高性能バッテリー開発も停止──広がるVK Mobile倒産の影響:韓国携帯事情

» 2006年07月21日 19時00分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 携帯電話メーカーの韓VK Mobileが事実上倒産したというニュース(7月10日の記事参照)は、韓国の携帯電話業界を驚かせた。中国市場を中心に活躍し、フランスに研究所を置くなど、一見好調に見えていたVK Mobileの倒産は、どのような経緯で起こったのだろうか。そして倒産による影響は、どのようなところに現れるのだろうか。

昨年から見えていた倒産の「影」

 VK Mobile(以下、VK)が、法廷管理(日本でいう、会社更生法の適用)を申請した7月10日、韓国の新聞はVKの文字で賑わった。中堅メーカーながら、最近では薄さ8.8ミリの「VK-X100」や、韓半島の形をしているという「VK700C」など、独特な端末をリリースして存在感を示していた。それにも関わらず倒産に至ってしまった訳だが、その兆候は昨年頃から見えていた。

 同社の業績を見ると、2004年までは上昇傾向だったものの、2005年に650億ウォン(約78億8000万円)もの純損失を計上。2006年の第1四半期には89億ウォン(約10億7900万円)の営業損失、165億ウォン(約20億円)の純損失も出している。これが資金難につながったようだ。

 原因についてはさまざまな見方があるが、その1つとして多くの人が指摘するのは収益性の悪化だ。海外市場への端末供給にも積極的だった同社だが、ノキアやモトローラなど世界のトップブランドによる低価格端末も多く販売される中、それらとの競争を勝ち抜くことができなかった。

 また韓国内でも低価格路線で売っていた同社だが、それらの端末は補助金の支給開始(4月25日の記事参照)と同時に無料同然の状態となってしまった。これは言い換えればブランド力の問題だったとも言えるかもしれない。

 またVK Mobileは、2002年から輸出トップ企業として4年連続で表彰されたが、輸出に比重を置いていた同社にとっては、昨今のウォン高も痛い要因だったかもしれない。

PhotoPhoto 発表された当時は大きな反響を呼んだVK-X100。FIFAワールドカップの盛り上がりとともに「ビクトリーフォン」と呼ばれるVK700C

北朝鮮企業との協業も暗礁に

 VK Mobileは昨年、北朝鮮のソフトウェアメーカー、三千里技術会社とともに、韓国語に対応したGSM端末および関連ソフトウェアを共同開発すると発表している。GSM方式が利用されている北朝鮮で使用可能な携帯電話を開発するためだが、「世界で初の韓国語に対応したGSM携帯」(VK)が共同開発されることに対し注目が集まっていた。

 この事業のため、三千里技術会社とVKの研究員は、中国の北京にあるVKの研究所へ2年ほど常駐し、共同開発を行っていた。韓国政府の統一部の資料によると、VKはこの事業のために43万3213米ドル(約5010万9700円)を投資しており、三千里株式会社の研究員たちを雇用するという形式で業務を行っていたようだ。

 しかしこの事業は残念ながら、なかったことになりそうだ。というのも資金難のVKが、三千里技術会社の研究員たちに給与などの費用を支払えなくなってしまったからだ。南北が共同で開発するということにも大きな意味のあったプロジェクトだけに、大変残念な結果となった。

国家事業にも影響

 今年6月、VKは韓国政府の産業資源部による「部品素材技術開発事業」の「DMB(デジタル放送)携帯電話、ポータブル・マルチメディア・プレーヤー用高エナジー密度リチウムイオンポリマー電池開発」部門の主管企業に選定されたと発表している。

 長時間の映像視聴により、これまで以上のバッテリー持続時間やパワーが必要とされている携帯端末用の電池開発は、将来的に見ても不可欠の技術といえる。そのため同社では、高出力・大容量のリチウムイオンポリマー電池の開発を目標として、3年間で22億ウォン(約2億6600ウォン)の開発費を受け取った。これは1999年からリチウムイオンポリマー電池を量産しているほか、高出力電池の開発なども行っていた功労が認められてのことだ。

 しかしこの事業に関してもVKによる事業継続は不可能なことから、リチウムイオンポリマー電池開発の遅れを危惧する声が広まっている。VKが同事業の主管事業者として選定されたと発表したのは6月12日のことだ。不渡りが出たのはその後の6月末。紙一重の差で影響を与えることとなった。

「Helio」向け端末の後継者は

 また韓SK Telecom(以下、SKT)が米国で展開する携帯電話ブランド「Helio」では、現在のところPantech & Curitel製とVK製の端末を提供している。VKは2006年3月に、Helio用新端末の開発や供給をより円滑に行えるように、SKTから100億ウォン(約12億1352万円)を借り入れていたが、この端末供給にも暗雲が立ちこめている。

 SKTにとってのもっとも大きな課題は、VKに代わる端末供給メーカーを早急に見つけるべく交渉を行わなくてはならないこと。VKよりも強力なブランド名を持つメーカーが後任に決まれば、Helioのブランド価値も一緒に上がり、不振から抜け出せるかもしれない。

 Helioの加入者数は明らかにされていないが、最近、韓国の報道機関がこぞってHelioの加入者不振を伝えている。VKのHelio端末には不具合が生じたということで、いずれにしても対策が必要な状況だ。

 このように様々な方面に影響を及ぼしているVKの倒産。今後どうなっていくのか、まだはっきりと見えない状態ではあるが、巨大なメーカーが多い韓国市場で懸命な活動を行っていた中小メーカーの復活を願う人は少なくない。

Photo VK650C。米国在住の韓国人のため、ハングル入力が可能だ。Yahoo!や、SNSサービスの「myspace」サービスにも対応している

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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