「ナンバーワンよりオンリーワン」――。7月19日に行われた「ワイヤレスジャパン2006」基調講演で、同社の松本雅史氏(代表取締役副社長 商品事業担当 兼 情報通信事業 統轄)はシャープの“モノづくり精神”をこう言い表した。会場でも人気の「W-ZERO3[es]」や「AQUOSケータイ」など、オンリーワンを具体化してきた同社の端末戦略は「半歩先を行く」だという。
今では付いているのが当たり前となった携帯電話のカメラ機能。携帯電話では同社のJ-フォン(当時)向け端末「J-SH04」が初のカメラ付き製品となる。カメラ付きの移動体通信端末としてはほかにも京セラ製のDDIポケット(当時)向けPHS端末「VP-210」が市販されていたが、サイズや電池寿命の短さ、カメラと連携したサービスが提供されないことが敬遠され、ラインアップからは早々に消えてしまっている。
J-SH04をはじめ、同社のカメラ付き携帯が軌道に乗った理由として松本氏はキャリアと連携したサービスが提供されたのが大きかったと振り返る。「『写メール』というサービスによって携帯端末で撮った写真をコミュニケーションのツールにできたことも大きい。携帯で写真を撮るという行為はもはや文化ともいえるのでないか」
同社では11万画素CMOSを搭載したJ-SH04に続き、高画素化や動画対応、オートフォーカス、手ブレ補正、光学補正などの技術を先駆けて投入してきた。同社の推計ではカメラ付き携帯のシェアは95パーセントを超えている。「ここまで普及した背景には、文化として根付いたサービスに合わせ、ユーザーに新しい利便性を提供できたからと考えられる。“初”にこだわり、半歩先を行く技術により利用シーンを拡大できた。仮に開発スケジュールを無視できたとして、現在のようなスペックを過去の端末でいきなり実現していたとしても、果たして成功したのかは疑問。一歩ではなく、半歩先の技術がちょうど良いのではないか」
講演では同社の海外展開についても触れられた。日本や北米向けの出荷題数は頭打ちだが、アジアやBRICsと呼ばれる新興途上国(ブラジル、ロシア、インド、中国)向け市場の成長により、2008年には世界市場で10億台を突破すると分析。
「カメラ付き携帯はもちろん、『写メール』という文化も輸出してきた」と、これまでは国内同様カメラ付き携帯を軸足にした海外展開を図ってきた同社だが、スマートフォンタイプが人気の北米、W-CDMA端末が普及期に入った欧州、北京オリンピックに向けて3G端末免許の交付が見込まれる中国と、今後の地域動向を踏まえ、ウェイトを価格と機能のどちらに置くか見極めながら投入していきたいとした。
また、松本氏はこれからのトレンドとして4つのポイントを挙げた。それは、「おサイフケータイ」「音楽・映像配信の普及」「ワンセグ」「FMCの展開」だ。松本氏は、「回線速度の高速化、サービスインフラの普及、そして端末の性能向上により市場はさらに拡大する」と指摘した。
これまでもメールやインターネットブラウザ、カメラ、オーディオプレーヤーとさまざまな機能を取り込んできた携帯端末だが、以上の4つのトレンドが加わるほか、2010年に向けて新たな機能の融合とシームレス化、ウェアラブル化、生活へのさらなる密着が進むという。「誰もが24時間肌身離さず持ち歩き、常に電源が入っている唯一の電子機器、『真のモバイルライフツール』になっている」と予想し、講演を締めくくった。
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