種情報機器に対応するオーディオ端子を添付することで、さまざまなデバイスの音をBluetoothで飛ばせるようにする計画で、現在相互接続性のテストを行っているという。
「こうした製品は、市場のニーズに応えることが重要。日本では携帯に加え、小型オーディオプレーヤーやポータブルゲーム機が広く普及している。こうした機器への対応を皮切りに、家庭内のいろいろな機器をハンズフリーで使える環境を提供していきたい」(若林氏)
Jabraは、会社の成り立ちもユニーク。1990年代初頭の設立当初は、ヘッドセットの耳あて部分に取り付けるジェルを開発する会社だったと、GN Mobileグローバル セールス&マーケティング担当副社長のデビッド・ホーガン氏。「聴覚の専門家をカリフォルニアに置いていて、さまざまなヘッドセットに合うジェル部分を作っていた」
開発を進めるうちに、「いっそ、ヘッドセットを作ってしまおう」ということになり、ここからヘッドセットメーカーとしての歴史が始まったという。
2000年にデンマークのGNに買収され、社名も新たにワールドワイド展開するようになったが、ジェルの開発については今もこだわり続けているという。
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