世界で勝てる携帯開発を目指す──NEC、松下、TIら5社連合の狙い

» 2006年07月28日 03時10分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 携帯電話の世界は、大きな世代変化の時期にさしかかっている。3Gが本格的な普及期に入った日本では、今夏から次世代高速通信規格のHSDPAを利用した商用サービスが開始され(7月13日の記事参照)、各キャリアが4Gに向けたさまざまなビジョンを明らかにしている(3月30日の記事参照)。

 そして携帯電話自体の多機能化も著しい。音楽やテレビ、電子マネー機能、クレジットカード、フルブラウザなどの機能が搭載され、今後はさらに固定と無線の融合(FMC)に向けた新たな機能が搭載されるようになる。

 携帯電話を開発するメーカーにとってこうした変化は、「次世代インフラと人とをつなぐインタフェースとなるのが携帯電話で、豊かな発展の可能性を秘めている。これから携帯はもっと面白くなる」(NECの矢野薫社長)というように今後の伸びしろを期待させるものである半面、「開発や投資効率の悪化を招く」(パナソニック モバイルコミュニケーションズの櫛木好明社長)という問題も引き起こしている。

 こうした問題を解決するために携帯各社が提携を進める中、3G携帯向けミドルウェアプラットフォーム開発の協業でさきがけたNECと松下電器産業、パナソニック モバイルコミュニケーションズが(2001年8月の記事参照)合弁会社を設立することで合意(7月27日の記事参照)。複雑化する端末開発の効率化に乗り出す。

 Linuxベースの携帯電話向けハードウェアとミドルウェア、一部のアプリケーションについて、合弁会社が共通プラットフォームを受託開発する。これによりコストや開発期間の効率化を図り、各社のリソースを端末の差別化技術に投入するのが狙い。コスト面では「現状の3分の1まで効率化を図れる」と櫛木社長。パナソニック モバイルはデジタル家電との連携を生かした端末開発を、NECはPC開発で培った技術を生かした端末開発を目指すとしている。2008年には合弁会社の共通プラットフォームを採用した最初の端末がリリースされる見込みだ。

 なお、商品企画や商品開発、資材購買、販売製造については従来通り、NECとパナソニック モバイルがそれぞれ行い、“N”“P”ブランドの製品を引き続き提供することになる。

 合弁会社設立の狙いについて、松下電器産業の大坪文雄社長は「競争の激しい携帯業界で、両社の強みを生かして勝つための基礎固め。まずは国内で足場を築き、無限の可能性を追求したい」と説明。櫛木社長は「今後、2010年初頭にかけて、ブロードバンド化やIP化、ユビキタス化の進展が加速され、モバイルの変革期を迎えることが予想される。こうした携帯の進化の実現に向けて、(5社連合による)伝送コアの先行開発と共通プラットフォームで競争力を強化し、変革期を勝ち抜く」と意気込んだ。

 Linuxベースの共通プラットフォームについては、ドコモ、英Vodafone、NEC、パナソニック モバイル、米Motorola、韓Samsung Electronicsの6社が、APIの仕様策定やソフトウェアアーキテクチャの規定、ソフトウェアの検証ツールなどの開発で連携すると発表している(6月15日の記事参照)。NECとパナソニック モバイルの合弁会社は、これらのLinuxの標準化や協業の取り組みに積極的に参画し、連動してその成果を新会社に反映させるとしている。

Photo NECとパナソニック モバイルの合弁会社が担う役割。合弁会社では、アプリけーション部分の共通プラットフォームの受託開発を中心に行う
Photo ハードウェア、チップ、ミドルウェアの共通化を進め、その上に乗るアプリケーションやそれぞれの端末ブランドの核となる端末の個性化にリソースをふりむける。なお、合弁会社の社長はNECから、副社長はパナソニック モバイルから指名される

グローバルで勝負できる通信プラットフォーム開発も

 NECと松下電器、パナソニック モバイルが、ハードウェアとソフトウェアの共通プラットフォームを開発するのと同時に、上記3社とNECエレクトロニクス、テキサス・インスツルメンツを加えた5社が、携帯電話の通信プラットフォームを共同構築することで合意(7月27日の記事参照)。8月に合弁会社「アドコアテック」を設立する。

 日本だけでなく、欧州やアジア各国でW-CDMA市場が拡大傾向にあることを受け、3Gインフラで先行する日本メーカーの強みを持ち寄って世界に通用する通信プラットフォームを構築するのが狙いとなる。テキサス・インスツルメンツは、世界に打って出られるチップを開発する上ではGSM/W-CDMAのデュアルネットワーク対応が必須であり、GSM対応チップの開発で実績があることから参画したという。

 NEC執行役員の大谷進氏は、「2006年度にはグローバルの3G端末稼働数が1億台を突破する見込みで、本格的な普及フェーズに入る。一方でドコモが今夏にHSDPAの商用サービスを開始し、3.5Gへの期待が高まりつつある。3.5Gのネットワークでは、着うたフルの高速なダウンロード、既存アプリケーションの快適性が上がる同時に、新たなアプリケーションの実現が期待される」と、携帯市場の現状を説明。NGN(Next Generation Network)時代のコミュニケーション社会に、継続的に貢献することを目指した協業であることを強調した。

 アドコアテックは(1)NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、TIのそれぞれが持つ独自の無線通信技術をアドコアテックにライセンスする(2)アドコアテックがライセンス供与された技術を使い、携帯電話の通信プラットフォームを開発する(3)通信プラットフォームを半導体3社にライセンス販売し、各社が保有するアプリケーションCPUと統合してチップ化し、端末ベンダーに販売する(4)合弁会社から端末ベンダーに対して、装置化のための通信ソフトウェアをライセンス販売し、保守サービス、システム評価を実施する という役割を担う。

Photo アドコアテックの事業イメージ。同社の社長はパナソニック モバイルから指名される

 なおアドコアテックはNECやパナソニック モバイルコミュニケーションズだけでなく、その他国内外の端末ベンダーへの外販も行うとし、2008年にはW-CDMA通信系プラットフォームの世界市場で20%のシェア獲得を目指す。またアドコアテックは、3.9G世代の通信プラットフォーム開発も視野に入れた開発を推進するとしている。

 新たに設立した合弁会社2社と、6月15日に発表したLinuxコンソーシアムの設立で目指すモバイル事業の方向性について大谷氏は、端末開発レイヤーと通信プラットフォームレイヤー、ミドルウェアレイヤーの3点でフォーメーションを構築できることがポイントだと説明。事業効率を大幅に向上させる協業を実行し発展させることで、NGN時代向けた魅力的な商品とサービスを生み出せるとした。

Photo 5社連合で目指すモバイル事業の方向性

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