NTTドコモは2026年2月5日、「2025年度第3四半期決算説明会」を開催した。登壇したドコモ代表取締役社長の前田義晃氏は、質疑応答の中で次世代通信規格「5G SA」について言及した。前田氏はSAについて、基地局整備の中でしっかりと強化していく方針を明確に示している。
前田氏は、「競合他社と比較してドコモのSA対応局数が現時点で多くない点を認識」し、「2026年度も含めて(設備の追加やそれに伴う投資)を強化する計画」を明らかにした。過去の基地局設備との交換などを進めながら、利用者が便利に使いやすい通信環境を整えていく姿勢を示した。
5G SAの実力は、すでに過酷な通信環境下で証明されている。2025年12月30日から31日に東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット107」では、通信品質向上の対策が実施された。特に西待機列エリアの改善は、関係者にとって長年の課題であった。
首都圏支社ネットワーク部主査の古橋彬氏は、西待機列への臨時基地局設置に尽力した人物だ。古橋氏によると、担当者が2カ月から3カ月にわたり粘り強く交渉し、2年越しで設置許可を得たという。この対策により、多くの来場者が集まるエリアで快適な通信が実現した。
ドコモは報道関係者に対し、会場での通信速度の測定結果を開示した。混雑したつどい橋付近での計測において、従来の「NSA」は下り1.8Mbps、上り4.6Mbpsにとどまった。対してSAは下り132.9Mbps、上り19.7Mbpsと、下りにおいて圧倒的な差を記録した。
大規模イベントではトラフィックの輻輳(ふくそう)が発生し、通信が体感的につながりにくくなる。輻輳とは、さまざまな物が1カ所に集まることや混み合うことを指す。通信業界では、大勢の人が同じ場所で同時に回線を利用することでネットワークが混雑し、通信品質が低下する現象を意味する。
古橋氏が「5G SAは5G単独で完結するネットワークであり、4Gがいくら混んでも影響を受けない」と語る通り、SAは人が密集する場所で真価を発揮する。都心部やイベント会場など、従来なら通信が遅くなるような状況下でも、SAを利用できれば快適なデータ通信が可能になるのだ。
従来の5Gは4G設備を流用するNSA方式が主流だ。迅速なエリア拡大が可能だが、超低遅延や超多数接続といった5G本来の性能を十分発揮できない課題がある。対してSA方式は、5G専用のコア設備を用いる独立した形式だ。これにより、5Gの強みである低遅延や多数同時接続を最大限に活用でき、真の5G性能を実現できるしかし、この快適な通信環境を手に入れるには高いハードルが存在する。5G SAは現在、個人向けに月額550円のオプションサービスとして提供されている。現在はキャンペーンにより追加料金なしで利用できるが、適用にはWebや店舗での申し込みが必須となる。
docomo/ahamoの契約者であっても、自動的にSAが適用されるわけではない。「ドコモオンライン手続き」や「ドコモオンラインショップ」などで、利用者が自ら手続きを行わなければならない。この「オプション扱い」が、一般利用者にとっての心理的な障壁となっていることに加え、普及の足かせにもなっているはずだ。
ドコモは、この5G SAオプションの無効化を考えているのだろうか? 前田氏は、「現時点(2026年2月時点)では未定」と回答した。基地局の整備は進むものの、利用者がその恩恵を享受するためには、当面の間は自発的な申し込みというアクションが求められ続けることになる。
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